
こんにちはコウカワシンです。
今回は、前田信弘(まえだ・のぶひろ)さんの著者【五輪書 わが道をひらく】から学ばせていただきます。
【五輪書 わが道をひらく】は、どんな本?
【五輪書 わが道をひらく】は、ズバリ!「宮本武蔵の五輪書から現代への活用法を知る」ための手引書です。
本書はこのような本
剣豪・宮本武蔵(みやもと・むさし)といえば、諸国武者修行を行い、六十余度の剣術勝負で一度も負けたことがないとされています。
その武蔵の残した『五輪書』は、合理的に徹し、「勝つ」ことだけを目的とした兵法書ですが、現代ではハーバードビジネススクールでも取り上げられたのを機に、ビジネス書として、また啓蒙書として、アメリカをはじめ各国で広く読まれています。
『五輪書』には、自らの道を貫いて確固たる自己を生き、自らの経験に基づいて書かれた本ならではの説得力があります。
その実践性、合理性は、今もなお、普遍的な価値を持ち、読み直されるべき古典であると世界が認めているということです。
つまり『五輪書』は、この先行き見えない時代にこそ読むべき一冊です。
しかし、『五輪書』をそのまま原文で読むのは、とても難しいです。
本書は、『五輪書」を現代でも通じるように語訳していて、しかも現代語訳・原文と合わせて、簡単な補足および現代に置きかえた場合などの解説を補足しています。
ですので、本書を読むだけで、『五輪書』をまるっと理解できるということです。
本書がおすすめな人
【五輪書 わが道をひらく】がおすすめな人
- 社会人
- 中高生以上の学生
- 宮本武蔵に興味のある人
- 五輪書の意味合いを知りたい人
- 自分で考える力を身に付けたい人




【五輪書 わが道をひらく】の要点は?
宮本武蔵の『五輪書』は、現代社会を生き抜くための心得やノウハウ、そしてビジネス書としても最高のパフォーマンスをもった書籍です。
宮本武蔵といえば、常勝無敗を誇りますが、それまでの経験に基づいた哲学や、自ら道を開き、道を極めることの神髄をこの『五輪書』に書き記し、世に広めました。



それでは本書から、わたしの独断と偏見で、著者が宮本武蔵の『五輪書』で伝えるべき、目的や理念、著者目線で見た「ビジネスに生かす方法」について、取り上げてみたいと思います。
この記事から、「この本いいなあ~」と感じていただけたなら、ぜひ本書を手に取って読んでみることをおすすめします。
『五輪書』とは?
『五輪書』は、寛永二十年(1643年)から正保二年(1645年)5月12日に書かれました。
「地の巻」「水の巻」「火の巻」「風の巻」「空の巻」の五巻で成立する、宮本武蔵の戦闘哲学をくわしく解説した書物です。
この五巻(地、水、火、風、空)は、仏教による「宇宙を形成する五要(元)素」のことで、宮本武蔵はその五要(元)素になぞらえて、思想を書き記しました。
『五輪書』は、武蔵の生き様そのもの
『五輪書』は、宮本武蔵の生き方やその生き方を自ら書いた書物です。
それが時代を超え、人種間を越え、全世界で見直されているといいます。
宮本武蔵の生涯は、はっきりとわかっていません。
一説によれば、戦国の激動の時代に岡山県北東部あるいは兵庫県南部に生まれ、13歳のころから名だたる兵法者と命懸けの勝負をしていたといいます。
21歳のときに京へ上った武蔵は、天下の兵法者と勝負を重ね、すべてに勝利し、中でも足利将軍家の兵法師範であった吉岡一門との戦いで、その名を轟かせることになりました。
その後も諸国を回りながら武芸者と勝負をし、武者修行を続けていったということです。
諸国をまわって武者修行をかさねた武蔵は20代最後に佐々木小次郎と勝負することになります。関門海峡の無人島の舟島(のちの巌流島)での勝負は、武蔵の一撃で決し、武蔵は傷をおわなかったといいます。
30歳を超えてから、それまでの数々の勝負をふり返り、さらに深い道理を追求し、修業をかさねました。そして50歳のころに自然と兵法の道にかなうようになったといいます。
寛永十七年(1640年)、59歳で肥後熊本の細川家の客分となった武蔵は、以後没するまでこの地で過ごしました。
寛永二十年(1643年)の秋には霊厳洞にこもって『五輪書』を書き始めましたが、約1年後に病に倒れます。手厚い看護を受けたものの、正保二年(1645年)5月12日、『五輪書』を書きあげて間もなく息をひきとったということです。
一つの道が多方面でも開花
武蔵は、剣技だけではなく、絵にも書にも堪能だったそうです。さらに彫刻にも秀でていて、これは、試合で使う木刀を武蔵自信が作製しているし、仏像も彫るというマルチぶりでした。
でもそれは、あらゆることに手を出して、剣の道を高めていくのではなく、剣の道から発するあらゆる道を、外に向かってあらゆる世界に展開していくということです。
つまり、剣の道を極める、兵法を極める、という一点に執着しながらも、実はその基礎になっている点が放射線状にいろんな線を繰り出したということです。
そしてそれは「経験を理論化する」という形で『五輪書』に書き記されました。
武蔵が『五輪書』を残そうとして目的とは
その「経験を理論化する」という行為は、武蔵という個人が所有するだけでなくて、この世の中のものは必要なら惜しみなく使っていいということでもあります。
自分の血のにじむような、命がけの経験を理論化したものが、単に剣法だけではなく、剣以外のあらゆる諸芸諸能で生きる人々にとっても、何か参考になればよい、という願いが『五輪書』の目的です。
つまり武蔵は、自己体験を理論化し、それをひとつの原則として、その原則を万人に応用されることを望んだといえるのです。
それでは、『五輪書』より武蔵が伝えたかった極意をたどっていきます。
『五輪書』で伝えたいこと
武蔵の「二天一流」の兵法を習得するには、道をおこなう9つの原則があります。
第一に、邪心をもたず、実直な、正しい道を行うこと。
第二に、道は鍛錬すること。
第三に、兵法のみならず、広く多芸に触れること。
第四に、自分の職能だけでなく、広く多くの職能の道を知ること。
第五に、物事の利害得失を知ること。
第六に、あらゆることについて物ごとの真実を見分ける力を養うこと。
第七に、目に見えないところを悟る、洞察力を養うこと。
第八に、わずかなことにも注意を払うこと。
第九に、役に立たないことはしないこと。
この原則を心にかけて兵法の道を鍛錬しなければ、兵法の達人になることはできないということです。
それでは、『五輪書』で伝えたかった極意を5つほど取り上げてみます。
武士は常に勝たなければいけない
武士は何ごとにおいても、勝たなければならないと説かれています。
武士の戦いは、基本的に真剣での勝負です。だから、真剣勝負において負けるということは、すなわち即、「死」を意味します。
つまり生死をかけた勝負であり、だからこそ、どんな場面でも勝たなければならないのということです。
また、実戦で役立つように稽古せよとも説いています。
実際に役立たなければ意味がないのです。
道具を選り好みしないこと
武器は相手を倒すための道具であって、それ以外はありません。その目的を果たすための機能が備わっていれば十分なのです。
選り好みするべきものではなく、人のまねするべきものでもない、武器はあくまで自分に合った、使いやすいものであればよいのです。
リーダーになるために大事なこと
武蔵は、大工にたとえて兵法を語っています。
中でも、武士の大将を大工の棟梁にたとえました。
大工の棟梁といえば、主に住宅を造る大工職を束ねる長、親方のことをさします。
建物の設計から施工、大工のとりまとめまで取り仕切る人のことを指し、大工の仕事をすべて熟知して職人仕事だけでなく建設現場を統括するスキルがある人をいいます。
木材の適材適所、人材の適材適所や仕事に習熟し、ものさしをわきまえなければ、「棟梁」になることはできません。
これは、大工の世界だけではなく、武士の世界でも同じであり、すべての職種においても同じことがいえますね。
大きいところから入って小さいところを知る
『五輪書』の構成・あらましを述べた部分です。
「大きいところから入って小さいところを知り、浅いところから深いところに進む」
「水を手本とし、心を水のようにする」
「対局を見据え、しかも細心にして、よく考えてみること」
「日々、十分に習熟して、いざというときに平常心でのぞめるようになること」
「他を知らなければ、自己を意識することはできない」
「はじめはわずかな心のゆがみも、後には大きな大きなゆがみとなる」
どれも現代に通じる言葉の数々ですね。
何ごとにも拍子=テンポ・リズムがある
「拍子」について述べたものです。
拍子とは、今でいえば、リズム、テンポ、タイミング、チャンスなどを指すものといえます。
武蔵は、どんな物ごとにおいても拍子があり、その重要性について説いています。
拍子がいかに大事かは、『五輪書』を通してくり返し述べられ、強調されていることです。
人生には拍子がある。その拍子を見極め、うまくとらえていきたいものです。
現代でも通用するビジネス書としての『五輪書』
武蔵の柔軟かつ合理的な教え、実戦的な哲学を説いた『五輪書』は、現代のわたしたちにも学ぶところが数多くあり、それは、現代社会を生き抜くための心得やノウハウとして読むことができます。
そういった意味で『五輪書』は、最高クラスのビジネス書といえます。
それでは、本書から少し選び出して紹介したいと思います。
「勝つ」という強い気概を持つことの必要性
「何事においても人にすぐるる所を本(もと)とし、あるいは一身の切り合いにかち、あるいは数人の戦いにかち、主君のため、わが身のため、名をあげ身をたてんと思う」
(地の巻)
先ほども出ましたが、武士はどのような場面にも勝たなければならないことを説いたものです。
もちろん、現代では斬り合いをすることはありません。
しかし、ある意味、戦いは尽きず、販売競争、出世競争、○○競争・・・現代は何においても競争社会です。
競争社会で生き残るためには、競争、つまり戦いに勝たなければいけません。そして競争に勝つことによって、名を上げていくことにもつながります。
まさに武蔵の言葉と同じだということです。
ここで大事なのが、「勝つ」という強い気概を持つことなのです。
たしかに、何でも勝てばいいというわけではありませんが、ときには「競争に勝つのだ」という強い気持ちを持つことが生き残るために必要なのです。
実戦で役に立たなければ意味がない
「いつにても、役にたつように稽古し、万事に至り、役にたつようにおしゆる事、これ兵法の実(まこと)の道なり」
(地の巻)
いくら兵法を習ったところで、実戦で役に立たなければ意味がありません。
どんなときでも実戦で役立つように訓練したり、どんなことについても役立つように教えることが真の道であるとしているのです。
つまり、実戦で発揮することができてこその兵法だといえます。
現代に置き換えても、仕事の知識やスキルアップに努め、それらが時代の流れに立ち遅れないようにアップデートしていかなくてはいけません。
見せかけだはなく中身で勝負
「とりわき此兵法の道に、色をかざり、花をさかせて、術とてらひ、(中略)利を得んと思うこと、誰かいふ、「なま兵法大きずのもと」、まことなるべし」
(地の巻)兵法の道という事
つまり、身についていない、生半可な知識や技術にたよって行うなうと、かえって大失敗をすることのたとえです。
現代でも、実力の伴わないパフォーマンスや、見せかけだけのプレゼンテーションといったような、内容がないのに見せかけだけ飾り立てても、中身がないことはすぐに見透かされます。
それを避けるためには、見せかけではなく、いつも中身で勝負するべきなのです。
柔軟に事にのぞむということ
「一 二のこしの拍子の事」
(水の巻)
現代風に言うと「フェイントをかける」ということです。
うつと見せかけ、相手の気がゆるんだところをすかさずねらうというものです。
「一 無念無相(むねんむそう)の打(うち)という事」
(水の巻)
無念無相とは、何もなく、無になって相手にあたるということです。
敵も自分も同時にうち出そうとする場合には、戦略・戦法を考えている時間はありません。無意識に自然体で打ち込まなければならず、そこに迷いがあってはならないのです。
現代においても猶予ならない事態に、あれこれ考えている時間はないのではないでしょうか。そんなときには、無心になって、自然体に事にのぞむという姿勢が必要です。
そこで生きてくるのが、日ごろからの鍛錬の積み重ねです。
「人事を尽くして天命を待つ」といったところですね。
攻め姿勢での大事なこと
「かげをうごかすといふ事」
(火の巻)
敵の出かたを探るために、こちらから仕掛ける戦術です。
それにより敵の意図を読み取り、対応します。
ときには何を考えているかわからない相手と対応することがあるでしょう。そんなときには、こちらから仕掛けてみる、それにより相手の出かたや真意を見ることができるという、一種の心理戦術といえます。
「うつらかすといふ事」
(火の巻)
心理的な誘導作戦です。
「うつらかす」とは「移らせる」ということです。
敵が落ち着きがなく、敵に事をいそがそうとする気分が見えたときは、こちらはそれにかまわず、いかにもゆったりかまえて見せます。
すると、相手もこちらにつられて、気分がゆるみます。そのようになったと思ったら、すかさず敵をうつという心理的な誘導作戦です。
現代においても、相手の心をコントロールし、心にすきをつくらせる戦術で、人間の心理のメカニズムを利用するといった高度なテクニックが必要ですね。
「かどにさわるといふ事」
(火の巻)
重要な拠点を集中的に攻撃する作戦です。
「角」とは、強く張り出しているところ、つまり重要な拠点のことです。
敵の突出している部分、重要な拠点を集中的に攻撃することにより、全体を弱らせ、勝利するという作戦です。
現代においても、そのような重要な部分を攻略することができれば、今後の戦いが優位になることが期待できます。
相手と競い合わなければならない場面でつかえる戦略・戦術だということです。
【五輪書 わが道をひらく】の感想・まとめ
自分を律し、大局を見据え、使える手はすべて使うことで、切り開けない道はない。
混沌とした現代こそ『五輪書』が必要。
宮本武蔵の『五輪書』は、人の迷いを取り払うために「きれいごと」ではない真実が書かれていると感じました。
現代でこそ、武蔵が生きた時代のような命のやり取りをするような場面は少ないです。ですが、それゆえに先行きが見えず、自分がわからず、迷い悩んだあげく、適切な一歩が踏み出せない人が多いと思います。
武蔵が伝えたいことは、実にシンプルで的を射ています。
自分を磨き、自分やまわりを活かすために大事なことや、競争に勝つための心得、これらは人生、仕事、社会性に至るすべてに合致する共通のスキルではないでしょうか。
本書では、このほかにも武蔵が書き残した「独行道」も収録されています。
これは21の短文を箇条書きにしたもので、武蔵の生き方と信条が端的に表現されているもので、毎日、目を通すだけでも背筋が伸びる思いがします。
世界が認めた日本の心のひとつとして、ぜひ多くの人に読んでいただきたいのと同時に、ぜひ本書から学び、原文の『五輪書』にも触れていただきたいものです。
【五輪書 わが道をひらく】の概要
本書の目次
【五輪書 わが道をひらく】
はじめに
第1部 宮本武蔵『五輪書』とは
第1章 いま読み直されるべき名著『五輪書』
第2章 宮本武蔵の生涯
第2部 現代語訳と原文で読む『五輪書』
第1章 地の巻
第2章 水の巻
第3章 火の巻
第4章 風の巻
第5章 空の巻
第3部 『五輪書』に学ぶビジネス哲学
第1章 ビジネス書として読む『五輪書』
第2章 『独行道』
主な参考文献
著者の紹介
前田信弘(まえだ・のぶひろ)
経営コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー。
高校教師を経て独立。長年、経営、会計、金融、マーケティングなど幅広くビジネス教育に取り組むとともに、さまざまなジャンルで執筆・コンサルティング活動を行う。
あわせて歴史や古典などをビジネスに活かす研究にも取り組んでいる。
主な著書
『知識ゼロからのビジネス韓非子』幻冬舎 (2012/3/9)
『知識ゼロからのNISA & iDeCo』 幻冬舎 (2019/12/18)
『武士道 ぶれない生きざま』日本能率協会マネジメントセンター (2017/3/30)
『論語 至高の人間力』日本能率協会マネジメントセンター (2021/7/28)
『人生をひらく 渋沢栄一』日本能率協会マネジメントセンター (2020/8/29)
『知識ゼロからのビジネス武士道』幻冬舎 (2015/2/20)
『一発合格! FP技能士3級完全攻略テキスト22-23年版』ナツメ社 (2022/5/30)
『一発合格! FP技能士3級完全攻略実戦問題集22-23年版』ナツメ社 (2022/5/30)
『一発合格! FP技能士2級AFP完全攻略テキスト 22-23年版』ナツメ社 (2022/5/30)
『一発合格! マンガで攻略! FP技能士2級AFP22-23年版』ナツメ社 (2022/5/30)
『一発合格! FP技能士2級AFP完全攻略実戦問題集 22-23年版 』ナツメ社 (2022/5/30)
『改訂2版 ボキトレ日めくりドリル 日商簿記3級』日本能率協会マネジメントセンター; 改訂2版 (2019/6/13)
共著
『改訂3版 マンガでやさしくわかる日商簿記3級』日本能率協会マネジメントセンター (2022/2/23)
『マンガでやさしくわかる日商簿記2級工業簿記』日本能率協会マネジメントセンター (2017/12/30)
『マンガでやさしくわかる簿記入門』 日本能率協会マネジメントセンター (2019/5/30)




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