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『第三次世界大戦はもう始まっている 』から学ぶ報道だけに捉われない世界事情の見方

コウカワシン

こんにちはコウカワシンです。

今回は、エマニュエル・トッドさんの著書『第三次世界大戦はもう始まっている 』から学ばせていただきます。

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目次

『第三次世界大戦はもう始まっている 』は、どんな本?

『第三次世界大戦はもう始まっている 』は、ズバリ!「報道一辺倒にならないための物事の考え方」を知る本です。

本書はこのような本

ロシアによるウクライナ侵攻から1年。

ロシア大統領のプーチン氏が「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」と始めた戦争ではありましたが、ロシア側もウクライナ側も譲らない膠着状態がまだまだ続くと予想されています。

本書は、出版されてからもう半年以上が経ちましたが、著者のエマニュエル・トッドさん(以下トッドと表記)のこれまでの思考パターンからの予想がふんだんに取り入れられた一冊です。

世の中は、「ウクライナが正義」「ウクライナ優勢」の報道が多い中、トッドは、ややロシアよりの見方をしているところが注目されるところで、その根拠となることについても言及されています。

そういった意味で、今後の世界の行方を正しく見るための指針となる一冊だということです。

本書がおすすめな人

『第三次世界大戦はもう始まっている 』がおすすめな人

  • 「ウクライナ侵攻」は、一方的にロシアが悪いと思っている人
  • ウクライナ侵攻だけではなく、世の中の不穏な動きには何か図り事があると考える人
  • 「なぜロシアは、ああまでしてウクライナ侵攻を続けるのだろう」と不思議に感じている人
  • 世界平和のためにはどうすればいいかを考えたい人
  • 今後の世界の動きに関心がある人
  • 日本がどうあるべきかを考えたい人

『第三次世界大戦はもう始まっている 』の要点は?

「戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ」というのが、トッドの見方です。

むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」という意見をお持ちです。

というのも、ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊です。その意味でいえば、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているのです。

しかし、米国は、自国民の死者を出したくないので、兵士を派遣していません。

ウクライナ人としては、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずで、ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまいました。

つまり、米国はウクライナ人を“人間の盾”にしてロシアと戦っているのです。

コウカワシン

これを踏まえたうえで、本書からわたしの独断と偏見で、「第三次世界大戦」の見るべきポイントや今後の予想などを取り上げてみたいと思います。

この記事から「この本いいなあ」と思われたなら、ぜひ本書を手に取って読んでみることをおすすめします。

戦争の責任は米国とNATOにある

元アメリカ空軍軍人で、現在、シカゴ大学教授の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーは、「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」と結論します。

ウクライナでは、アメリカ寄りの政権ができるとNATOの加盟に積極的となり、NATOの側も2008年にルーマニアの首都ブカレストで開かれたNATO首脳会議で「ウクライナの将来的な加盟を支持」しています。

対してロシアは、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」と明確に警告を発してきました。にもかかわらず、アメリカとNATOがこれを無視したことが、今回の戦争の原因だとしているのです。

つまり、ロシアを過剰に刺激した結果ということなのです。

ウクライナがNATO加入となれば、ロシア国境まで拡大することになります。ロシアにとっては、生存に関わる『死活問題』であり、そのことをロシアは繰り返し強調してきたということなのです。

そもそも、ドイツ統一が決まった1990年の時点で、「NATOは東方に拡大しない」といった約束がソ連に対してなされていましたが、1999年、2004年と東欧諸国がNATO加入、ロシアは不快感を示しながらもNATOの東方拡大を受け入れました。

その上で、2008年4月のNATO首脳会議で、「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言されました。

その直後、プーチンは、緊急記者会見で「強力な国際機構が国境を接するということはわが国の安全保障への直接的な脅威とみなされる」と主張しました。

これはロシアが、「ジョージアとウクライナのNATO入りは絶対に許さない」という警告を発し、ロシアにとって越えてはならないレッドラインを明確に示していたにほかならないのです。

その後、2014年2月22日、ウクライナで「ユーロマイダン革命」(民主主義的手続きによらずに親EU派によってヤヌコビッチ政権(親ロ派)が倒された)と呼ばれるクーデターが起きました。

これを受けて、ロシアはクリミアを編入し、親ロ派が東部ドンバスを実効支配しましたが、それは住民の大部分がこのクーデターを認めなかったからなのです。

ウクライナを「武装化」した米国と英国

ウクライナは正式にNATOに加盟していませんが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「米英の衛星国」「NATOの事実上の加盟国」となっているとミアシャイマーは指摘しています。

毎日のニュースでもご存じの通り、米国と英国が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからです。

ウクライナをすぐにNATOの一部にするとは誰も言っていないのに、ウクライナを武装化し、事実上NATOに組み入れたということです。

現在のウクライナ軍によるロシア軍の攻勢を止めるほどの抵抗を見せているのは、ウクライナ兵士の奮闘にもよるけど、何よりも米英によって効果的に増強されていたからです。

でも、こうしたウクライナ軍の軍事的抵抗を西側の人間は素直に喜んではいけないとミアシャイマーは指摘しています。

というのも、ウクライナ軍が抵抗すればするほど、ロシア軍はより攻撃的になるだけだからです。

ウクライナ軍の成功の一つ一つが、この戦争をより暴力的な方向へ向かわせていきます。

ロシアにとっては死活問題。つまり、「生存をかけた問題」だからです。

でもミアシャイマーは、この戦況の激化がアメリカにとっても死活問題となると明言しています。

というのも「ロシアはアメリカやNATOよりも決然たる態度でこの戦争に臨むので、いかなる犠牲を払ってでもロシアが勝利する」と結論しています。

傍目でみれば、アメリカにとってのウクライナ侵攻は「遠い問題」「優先度の低い問題」ですが、実はアメリカにとってもこのウクライナ侵攻は「死活問題」になりつつあるといいます。

アメリカを中心とする西側諸国は、ロシア侵攻を食い止め、ロシアを敗北させようとしていますが、これでもしロシアの勝利を阻止できなかったら、アメリカの威信が傷つき、アメリカ主導の国際秩序が揺るがされることになります。

現在のアメリカは、軍事と金融の面で世界的な覇権を握るなかで、実物経済面では、世界各地からの供給に全面的に依存していますが、このシステム全体が崩壊する恐れがあるとトッドはみているのです。

そもそもはソ連崩壊後の国境の修正だったはずが、第三次世界大戦の引き金に

ウクライナ問題というのは、もともとはソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」でした。

ロシアからすれば、ソ連解体後1990年代前半にやるべきだった国境の修正をいま試みているといえるとのことです。

アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国になれない」と述べています。

アメリカの思惑として、ロシアがアメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよいとしているわけです。

そして実際にウクライナを武装化し、「NATOの事実上の加盟国」としました。

このようなアメリカの動きが、本来「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。

これはもう、「すでに第三次世界大戦に突入した」状態だとトッドは見ています。

ウクライナ軍は、米英の指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備え、とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。

これはもう、ロシアとアメリカの軍事衝突がすでに始まっているのと同じです。

ですが、アメリカは兵士を派遣していません。アメリカは自国民の死者を出したくないのです。

米国の誤算

アメリカは、第二次世界大戦後も常に戦争をしてきた国です。

ここがヨーロッパとの大きな違いであり、ヨーロッパ人と違って、アメリカ人にとっては、「他国を侵略することも普通のことだ」と考える基盤があるとしています。

アメリカにしてみれば、「今回はロシアが自分たちと同じことをしている」というわけです。

これまでのアメリカの戦争をふり返ってみると、アフガニスタン、イラク、シリアといった弱小国に対する戦争でした。しかし、今回は大国ロシアが、事実上、アメリカを敵に回しているのです。

アメリカは、これまでロシアとは、チェスのようなゲームを続けていましたが、プーチンがここまで決断をし、これほど大規模にウクライナに侵攻し、アメリカ主導の国際秩序に正面から衝突してきたことに非常に驚いたはずです。

これを反映してか、つい一か月前まで「最大の敵」としていた中国に急遽、協力を要求したり、厳しい制裁を科していたベネズエラとの関係構築を急ぐなど、アメリカの動揺がうかがえるとトッドは言います。

中国はロシアの味方

戦線が安定したら「消耗戦」のような状態になります。

あらゆる資源を投入しなければならない「消耗戦」では、軍事面よりも経済面が重要になってきます。また同時に軍事面も経済面にに左右されることになってきます。

そこで注目したいのが、中国がロシアをどれだけ支援するかです。

中国は、外交の場面でこそ発言に気を使っていますが、明らかなのは、政府だけでなく中国国民も、圧倒的にロシアに親近感を抱いています。

米国バイデン大統領が中国に対し、「ロシアへの武器の供給や支援をするな」と脅迫してみたところで、次に狙われるのは自分たちだとする中国指導者が、それに従うことはまずないでしょう。

もしアメリカのウクライナにおける軍事行動が成功を収めたら、次に北朝鮮、あるいは台湾やベトナムに対しても、何か行動を起こすだろうと、中国指導者は考えているはずです。

ですので、中国は表立ってはロシアに停戦交渉を求めながらも、最終的にはロシアを支援するのではないかとトッドは見ています。

アメリカと西側の経済は耐えられるのか

西側諸国は、ロシアの対外資産を凍結しています。

これは「所有権の否定」であり、このような制裁を各国に強いるということは、「外国資産を補償なしに国有化してもよい」という反資本主義的思想を広めていることにつながりますが、その自覚はあるのでしょうか。

戦争のいきつくところにおいても「ロシアの侵攻にウクライナはどれほど耐えれるか」「西側の経済制裁にロシアはどれほど耐えられるか」ばかりが議論に上がっているけど、それより大きな問題をわたしたちは抱えています。

それは、「これほどグローバル化した危機に、アメリカと西側はどれほど耐えられるか」です。

いまでは、「GDP至上主義」の時代で、アメリカは世界でトップの経済大国です。

しかし、1945年時点では、世界の工業生産の半分を占めていたが、今では世界のGDPの25%程度を占めるにすぎず、しかもその数値でさえ、ひとつのフィクションですらないのだといいます。

しかも、GDPだけでは、真の「経済力(生産力)」は見えてきません。

というのもGDPは「付加価値の合計」であり、生産力だけでなく、サービス分野、その他もろもろをひっくるめたもので産出されるものだからです。

たとえば、アメリカではとにかく裁判が多く、企業活動でも法的手続きが膨大にあります。そこで弁護士が手にする膨大な報酬もGDPに含まれます。

対して日本では、訴訟も弁護士も少ない分、日本のGDPはアメリカよりも少なく計上されます。

でも、どちらの社会が生産的なのでしょうか。

話を戻しますが、実際にアメリカはウクライナに対して貿易赤字を計上しています。

というのも、ウクライナに対して、軍事関連の輸出や多少のコンピューターを別として、アメリカはウクライナに売り込む物を大して持っていないからです。

つまりこれは、アメリカが生産力を持たない国であることを露呈したということにほかなりません。

アメリカは、「幻想の経済大国」であり、軍事と金融では世界的な覇権を握っているけど、実物経済の面で世界各地からの供給に全面的に依存していて、その状態を波状させないために活動しているだけなのです。

そんなアメリカにへばりついている西側諸国、主にヨーロッパは対ロ制裁で犠牲者になっています。

というのも、ヨーロッパとロシアは経済的な相互依存関係にあるからです。

その象徴が、ロシアとドイツを結ぶ天然ガス海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」の停止です。

経済制裁によって、ヨーロッパとロシアは互いに傷つけあうことにしかならず、対ロシアで最終的に犠牲者になるのはヨーロッパ自身という状況は果たしていつまで続くのでしょうか。

米国の“危うさ”は日本にとって最大のリスク

先ほど、アメリカは「世界を戦場に変える国」と表現しましたが、「戦争」はもはやアメリカの文化やビジネスの一部になっています。

つまり、アメリカは「世界を戦争へと誘う教育」を世界各地で進めているということに違いはなく、このアメリカによる「戦争教育」を世界が受け入れるかどうかこそを問わなくてはいけません。

そしてこのアメリカの行動の“危うさ”や“不確かさ”が、同盟国日本にとって最大のリスクであり、今後においても不必要な戦争に巻き込まれる恐れがあるとトッドは言います。

当面、日本の安全保障において日米同盟は不可欠だとしても、アメリカに頼りきってよいのかを考えなくてはいけないのです。

果たして日本有事においてアメリカはどこまで信頼できるのか。こうした疑いをぬぐえない以上、日本も核を持つべきだともトッドは言います。

たしかに核は、日本において敏感な問題ですが、核を持つ目的を明確にし、核保有においても一定の理解を持たなければいけない事態に現代はなっているということです。

世界の核保有国は、なぜ核を持つのでしょうか?

その答えとして「核を持つとは国家として自律すること」だとしています。北朝鮮の核保有アピールはそういうことにほかなりません。

核保有は攻撃的なナショナリズムの表明でも、パワーゲームのなかでの誇示でもなく、むしろパワーゲームの枠の外に自らを置くことを可能にします。

「同盟」から抜け出し、真の「自律」を得るための手段なのです。

同盟国とはいえ、アメリカがなお一層、暴走することはあり得なくありません。

そのときに日本が取るべきは何が最善でしょうか。

日本の国益はロシアとの共存以外に選択肢はない

現在、日本も対ロシア制裁に加わっていますが、この危機が去った後も、中国とロシアは同じ場所に存在し続けます。

台頭する中国と均衡をとるためには、日本はロシアを必要とするのです。

西側に追い込まれたロシアが中国と接近し、中国に軍事技術を提供することこそが、日本にとっての悪夢であるといえます。

ロシアの行動が「許せない」ものだとしても、アメリカを喜ばせるために多少の制裁は加えるにしても、ロシアと良好な関係を維持することは、あらゆる面で、日本の国益にかないます。

ですので、感情的にならざるを得ない状況の中でも、決して「長期的に見て国益はどこにあるか」を見失ってはいけません。

ウクライナは分割される

もともとウクライナという国は、常にロシアから影響を受けてきました。

16世紀から20世紀にかけて、近代化の波はロシアからもたらされたのです。「共産主義」だけでなく、「共産主義の打倒」とその後の「改革の波」も、ロシアからやってきました。

ですので、ウクライナは「独自の推進力」というものを持っていない国だったのです。

そのウクライナが自らの独自性を主張するために、そしてロシアの影響下から逃れるためには、別の勢力の支配下に入る以外になかったのです。そこで、アメリカやヨーロッパに近づいたということです。

ソ連崩壊後、ロシアは1990年代に危機の時代を迎えましたが、国家の再建に成功しました。それには「国家に依頼する秩序」という伝統があったからです。

ですがウクライナは、独立から30年以上経過しても、十分に機能する国家を建設できないでいます。というのもロシアに依存しきりで「国家」という伝統がなかったからです。

ウクライナが国家建設に失敗したことに関しては、アメリカ以上にドイツをはじめとする西欧諸国に重い責任があります。

なぜかというと、ウクライナを始め旧ソ連圏は、貧しくとも教育水準が高く、西欧諸国が「安価で良質な労働力」として吸い寄せ、人口の15%を失わせ、5200万人から4500万人に激減させたいきさつがあるからです。

このウクライナ侵攻により、ロシアはへルソン州からドンバス地方までの広大な土地を奪取し、アゾフ海も支配し領土を少しずつ獲得している点では、18世紀の戦争に似ていて、当時と同じようにウクライナが分割され始めたということです。

トッドの仮説として、「ここで戦争が終わったらウクライナはどうなるか」を想像すると、国家としてのウクライナは破綻し、ウクライナの東部はロシア、西部はポーランド化としていくのではないかというのです。

これまで考えられもしないことが起こり得る可能性を含んでいるといえますね。

実質的にロシアの勝ち

現在の戦況について、見てみると面白いことが浮かび上がってきます。

2014年のクリミア併合や親ロ派によるドンバス地方の一部掌握のときのように、ロシア軍があっという間にウクライナ軍を制圧してしまうだろうと思われていましたが、米英による補強されたウクライナ軍が粘り強い抵抗を見せてくれています。

でも、見るべきところは他にあり、ロシアは経済的に弱体した貧しい国なので、ヨーロッパによる経済制裁に耐えられないのではないかという予想は果たして当たったでしょうか。

侵攻により1カ月以上経って明らかになったのは、「ロシア経済力の耐久力」です。

ロシア通貨ルーブルの相場は、いったんは暴落したものの、現在はほぼ通常レベルにまで回復し、戦争勃発時にロシアから逃げ出した多くのロシア人も再びロシアに帰国しています。

これには「ロシアの人々も戦争に慣れ始めた」ともいえるのです。

アメリカとヨーロッパは、経済制裁によりプーチン支持が下がり、やがて失脚を期待していました。ですがそうはなっていないどころか、軍事的に困難な状況の中で芽生える愛国主義をより起こし、プーチンの支持率は上昇しました。

これを見てわかるのは、軍事的にも経済的にも、意外にも“比較的安定した”状況で、この「世界戦争」が長期的なものになるということです。

こうなることは、ロシアから見たら比較的簡単に予想できたと感じます。

まず、2014年以降に科せられた経済制裁に対して、ロシアはうまく適応しました。農業生産が倍増するなど、2014年から2022年にかけてのロシア経済の適応力は目を見張るものがあったということです。

下の図はロシアとアメリカの小麦生産量の推移です。

さらにロシアは中国にも頼ることができますし、工業生産で中国が協力することになれば、ロシアが弾薬不足に困ることはないだろうと予想できます。

西側による経済制裁は、新たな局面を迎え、事実、そのインパクトが、ブーメランのごとく、西洋社会に跳ね返ってきています。

ルーブルは、いったん急落した後、すぐに回復し、それどころか、西側の主要通貨に対して、むしろルーブル高となりました。

ロシア産の石炭・石油・天然ガスの禁輸措置にしても、窮地に追い込まれるのは、ロシアよりもヨーロッパです。

ヨーロッパ経済のロシア産エネルギーへの依存度は、あまりにも高く、ロシア以外のエネルギー資源の調達先を見つけるのがかなり難しいといえます。

逆にロシアからすれば、代替となる販売先は簡単に見つかります。

しかも、この局面でエネルギー価格の高騰で苦しむのはヨーロッパ、潤うのはロシアというわけです。

この戦争は、長期化することで、インフレや供給問題の山積をもたらしました。

人々は、「ロシア経済は想像以上に安定しているのに対し、西側・ヨーロッパ経済は想像以上に脆弱なのではないか」と自問することでしょう。

このインフレにヨーロッパの社会システムは、どれだけ持ちこたえることができるのかを考えると、実質的にロシアの勝ちということを認めないわけにはいかないでしょう。

ですので、この「経済的な消耗戦」において、西側陣営が勝利するほうには賭ける気がしないとトッドは言うのです。

というのもアメリカ、イギリス、フランスの対外貿易への依存度は途方もないレベルだからです。

ウクライナ侵攻から1年が経った今、この先の行方がどういうふうになっていくか・・・目が離せないといったところです。

『第三次世界大戦はもう始まっている 』の感想・まとめ

日本は、自身の立ち位置を冷静に鑑みて、適切な“自律”を模索し、事実上の「永世中立国」になろう。

本書から、ロシアにとっては、言われなき「ロシアいじめ」にいたった事情とロシアの立ち位置、ロシアの思惑を少しばかり知ることができました。

世の中の報道、といってもわたしたち日本人は、西側寄り思想のものしか知ることができず、ただ単に「ロシアが悪い」「ロシアは非道だ」というふうに考えてしまいます。

たしかに「ウクライナ侵攻」でロシア軍が行ったものに残虐極まりない行為があったことは認めざるを得ません。

ですが、「結局、戦争って、そんなもの」なのです。それでも戦闘を止めないのは戦争をやっている当事者はどちらも「自分が正義」と信じているからです。

わが日本は、第二次世界大戦で原爆を落とされ、敗北を喫し、戦争の怖さを十分に知っている国民です。

だから戦争に加わってはいけないし、日本が戦場になってもいけません。

そのためにどうすればいいのかを考えたいですね。

そのためには確実な抑止力が必要なのだと思います。

つまり、世界各国と肩を並べる真の軍事力が必要なのです。それは日米安保条約だけでは無理です。日本自体に強力な、他国が手を出せないような抑止力が必要なのです。

トッド氏が言うように「日本の核武装」は本気で考えても良い問題だとわたしは思います。

現にアメリカは北朝鮮に非難はしても、攻撃をするまでにいたっていません。

考えようによっては、あの強気な外交姿勢は、逆に見習いたいくらいです。

日本人は戦後、「非核三原則」の元、敏感な問題として「核」を遠ざけてきました。

でも、もうそんな時代ではないと思いますし、戦争に関わらないためには、強気に出れるような外交カードを持ってもいいのではないでしょうか。

これが、わたしが考える「日本の永世中立国化」です。

この意見が気に入らないという人は、たくさんいらっしゃると思います。ですが、誰でも自由な考えを持っていいのが日本国のよいところです。

ですので、議論をすることは最初からお断りします。

しかし、これからはこのようなことを日常的に考えていくべきかと思いますので、賛否両論ありながらも、たくさんの人に読んでみていただきたい一冊だと感じました。

『第三次世界大戦はもう始まっている 』の概要

本書の目次

『第三次世界大戦はもう始まっている 』

1 第三次世界大戦はもう始まっている
2 「ウクライナ問題」をつくったのはロシアではなくEUだ
3 「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れだ
4 「ウクライナ戦争」の人類学

著者の紹介

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)

1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。

国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に”予言”。

主な著書

我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上』文藝春秋 (2022/10/26)
我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下』文藝春秋 (2022/10/26)
老人支配国家 日本の危機』文藝春秋 (2021/11/18)
大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』PHP研究所 (2020/7/14)
エマニュエル・トッドの思考地図』筑摩書房 (2020/12/23)
パンデミック以後 米中激突と日本の最終選択』朝日新聞出版 (2021/2/12)
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』文藝春秋 (2015/5/20)
シャルリとは誰か?』文藝春秋 (2016/1/20)
問題は英国ではない、EUなのだ』文藝春秋 (2016/9/21)
グローバリズム以後』朝日新聞出版 (2016/10/13)
世界の未来』朝日新聞出版 (2018/2/13)

コウカワシン

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

四国在住。
ミニマリスト。趣味は映画観賞と音楽鑑賞、読書、野球観戦。
映画は特に好き嫌いなくほとんどのジャンルーを観ます。音楽はジャズとクラシックが大好きです。読書は歴史書が好きでよく読みます。

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