
こんにちはコウカワシンです。
今回は、斎藤孝(さいとう・たかし)さんの著書『孤独を生きる』から学ばせていただきます。
『孤独を生きる』は、どんな本?


『孤独を生きる』は、ズバリ!「たとえひとりでも自信を持って生き生き過ごせる術を学べる本」です。
本書はこのような本
なんとなく、「孤独」という言葉に不安や恐れを抱いている人は多いと思います。
でも、ひとり暮らしの人は年々増え、コロナ禍の中で外出もままならず、仕事はリモートワークということもあり、人との交わりはどんどん気薄になっています。
つまり、「孤独」は、日常化しています。
ですので、「孤独」をポジティブにとらえ、心の充足・安定を図る必要があります。
斎藤孝(さいとう・たかし)さんは、これからの「孤独時代」を生き抜くために大切なことを本書に込めました。
自らの意思で孤独を貫き「単独者」として生き、良好な人間関係を築き、膨大な孤独時間を有意義に過ごすための解決策を知ることができる一冊です。
本書がおすすめな人
『孤独を生きる』がおすすめな人
- いつも心の寂しさにさいなまれている人
- ひとりだと不安な人
- 大勢の人の中にいても自分の居場所がないと感じる人
- 親しい友だちがいなくて不安な人
『孤独を生きる』の要点は?


いま、現代人の「孤独」が大問題だといわれています。
昨今のコロナ禍で、人間関係も気薄になり、孤独感を強く抱いて不安な日々を過ごしている人も少ないでしょう。
しかし、斎藤さんは、本来「孤独」とは、人が自らを成長させるために必要な時間であり、ひとりで行動することをポジティブにとらえることが大変重要なのだと説きます。
自らの意思で孤独を貫き「単独者」として生きることが、現代における処世術だということです。



それでは本書から、わたしの独断と偏見で、「孤独とは何?」、「ひとり時間こそ成長を促す」、「現代における良好な人間関係」、「孤独に押しつぶされないための時間の過ごし方」といったことを取り上げてみたいと思います。
この記事から、「この本いいなあ~」と、思われたならぜひ本書を手に取って読んでみることをおすすめします。
「孤独」と感じていることの多くは「孤独感」である
「孤独」というととてもネガティブなイメージがありますが、その「孤独」というものは一体どういったものなのでしょうか。
たとえば、「孤独」と感じるときとして、次のような声を聞いたことがあります。
「家族もいるし、会社勤めもしているけど、なぜか自分の居場所がないように感じる・・・」
「SNSでつながっている友人・知人はたくさんいるのに、深い付き合いの人って、ほとんどいないんだよなあ・・・」
「今日は家で一日中、誰にも会わなかったし、何もせずにただボーッと過ごしてしまったなあ・・・」
「食事や遊びに誘ってるんだけど、断られてばかり・・・」
でも、この状態は本当の「孤独」ではなく、「孤独感」に襲われているのだと著者は言います。
というのも、「孤独」とは、ひとりっきりの状態ですが、「孤独感」とはひとりのときの気分だからです。
そのように定義すると、「孤独」の多くが「孤独」の状態そのものに悩んでいるのではなく、忍び寄る「孤独感」に心がひどく苦しめられているといえるのです。
そう考えると、「何とか孤独から抜け出さないとダメだ」と、強迫観念のように思い詰めていた心がふっと軽くなるのではないでしょうか。
「ひとりでいる時間」が人を育てる
昨今は、コロナ禍でリモートワークが推奨され、ひとり暮らしをしながら在宅勤務をすることによる“孤独現象”が広がっているそうです。
たしかにリモートワークでも、仕事関係の人たちと画面越しに交流はしますが、ただどうしても“会話した感”が気薄になり、リアルの交流がないことが逆に孤独感を深めてしまう側面があるといいます。
でもそこで生じる孤独感に苦しめられていたなら、それはもったいないことです。
なぜなら、自分を成長させるうえで非常に重要な勉強や思考など、「ひとりで充実して過ごす時間」を台無しにしてしまうからです。
成功者の多くがそうであるように、ひとりの時間に本を読んだり、思考を重ねたり、専門の知識を磨いたりするように、「ひとり時間」をとても大事にしています。
つまり、「ひとりでいる時間」というのは、種をまき、芽が出て、すくすくと生長していくときに必要な“土壌”に相当するものなのです。
それを孤独感におびえるあまりに、ひとりで過ごす充実した時間を台無しにしてしまうのがもったいないと著者は熱弁するのです。
「孤独」を「単独」と言い換えよう
言ってみれば、「孤独」という言葉は、その語感に原因があります。
孤独の「孤」は、つくりの「瓜(カ)」が「懼(ク)」に通じ、「おそれておどおどする」という意味だそうです。
熟語の「孤児(こじ)」は、「父がなくおどおどした子」を表し、ほかにも「孤老」「孤城」「孤軍」など、「孤」の付く言葉には、どこか寂しさが漂います。
「独」という字も、「不快ないもむし」とか「争うことの好きな犬」の意味が転じて「ひとり」になったそうです。
熟語に使われる場合においても「独身」「独居」「独房」「独裁」など、「ひとり」であることのマイナスイメージをもたらしかねないともいえますね。
この「孤独」を「単独」に言い換えてみましょう。
たとえばひとりでいるときに「孤独の時間を過ごしている」ではなく、「単独で○○した」と言い換えます。それだけで自らひとりでいることを選び、有意義な時間を過ごしているように思えます。
つまり、「孤独」をポジティブにとらえられるということです。
親友はいらない
人は、「自分はひとりだ」と思うときに孤独を感じると著者は言います。
たとえば、無人島でひとりでいるときには孤独がもたらす寂しさよりも、「ひとりで生きていくために、どうやって生きていこうか」という問題のほうが深刻なので、孤独に浸っているヒマはないのです。
しかし、職場や家庭、街の人混みのなかに身を置いているときに、ふと心が孤独感に侵食される可能性が多分にあり、そんなとき「わたしはひとりだ」と思うことで孤独を感じるのです。
とくに集団の中にいると、どうしても「みんなの輪からはじかれたくない」「友だちから切り捨てられたくない」といった気持ちが働き、そのような自分ひとりでは完結しない他者との人間関係で、孤独感が生じてしまうということです。
たぶん、人々が集まるコミュニティに身を置いたばかりに、孤独感に苦しんだ経験がある人は少なくないはずです。
それから、人間関係に生じる孤独感の根源は、多かれ少なかれ、「親しい友人が欲しい」「できれば親友と呼べる友達が欲しい」という欲求があるものです。
昨今では孤独感に苦しむ人に向けて、「何でも相談できる友人を持ちなさい」的なアドバイスをするのをよく聞きますが、それは逆に友人の少ない人にとっては追いつめられるケースもあるそうです。
そこで著者は、「親しい友だちなんて、いなくても大丈夫だよ」とアドバイスします。
太宰治(だざい・おさむ)の『走れメロス』は、主人公メロスの代わりに人質になった親友セリヌンティウスが、メロスが定刻までに戻らなかったら処刑され命を落とす可能性があるという物語です。
たしかにこれは美談ともいえる物語で感動しますが、現実にそんな関係になれる親友はいないし、そこまでの親友はいなくてもいいというのが正直なところですよね。
とはいえ、親友とまではいかなくても仲の良い友だちは欲しいものです。
ですが、この『走れメロス』における「親友」という言葉の裏に潜む心理を思えば、「親友はいてもよし。いなくてもよし」といった軽い気持ちになりますよね。
ですので、軽やかな人づきあいができるように努めたらいいのです。
これを「淡交(たんこう)」といいます。
「淡交」とは、つかず離れず、淡白に交流することを指します。
べったりしたつき合いというのは、気持ちの距離感が縮まる分、どろどろとした人間関係に陥ることだってあります。
相手が自分の期待通りに動いてくれなかったり、自分を大切に思ってくれなかったりすることが不満で、トラブルに発展することがあるのです。
結果、つき合いが長続きせず、「あんなに親しくしていたのに、最後は憎みあって関係を断つことになった」という人もいるのではないでしょうか。
だからというわけではないですが、親密なつき合いよりも「淡交」のほうが、人間関係で悩むことが少なくて良いのです。
そして、いつも笑顔で上機嫌でいれば、人は寄ってきてくれます。
「笑顔で淡交」しながら軽やかに人づきあいしていきましょう。
「共同体感覚」を意識せよ
「共同体感覚」といったら、あの『嫌われる勇気』で有名になったアドラー心理学ですが、この「共同体感覚」は次の3つで構成されます。
- 周囲の人はわたしを援助してくれる(他者信頼)
- わたしは周囲の人に貢献できる(自己信頼)
- わたしは共同体に居場所がある
まず「周囲の人はわたしを援助してくれる」と感じているなら、自分もその人の力になろうと思い、行動します。(他者信頼)
「わたしは周囲の人に貢献できる」と感じていたら、自分も自信を持ってその人の力になろうと、行動できます。(自己信頼)
「わたしは共同体に居場所がある」は、そういった他者信頼や自己信頼の積み重ねにより、同じ共同体に所属する仲間の間に、お互いを尊重し、信頼し、ともに力を合わせて事に取り組む関係が、「自分は仲間の一員」であると実感できるということなのです。
アドラーはこの「共同体感覚」が育成されると、「人はすべての困難から解放される」としています。
ではどうすれば、「共同体感覚」を感じることができるかですが、とにかく「わたしは周囲に貢献できる」(自己信頼)に注力することです。そうすれば案外何でもうまくいくと著者は言います。
というのも「他者信頼」は、他社の行動次第で、自分ではコントロール不能ですが、「自己信頼」なら自分の気持ちひとつで何とかなるからです。
ですので、自分の所属する共同体の中で、「何とかみんなの力になろう」と行動しましょう。
ですが、いけないのは、「自分を評価してもらいたい」とか「貢献する以上は見返りが欲しい」といった下心を持つことです。
純粋に「力になりたい」「助けたい」と思えばこそ、互いの間に仲間意識が芽生え、強化されていくのです。
本を親しき友とせよ
孤独を解消するにはいろいろな方法があります。
ジョギングや筋トレなどの運動をすることや料理を作る、映画やテレビを見るとか、車でドライブするというのもあると思います。
しかし、手っ取り早く孤独を解消してくれるのは何といっても「本を読むこと」だと著者は言います。
その理由のひとつは、本が「単独者から単独者への贈り物」であることです。
そもそも本というのは、その本の著者がひとりで、かなりの時間をかけて紡いだ言葉が集積されたもので、その書いている時間を含めてその著者にとっては「単独者の成果物」なのです。
たとえば、トルストイの『戦争と平和』は、約4年がかりで執筆されたそうで、その長大さを単独者として味わうことができるのです。
たしかに長ければいいというわけではありません。
長編であれ、短編であれ、著者が精魂込めて書いたものを単独者として読むことができるのです。
加えて、本を読んでいる間は、基本ひとりです。「単独者の時間」を楽しむことができるというわけです。
そして本を「単独者の時間」を楽しむためのメリットとして、いつでも自分の気の向いた時間に始めたり、終わらせたりできる点です。
他の時間の過ごし方では、こうは簡単にはできません。
ですので、まず「お気に入りの一冊」をつくりましょう。どのようなジャンルの本でも、マンガでも良いと思います。
孤独感をなくすために熱中しよう
「人間は孤独がいけないではなく孤独感の寂しさに心を悩ませている」ということですが、孤独感をなくす方法は、「本を読む」だけではないことは、お伝えしました。
それを踏まえて、「孤独感をなくす」ことを模索してみましょう。
キーワードになるのが、「熱中」です。
人は五感を働かすことで「熱中」できるものです。
音楽を聴くことも有効です。手っ取り早い方法として、何でもいいから、とにかく音楽を流し、その空間に身を置くこともいいでしょう。
そして、自分のお気に入りの曲があるならその曲を「寂しくなったらこれを聴く」というふうにするのです。決まった曲がないなら誰かのお気に入りの曲に乗ってみるのもアリです。
そして著者は「書く」ことも孤独感解消の特効薬ともいいます。
書いて心のモヤモヤを晴らすということです。
それは誰にも見せない日記でもいいし、「書く」を「描く」に変えて、絵を描いてみるというのでもいいと思います。
それから何よりも、しっかりと「身体を動かす」ということは、とても大事なことです。
というのも、人類は原始時代から数えて500万年にもおよぶ長い間、ずっと「体を動かすのが当たり前」な生活をしてきました。
最近では、コロナ禍の影響で巣ごもり生活が続き、運動不足にもなるせいか、気持ちが鬱屈している人が大勢います。
『運動脳』や『スマホ脳』の著者、アンデシュ・ハンセンさんは、運動不足が脳にも悪いと指摘しています。
つまり人間は、体を動かすようにできていて、生活に運動を取り入れないと、心身の健康は保てないということなのです。
日ごろから、運動習慣のある人はもちろんそれを継続することが一番ですが、運動習慣のない人は、まず「散歩」から始めましょう。
ただ体を動かすだけではなく、四季の移ろう風景を眺めたり、風邪や空気を感じたり、すれ違う人たちと視線を交わしたりなど、同時に気を晴らすことができます。
「孤独死」は死に方の問題
心配することのひとつに「孤独死」があります。
「孤独死」という言葉に寂しいイメージがありますが、要するに「死後何日も発見されない」ような無縁社会的死に方を指します。
そうならないためにも、ひとり暮らしの人は、「万が一、自分が倒れたら、一日、二日以内に気づいてもらえる」態勢を整えておく必要があります。
そのための方法として、「同居していないにしても家族がいるなら安否確認の方法を相談しておく」とか、「新聞や牛乳、食材を毎日届くような定期便を利用する」、「週数日のデイケアサービスを受ける」ということが必要です。
その他、「地域の活動や趣味のサークル、習い事への参加」などで、少なくとも週の半分くらいのスケジュールが埋まるようにするという方法もあります。
どちらにしても、孤独死を解消するために必要なのは、生きていることを何かの形で知らせる手段を講じることなのです。
『孤独を生きる』の感想・まとめ


心の空虚感に忍び寄るダークサイドを追っ払おう。
本書を読んでの感想として、「人は、どの年代でも、どんな地位にいても、どんな環境に身を置いても、孤独を感じ悩みがつきない」ということです。
それは、人間として生まれてきたことの宿命だと思わなければいけません。
そして「孤独」と「孤独感」は違うということも自覚し、孤独感を解消する努力は、自分自身でしなければ解決はしないということも心得なければいけないのです。
誰だって若いころは「何者かになりたい。みんなと同じではいけない。人と違うことがしたい」とか「人とうまくつき合えない。他人は自分の気持ちをわかってくれない」と、悩んだ経験があるのではないでしょうか。
人は感情の動物なので、そういった悩みが、自己を成長させてくれます。
ですので、大いに悩むことは、決して悪いことではないと思います。
ですが、気をつけなければいけないのが、孤独感にさいなまれ、心に空虚を抱いてしまった状態です。
そんな心によからぬダークサイドが忍び寄ってくるのでしょう。
そのダークサイドに心を乗っ取られては、人生がよいものにはなりません。
ですので、そのダークサイドともいえる「孤独感モンスター」を跳ね返しましょう。
そういった意味で、本書は大きなアドバイスをくれます。
ぜひ一度手に取って読んでみてください。
『孤独を生きる』の概要


本書の目次
『孤独を生きる』
はじめに
第1章 孤独の正体とは何か
第2章 親友はいらない
第3章 「本」こそが孤独の最高の解決策である
第4章 孤独感がなくなるさまざまな方法
第5章 青年期、壮年期、中高年・老年の孤独
おわりに
著者の紹介
斎藤孝(さいとう・たかし)
1960年、静岡県生まれ。
明治大学文学部教授。
東京大学法学部卒業後、同大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞。
日本語ブームをつくった『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞。
主な著書
『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』日本能率協会マネジメントセンター (2022/3/30)
『大人の語彙力ノート』SBクリエイティブ (2017/9/8)
『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い」人』詩想社 (2023/2/15)
『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』誠文堂新光社 (2019/6/5)
『1日1ページで身につく!』小学館 (2019/11/24)
『10歳のミッション キミを一生ささえる31の行動』幻冬舎 (2021/7/28)
『心を熱くする スラムダンクの言葉』 PHP研究所 (2023/2/17)
『図解 歎異抄 たよる、まかせる、おもいきる』株式会社ウェッジ (2022/12/17)
『「なにを書けばいいかわからない…」が解決! こども文章力』KADOKAWA (2021/7/26)
『読書する人だけがたどり着ける場所』SBクリエイティブ (2019/1/7)
『本当の「心の強さ」ってなんだろう?』誠文堂新光社 (2021/8/4)
『1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365』文響社 (2020/10/8)
『大人の語彙力大全』KADOKAWA (2018/1/13)
『頭のよさとは「説明力」だ』詩想社 (2019/9/11)
『友だちってなんだろう?』誠文堂新光社 (2020/8/12)
『20歳の自分に伝えたい 知的生活のすゝめ』SBクリエイティブ (2022/4/5)
『現代語訳 福翁自伝』筑摩書房 (2011/7/10)
『図解 論語─正直者がバカをみない生き方』株式会社ウェッジ (2011/4/30)
など多数。


コメント