
こんにちはコウカワシンです。
今回は、津川友介(つがわ・ゆうすけ)さんの著書『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』から学ばせていただきます。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、どんな本?


『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、ズバリ!「健康的な食品についての情報を正しく入手できる方法」を教えてくれる本です。
本書はこのような本
今では、健康に関する情報や「これを食べると〇〇が改善する」といった書籍がたくさん出されていて、情報の飽和状態にあります。
そこで、何を信じたらいいのかを図りかねている人もいるのではないでしょうか。
そして、出回った情報の真実性も疑わしいという人がいます。
それが、ハーバード大学を経てUCLA助教授として活動する医師、津川友介(つがわ・ゆうすけ)さんです。
津川さんが本書で伝えたいのが、「今、信じている健康情報は本当に正しい情報か?」「医師や栄養士が言うから正しいと思っていないか?」というふつうなら信じて疑わない情報の数々です。
たしかに専門家が言うことだから一定の効果があるようにも見えますが、中にはきちんとした研究によって得られた根拠(エビデンス)がないものも多く、健康意識の高い人の努力を無にしたり、信じたがうえに不健康になる原因にもなるというのです。
本書は、最新の膨大な研究論文をもとに複数の質の高い研究で体に良いことが科学的に証明されている食事を紹介したり、質の高い食事を摂るために調べる方法を教えてくれます。
いわば、「体の投資本」とでもいえる一冊です。
本書がおすすめな人
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』がおすすめな人
- 健康オタク
- 自分や家族にアレルギーなどの疾患があって食べ物など、いろいろ試したけど改善しないという人
- 健康のために正しい情報の取り方を知りたい人
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の要点は?


今あなたが信じている健康情報は本当に正しい情報でしょうか。
健康になるために食べているものが本当に効果があるものでしょうか。
本書は、そういった問いに一つの答えを出せる本だといえます。



それでは、わたしの独断と偏見で、本書から「健康のために食べて良いもの、悪いもの」「健康についての根拠」「体に良い食べ物の調べ方」を取り上げたいと思います。
この記事から、「この本いいなあ」と思っていただけたなら、ぜひ本書を手に取って読んでみることをおすすめします。
体に良い食べ物とは?
「体に良い食べ物」と「体に悪い食べ物」
科学的根拠にもとづいた「体に良い食べ物」とは、次のようなものです。
- 魚
- 野菜と果物(フルーツジュース・じゃがいもは含まない)
- 茶色い炭水化物
- オリーブオイル
- ナッツ類
逆に、健康に悪いと考えられている食べ物は、
- 赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハム・ソーセージなどの加工肉は特に悪い)
- 白い炭水化物
- バターなどの飽和脂肪酸
といったものです。
「白い炭水化物」は、砂糖とほぼ同じ
「茶色い炭水化物」とは、玄米、そば(そば粉の含有量が多くて小麦の割合が少ないもの)、全粒粉を使った茶色いパンなどです。
つまり、精製されていない炭水化物を指します。
一方で、「白い炭水化物」とは、白米、うどん、パスタ、小麦粉を使った白いパンなどの精製された炭水化物のことをいいます。
そもそも炭水化物とは、糖質と食物繊維が合わさったものです。
ですが、白い炭水化物は、精製されることにより食物繊維を少なくしたものが多いのです。
ですので、味覚的には甘くはないものの、体の中で糖に分解・吸収されるので、白い炭水化物は本質的に砂糖と同じなのです。
とはいっても、食事の摂取量を減らしてがまんしてもストレスになったり、リバウンドしてしまう可能性があります。
このような理由から、食事量を減らしてがまんさせる食事指導よりも、食べる食品を「置き換える」指導のほうがより効果的であると近年では考えられているそうです。
食べるべき食品の見極め方とは?
では、どうすれば良いのかですが、答えはシンプルで、「体に悪い食べ物」を「体に良い食べ物」に置き換えるだけでいいのです。
すべての食品は、5つのグループに分けられます。
健康に良いことが複数の研究で明らかになっている食品をグループ1として、健康に対して悪影響があることが複数の研究で示されているものをグループ5とします。
次の図表をご覧ください。


こうして見ると、わたしたちが日々食べている食品のほとんどが中間グループ(グループ2、3、4)に該当することがわかりますよね。
ところで、じゃがいもは、この分野では野菜ではなく、「白い炭水化物」に分類されるって、知ってましたか?
ちょっと驚きですが、覚えておきましょう。
フライドポテトやポテトチップスといった悪しき食生活の代表格にもなり、糖尿病や肥満リスクと関連があることが研究で示されているとのことです。
それから、気をつけるべきは、「体に良いということが最新の研究で明らかになった」といわれている食品のほとんどはグループ2の食品です。
つまり、健康に良いとされる研究結果が1つ2つあるかもしれないが、本当に体に良いかといった確定的なことはまだ言えない段階の食品なのです。
数か月経てば、逆の結果が発表されることになるかもしれないので、注意が必要ですね。
食事と体重の関係
健康的な食事は、ダイエットに取り組むうえでも、有効です。
というのも、カロリー摂取量よりも、食品の内容のほうが重要だからです。
脂質の量はダイエットに関係ない
食事は大きく分けて、タンパク質、炭水化物、脂質の3つに分けられますが、タンパク質と炭水化物は1グラムあたり4キロカロリーであるのに対し、脂質は1グラムあたり9キロカロリーあります。
なので、ダイエットのために脂質を減らそうと考えますが、低脂肪食を食べた人も、高脂肪食を食べた人も体重の変化に差がないことが研究で明らかになりました。
つまり、低脂肪食は、「やせる食事」ではないということです。
日本では、「糖質制限ダイエット」が流行っています。
とにかく「炭水化物を減らせばよい」というのは考え方としてはシンプルですが、実は炭水化物にも「太る炭水化物」と「やせる炭水化物」があるので一概には言えないのです。
やせる炭水化物とは?
「糖質制限ダイエット」、確かに単純に炭水化物の摂取量が多い人と少ない人とでは、炭水化物の摂取量が少ない人のほうが体重は減ります。
しかし、重要なのは炭水化物の量ではなく、どのような炭水化物を摂取するかなのです。
つまり、白米、ラーメンのように精製された炭水化物(白い炭水化物)は体重増加につながるものの、玄米やそばのように精製されていない炭水化物(茶色い炭水化物)を食べても体重は増えないことが研究結果から出ているそうです。
食事内容と体重の関係は?
それでは、健康的な食事の内容とそうではない食事の内容とを比べて、体重の増減にどのような影響を及ぼすかを見ていきます。
下の表をご覧ください。


フライドポテトやポテトチップスがこれほどの体重増加に及ぼす影響があることには、正直驚きますが、やはり「体に良い食べ物」では体重の増加に影響が少ないどころか減少している様を見ると、食事内容と体重にはかなり関係が深いことがわかります。
たしかにやせるためには食事だけを変えるのでは不十分で、運動、睡眠、ストレスのレベルも体重に影響を与えます。ですので、それらをすべて最適化することがやせるための第一歩だと著者は言います。
そして、「やせる食事=健康的な食事」は、がんや脳卒中などの病気も減らすともいわれています。
ですので、日ごろからコツコツと「体に悪い食べ物」を避け、「体に良い食べ物」を摂取する努力が必要だということです。
オーガニック食材は健康にいいのか?
オーガニック食材は、健康的なイメージがあって、たいへん人気がありますが、本当のところどうなのかというと、疑問視されると著者は言います。
というのも、2012年にスタンフォード大学の研究で「オーガニック食材の健康への影響」に関するエビデンスをまとめて解説論文が出されたからです。
それによると、
- オーガニック食材は一般の食材と比べて、栄養価は変わらない。
- 微量(ぎりぎり検出可能な限りなレベル)の残留農薬を認める確率はオーガニック食材が低い(オーガニック食材の7%、一般食材の38%で微量な残留農薬が認められた)。
- しかし、通常の成人であれば一般の食材から摂取される残留農薬の量は許容摂取量よりも低く、健康被害を起こすレベルではないと考えられる。
- 病原性大腸菌に汚染されている確率はオーガニック食材と一般食材で差がない(オーガニック食材の7%、一般食材の6%で汚染されていた)。
- 冬場にオーガニックの肉を摂取することでカンピロバクターによる食中毒にかかるリスクが7倍になる。
ということだそうです。
つまり、オーガニック食材は一般食材と比べて、「栄養価は変わらない」「残留農薬は若干少ない」「冬場の肉に関しては食中毒を起こすリスクが高い」ということになります。
たしかに、妊娠中や妊娠する可能性のある女性や子どもは、オーガニック食材を摂取するメリットが少しはあるでしょうけど、一般の人にとってオーガニック食材を過剰に意識する必要はないのだと著者は言います。
ということで、オーガニック食材にとらわれず、体に良い食べ物をバランスよく食べるのが一番だということです。
日本食は塩分が多い
2013年に日本食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本食の魅力が世界中に注目されています。
たしかに日本食は、魚や野菜を多く摂取できるという点においては優れていますが、多くの人が持つ「健康的」という点においては、次のような問題があると著者は言います。
- 炭水化物が多い
- 塩分摂取量が多すぎる
まず、日本人は総エネルギー量のうち58%を炭水化物が占めています。この割合はアメリカ人の50%、フランス人の45%と比べても多いのです。
それでも、この炭水化物が「茶色い炭水化物」なら健康に悪くないのですが、ほとんどの日本人は「白い炭水化物」のほうを多く摂取している可能性が高いのではないでしょうか。
そして、問題なのが日本食に含まれる塩分量です。
次の表をご覧ください。


塩分量が多いと何が問題なのかですが、なんといっても「高血圧」です。
そもそも摂取した余分な塩分は、腎臓から尿中に排泄されるのですが、塩分摂取量が多すぎると腎臓で処理しきれなくなってしまい、余分な塩分が体に蓄積されます。
そうすると血液の浸透圧が高くなり、脳が「「のどが渇いているので水を飲め」と指令を出し、血液中の塩分濃度を薄めようとします。
生理現象でもあるので、人間は水を飲みます。
すると、体の中をめぐる血液の量は多くなり、血管にかかる圧力が高くなるのです。
高血圧のリスクとは?
高血圧は血管に常に圧がかかっている状態です。
ですので、放置しておくと血管が少しずつダメージを受け、その結果として動脈硬化が起こり、いずれは血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞を引き起こしてしまいます。
最近の研究では、日本人が死亡したり麻痺などの障害を持つことになる原因として、「食習慣」や「高血圧」が挙げられます。
ですので、塩分の問題はとても重要なのです。
それでは塩分の問題を回避するにはどうすればいいかですが、それには大きく分けて2つの方法があります。
- 塩分摂取を減らす
- カリウムを多く含む食品を摂取する
カリウムを多く含む食品を摂取することは、脳卒中や心筋梗塞のリスクを下げることにつながりますが、問題点もあります。
腎臓が悪い人にとってカリウムの摂り過ぎは危険なのです。
というのも、血液中のカリウムが多くなって心臓の不整脈を起こすリスクがあるからです。健康診断などで腎臓の問題を指摘されたことがある人は、食事でカリウムの量を増やす前に医師に相談されることをおすすめします。
著者の意見では、「まずはみそ汁と漬物をやめてみる」ということをすすめています。
たしかに塩分を控えめにすれば塩分摂取量を減らすことはできます。
すると、みそ汁にお湯を入れて薄めて飲む人がいます。でもお湯で半分の濃さにしても2倍飲んだら、薄めないのと同じです。
重要なのは「味が塩辛いかどうか」ではなく塩分量をいくら抑えるかなので、これはラーメンやうどんのスープに関しても同じなのです。
ということで、みそ汁や漬物以外の食品から栄養を摂るようにしてみましょう。
インターネットを使って正しい健康情報を手に入れよう
本書では、日本のメディアや健康に関する本で紹介されている情報の多くが間違っていると説明しています。
でも、何もかもが間違っているとしたら、どのようにして健康情報を手に入れたらいいのでしょうか。
健康情報は、国立がんセンター、厚生労働省、医師のホームページ(メドレー、メディカルノート)を活用しよう。
著者のおすすめは、インターネットを用いて健康情報を入手する方法として、国立がんセンターや厚生労働省のホームページであるといいます。
国立がんセンターが発表する内容はとても良いのですが、残念なことにがん以外のトピックは扱っていません。さらには、日々の食事に関して知りたいと思っていることの多くを解決してくれるわけではありません。
病気やその治療法についてはメドレーやメディカルノートという医師たちが書いている優れたホームページがあるのですが、残念ながら食事に関する情報はほとんどありません。
信頼できる健康情報を「英語」で検索する
著者は、信頼できる情報の入手法として、「英語を用いて検索する」ことだといいます。
同じグーグルを使っても日本語(google.co.jp)で検索すると正確性の低い健康情報が多いけど、同じ内容を英語(google.com)で検索すると格段に質の高い健康情報が得られるそうです。
試しに、わたしの持病ともいえる「花粉症」に効く食べ物を「google.com」で調べてみましたら、けっこうな数のサイトが見つかり、アレルギーに良い食べ物や症状を軽減する方法などかなり詳しく教えてくれました。




たしかに、英語で検索しても個人のブログや宣伝などの間違った情報も引っかかってくるので、その中から正しいものを取捨選択しなければなりません。
けど、日本語サイトを見てみると宣伝目的のためのサイトがかなり多く、信頼性が高いとは言えない情報ばかりというのが見えてきます。
それに比べるとはるかに信頼のおける情報が得られると著者は言います。
もちろん、英語で検索したからといってもすべてが正しい情報ではないので十分注意する必要があります。
食事に関しては、ハーバード公衆衛生大学院(https://www.hsph.harvard.edu)、アメリカを代表する名門病院メイヨークリニッ(https://www.mayoclinic.org)
民間企業であるウェブエムディー(https://www.webmd.com)あたりがよくまとまっていて、わかりやすい内容だと著者は言います。
7つのステップで食事に関する正しい情報を入手しよう
では、どのようにして正しい情報を入手したらいいか、その手順を紹介します。
- まずは興味ある健康情報のキーワードを選ぶ(例:魚)
- キーワードを英訳する(例:魚→fish)
- それに関する「健康情報」が必要なので、健康(health)とエビデンス(evidence)という言葉を加える。この例では、「fish health evidence」という3語になる。エビデンスという言葉を入れないと、科学的な情報に巡り合えないので注意
- その3つのキーワードでグーグル検索を行う。日本のグーグル(google.co.jp)ではなく、アメリカ本国のグーグル(google.com)で検索する。
- リストアップされるサイトの中から、「hsph」、「mayoclinic」、「webmd」がアドレスに含まれているものを選ぶ。
- グーグルに翻訳してもらうために、「このページを訳す」をクリックする。
- しっかり読んで内容を理解する。
この方法を使ってもハーバード公衆衛生大学院やメイヨークリニックが情報提供してなくて、残念ながら信頼性の高い情報にたどり着けないこともあります。
しかし、もしこの方法で探している情報にたどり着けたなら、日本語で得られる情報よりも質の高い健康情報を得ることができます。
そして健康情報は、日々アップデートされていますので、もし食事や健康に関する疑問があったら、ぜひこの方法を試してみましょう。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の感想・まとめ


情報は日々進歩。固定観念にとらわれず、正しい情報を得るための努力を惜しまない。
テレビや雑誌などで、「○○の症状には△△が有効」とか「△△で、○○の悩みが改善した」などという情報を目にすると、実際に症状に悩まされている人は、藁をもつかむ気持ちですがりたくなりますよね。
信じる信じないは、それぞれの勝手ながら、その情報の真実性が疑われるものは、手を出さないほうが無難です。
その情報の真実性とは、研究によって根拠があるかどうかが証明されているものに限ります。
というのも、日本で流す健康情報の大半は、商業目的なものが多く、その根拠は、「個人の経験談」で、あったり、「健康に良いという研究結果がごく少数」というものばかりだからです。
それでも、その方法が自分に合っていれば、いいのですが、逆の場合は、悲惨としかいえません。
ということで、まどわされず自分で正しい情報を取りに行く目を持たなくてはいけません。
そのために本書は、「最適解」ではないにしても、一定のヒントをもらえる本ではないでしょうか。
そういった意味で、一度読んでみる価値がある一冊です。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、現在(2023年2月7日時点)amazonの本読み放題サービス「キンドルアンリミテッド」の対象になっています。
キンドルアンリミテッドは、ビジネス書からマンガまで幅広いジャンルの本が読み放題です。ぜひこの機会にご検討ください。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の概要


本書の目次
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』
はじめに
謝辞
本書の読み方
第1章 日本人が勘違いしそうな健康常識
第2章 体に良いという科学的根拠がある食べ物
第3章 体に悪いという科学的根拠がある食べ物
特別編 病気の人、子ども、妊婦にとっての「究極の食事」
著者の紹介
津川友介(つがわ・ゆうすけ)
医師。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授。
東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。
聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。
共著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学:データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)。
ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。
著書
『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』集英社 (2022/1/26)
『世界一わかりやすい 「医療政策」の教科書』医学書院 (2020/6/1)
共著
『「原因と結果」の経済学』ダイヤモンド社; 第1版 (2017/2/16)
『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』ダイヤモンド社; 第1版 (2020/4/1)
『医良戦略2040~2040年の医療を生き抜く13の戦略』ロギカ書房 (2022/4/9)
『最速!聖路加診断術』三輪書店; A5版 (2009/12/1)


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