
こんにちはコウカワシンです。
今回は、かぶ1000監修、ひげ羽扇(ひげ・うせん)漫画で、ループスプロダクションから出版されている『マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術』から学ばせていただきます。
『ベンジャミン・グレアムの投資術』は、どんな本?


『ベンジャミン・グレアムの投資術』は、ズバリ!「学生にぜひ読ませたい投資の教科書(入門書)」です。
本書はこのような本
世界最高の投資家ウォーレン・バフェット氏の先生として名高い、ベンジャミン・グレアム氏。
グレアム氏が提唱するのが「バリュー投資」という投資法です。
この方法で結果を出したのが、本書の監修を行った4億円トレーダー・かぶ1000さんです。
現代では、「リーマンショック」などの金融危機があったり世界の情勢が不安定で先行きが見えない状態ですが、グレアム氏の時代にも「世界恐慌」という金融危機がありました。
そんな中で編み出された「バリュー投資」は、現在でも十分に通用する手法であると、かぶ1000さんは言います。
本書は、「先人の知恵」の結晶ともいえるバリュー投資を現代に沿うようにかぶ1000さんの手直しも加わった投資の入門書といった一冊です。
本書から、ベンジャミン・グレアム氏の人生からその投資哲学さえも知ることができます。
本書がおすすめな人
『ベンジャミン・グレアムの投資術』がおすすめな人
- 投資を始めたばかりの人
- 投資はまだ始めていないけど興味のある人
- ウォーレン・バフェットを尊敬している人
『ベンジャミン・グレアムの投資術』の要点は?


ウォーレン・バフェット氏が師と仰ぎ尊敬したベンジャミン・グレアム。
本書は、グレアムのバリュー株投資の入門として、大変わかりやすく、かぶ1000さんが、「現代への応用」しうる方法を付け加えて解説しています。



それでは、私の独断と偏見で、バリュー投資のキモとなる部分だけ取り出して紹介します。
この記事から「この本いいなあ」と思っていただいたなら、ぜひ本書を手に取って読んでみることをおすすめします。
資産を守るために大事なこと
元本を守るために安全域を確認する。
グレアムの投資術において、安全域の考え方は欠かせないと著者は言います。
安全域とは、「安全マージン」「安全余裕率」とも訳される言葉で、主な目的は、リスクを減少させるため「ある程度余裕を持つこと」を指します。
たとえば、70点が合格ラインのテストを受ける際に、合格点ギリギリの70点を目指した勉強をするより、90点を取れるように勉強したほうがより安全ですよね。
この場合、90点から合格ラインである70点までの差20点が安全域に当たります。
安全域の計算は2種類あります。
- 債権の利率と株式の収益率を比較する方法
- 簿価と時価を比較する方法
この記事で詳しいことは省きます。
この2つの方法のポイントは、
- 株式の益回りが債権の利率より大きければ安全域がある状態
- 簿価が株価より大きければ、安全域がある状態
ということです。
グレアムが、なぜこの安全率にこだわったかというと、自身が高校生のころに彼の母親が行った信用取引で大損したことがきっかけでした。
信用取引とは、現金や株式を担保として証券会社に預けて、証券会社からお金を借りて株式を買ったり、株券を借りてそれを売ったりする取引のことです。
信用取引は、失敗すると元本以上の損失をすることもあります。
だからこそ慎重に銘柄を選び、リスクを抑える必要があるのです。
このことを教訓に、グレアムは慎重な分析にもとづき元本の安全性を確保しながら利益を確保する行為を「投資」、それ以外を「投機」と定義し、投資だけに徹するように努めたのだそうです。
投資と投機は別物。分けてリスクを回避する。
投資と投機を明確に区別する目を養うことも大事です。
そもそも投機とは、「機会に乗じること」を指す言葉です。また、タイミング売買(投資においては安いときに買い、高いときに売ること)に対しても指しています。
投機は、当たれば大きな利益を生む可能性がありますが、タイミングを誤ると損失を被る可能性があります。
投資は、「詳細な分析にもとづいたものであり、元本の安全性を守りつつ、適正な収益を得る行為」とグレアムは定義しています。
見極め方として、次のような場合が挙げられます。
- 企業の業績自体が不安定なケース
- 期待が高まりすぎ株価が必要以上に上昇するケース
つまり、株価が安定せず大きく変動するのは不安定要素があるということを表し、期待以上に株価が上がったことでプレミアムがついても状況は永遠に続くわけではありません。
投機家の関心事は、企業の不安定要素やプレミアムによって株価がどう動くのか、そして株価の変動をいかに予測して利益を得るかにあります。
一方で、グレアムが考える投資家の関心事は、適切な証券を適切な価格で取得し保有することです。
まとめるとこのようになります。
- 投資の定義は「詳細な分析」「元本の保全」「適正な収益」の3つ
- 投機の要因は「企業の不安定要素」と「プレミアム」の2つ
グレアムは、債券や優良株などにも投資をしていましたが、どの証券においても「投機は行わない」という基本原則を守っていたそうです。
この方針は、元本の安全性を守り、適正な収益を得るという「グレアム流投資術」の大前提なのです。
企業の財務報告書を理解する
財務状況を見極める貸借対照表の読み方
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは、企業がどんな資産・負債・純資産を、どれだけ持っているかをまとめた、決算書類のことをいいます。


出典:GRANDIT BLOG「貸借対照表の基本的な見方と3つのポイント」
この図のように貸借対照表には、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つに分けられ、資産の部は負債の部と純資産の部の合計と一致します。
資産の部の中には、企業が保有する資産が記載されていて、種類がいくつかあります。
たとえば、現金・預金や有価証券など、1年以内に現金化されるものは「流動資産」と呼ばれます。
一方で、土地や機械(設備)など、1年以上保有する資産は「固定資産」と呼ばれます。
負債も、同じように期間によって分類され、1年以内に返済期日が到来する負債は「流動負債」、1年以内に返済義務が発生しない負債は「固定負債」と呼ばれます。
純資産は、資産から負債を引いた金額のことで、株主が出資した資本金や、企業が蓄積してきた利益(利益剰余金)などが含まれます。
資産は多ければ多いほど良いとされますが、グレアムは「換金性の高い資産が多いと財務は安定する」と説きます。
見極めるポイントは2つ。
- 適切な流動比率であるか
- 資産の内訳に注目する
ということです。
流動比率が100%を超えると、流動負債より流動資産が多いことになり、返済に充てるだけの資産が十分ある安全な企業といえます。
しかもグレアムは、工業系の企業を分析する際の目安として「少なくとも200%の流動比率」「棚卸資産が、少なくとも流動負債と同等」ということを挙げていて、どちらにも該当しない銘柄は財務が不安点だとしています。
資産の内訳に注目するでは、たとえ資産の総額が減少したとしても、内訳をみると、棚卸資産(在庫)が大きく減少し、このとき企業は在庫を売ったことでキャッシュが増加し、財務が改善される可能性があります。
かぶ1000さんは、さらにこれを踏まえて「業種によっては棚卸資産の内訳にまで注目するのも一手」だと言います。
下の図は、ガソリンスタンドを運営するために原油からガソリンなどをつくる企業の出光興産(5019)の貸借対照表の一部ですが、棚卸資産の多くはガソリン、原油と考えられます。
そこで、原油価格動向と併せて見ること。で業績予想をしやすくなります。


一般的な小売業であれば棚卸資産の価値を探ることは難しいですが、こうした業種は棚卸資産がわかりやすい特徴があるとしています。
そこで、貸借対照表を読み解く部分でのポイントをまとめると、次になります。
- 財政がよい企業の目安は流動比率が200%以上であること
- 資産の総額だけで判断せず、棚卸資産などの内訳にも注目する
損益計算書で稼ぐ力を読み解く
損益計算書は、その企業が一定期間に得た収益や支払った経費などがまとめられていて、どれだけ稼ぐ力があるのか、つまり収益力が高いかを読み解くことができます。


出典:GRANDIT BLOG「損益計算書の基本的な見方と2つのポイント」
まず、注目すべきは当期利益(当期純利益)です。
損益計算書のもっとも上部に記載されている項目は、企業が売り上げた金額の売上高です。
売上高から経費や税金などを差し引くと、企業が稼いだ最終的な利益(純利益)がわかります。
一般的に「前期と比べて上がったから買い」「収益が下がれば売り」などと考えることが多いですが、グレアムによると、この考えには2つの誤りがあるといいます。
それが、
- 収益力だけで売買を判断すること
- 収益力と収益トレンドは違う
ということです。
損益計算書の数字は、貸借対照表の数字に比べて急に変化する可能性が高いです。
たった1年間で資産が50%減少するケースはめったにないが、1年間で当期純利益が50%減少するケースは経営やマーケット次第で十分考えられます。
つまり、収益のような変化しやすい数字を基準に売買を繰り返すと、投資ではなく投機性が高まってしまうということです。
そして収益力だけでは将来の業績や株価を判断できません。
ですので、「過去の業績はあくまで大ざっぱな手がかり」というスタンスを取るべきだといいます。
「収益力と収益トレンドは違う」という点ですが、そもそも収益トレンドとは、直近の収益が増加傾向にあるか、減少傾向にあるかを示したものです。
収益トレンドが上向きであれば、今後も継続的に上昇が続くだろうという印象を抱きますが、収益は水物です。経営やマーケット次第で変化する可能性があります。
たまたま通常の利益より増えただけで買いが増え、株価が上昇しても、翌年に通常の業績に戻れば株価は下落する可能性があるということです。
そこで、「収益力」は、企業が通常的に稼げる金額ということを定義しなくてはいけません。
つまり、不況や好況による一時的な収益の増減は考慮せず、通常的にどれだけ稼ぐことができるかを表すのが収益力だと考えるべきなのです。
そのため、通常の業績が安定的であり、今後も変わりなく業績を継続できる企業であれば、純利益の平均を計算すると収益力を算出できます。
しかし、ある年に赤字を出した場合は、どのように計算すればいいのでしょうか。
グレアムによると、こうしたケースにおいては、利益が出ている10年間に限って平均を計算することで、その企業の通常の収益力を計測できるとしています。
また、赤字が出た時期だけでまとめて計算すると、不況時の対応を把握することができます。
損益計算書で稼ぐ力を読み解くポイントをまとめるとこうなります。
- 収益トレンドではなく、純利益の平均である収益力に注目する
- 収益力は赤字が出ている都市を除いて計算する
最近では、コロナ禍で企業の収益力がかなり減少しましたが、それがその企業の本来の収益力ではないということです。
そういった意味で、この算出法はかなり参考になるのではないでしょうか。
世界恐慌から学んだこと
無形資産を正しくとらえ、資産価値を把握する
企業には、現金や預金、土地、設備などの形ある有形固定資産と技術や権利、システム、プラットフォーム、のれん(ブランド力)といった形のない資産があります。
グレアムは、無形資産を正しくとらえ資産価値を把握することが大事だと説きます。
なかでも資産におけるのれん(ブランド力)の割合が大きい企業ほど、のれんの評価の変化から影響を受けやすいと説きます。
というのも、のれんの評価はその時々の時流によって変化するからです。
たとえば、のれんが大きくなりすぎると、それだけ投資家の期待感が高まり、「本当ののれんの価値」以上に高くなる可能性があるのです。
そのためグレアムは、帳簿に書かれた無形資産の価値を疑う、あるいは控えめに見積もる姿勢を持つべきだと考えました。
下の図を見ると、A社、B社という2つの企業がある場合、資産の内訳をみると、A社は有形資産が多く、B社は無形資産が多いことがわかります。
A社の資産価値を計算するのは簡単ですが、B社の資産の計算は、グレアムの考えに沿うと難しいといえます。


ただし現代では、ブランドやロゴを使った企業戦略が強まったうえ、IT企業の発展によりその重要性が高まったといえます。製造業や小売業とは違い、IT企業は形としての商品を持っていないことが多いです。
ですのでかぶ1000さんがの意見としては「現代では、無形資産の重要性が高まっているため、無形資産をすべて無視してしまうには無理がある。グレアムの時代より少し基準を緩めて考えてもよい」と言います。
といっても、すべての無形資産を無条件に考慮してしまうと投機性が高まってしまいます。
ですので、「特に収益に直結するもの」「ライバルが参入しづらいその企業ならではの強み」に限定して注目すればいいといいます。
まとめるとこうなります。
- のれんの評価はその時々の時流によって変化する
- 無形資産を考慮しつつ、投機にならないように注意する
バリュー投資の要、ネットネット株を探す
グレアムの投資術で有名なのが「バリュー投資」です。
バリュー投資とは、「企業本来の価値と比べて株価が安い状態の銘柄」のことです。
バリュー株は主に、「資産バリュー株」と「収益バリュー株」の2つがあります。
資産バリュー株は、企業が保有する資産(現金、有価証券、土地、設備など)の価値と現在株価を比べて、株価が安い銘柄を指します。
PBR(株価純資産倍率)を用いて判断されることが一般的です。
一方で、収益バリュー株は、企業が稼いだ収益と現在株価を比較して、株価が安い銘柄を指します。
一般的に、PER(株価収益率)を用いて判断されることが多いです。
グレアムの資産バリュー株の探し方は、時価総額と正味流動資産を比較する方法です。
正味流動資産とは、流動資産から負債を差し引いた金額のことです。
つまり、「財布の中にあるお金」ということです。財布に入ったお金が多いほど得られる利益が大きくなります。
対して、時価総額は株価×発行済株式数で求められる金額です。これはその会社をいくらで買い取れるかを表します。
つまり、「財布の値段」に当たり、この金額が安いほどお買い得になります。
では、正味流動資産と時価総額は、どれくらい差が開けばいいかというと、時価総額が正味流動資産の2/3以下であれば割安という基準を設けました。


現在ではこうした基準に当てはまる銘柄は「ネットネット株」と呼ばれています。
日本のネットネット株として、面活性剤や繊維用薬剤のメーカー松本油脂製薬(4365)を見てみますと。


流動資産は621億円。投資有価証券も加えると706億円になり、そこから負債総額130億円を引いて、正味流動資産は約576億円です。
対して、時価総額は2022年8月22日時点で393億円です。
正味流動資産の2/3というラインより時価総額が少し高いですが、負債項目には借入金などの借金は入っておらず、財務には問題ないためタイミングによっては買い時だという判断ができるのです。
それから上のチャート図の通り株価のパフォーマンスも良好で、2012年8月の株価4220円から、2022年8月の1万2000円台となり、10年で株価が約3倍に伸びています。
ただし、現代投資で見ると、このやり方の弱点として「正味流動資産」のなかには、企業がすぐに換金できるとは限らない資産が入っているところです。
そこでかぶ1000さんがこの基準を現代風にアレンジしました。
その基準とは、「換金性が高い流動資産-総負債」が時価総額より大きいことです。


換金性が高い流動資産とは、貸借対照表にある「現金及び預金+受取手形及び売掛金+投資有価証券+有価証券-貸倒引当金」が該当します。
通常なら、有価証券は固定資産に分類されますが、換金性が高いために流動資産に加えるのです。
貸借対照表からこれらの項目の金額を足し引きするだけで計算ができるため、グレアム流のネットネット株探しと大きく変わらないとかぶ1000さんは言います。
それから、かぶ1000さんは、どの資産が多いかによって「デフレに強い銘柄」「インフレに強い銘柄」と銘柄ごとの強みが分かれるともいわれています。
デフレとは、「お金の価値が高まり、それ以外の資産価値が低下する状態」を指しますが、この場合、キャッシュリッチ(現金が多い)バリュー株ならデフレ時には企業の価値も高まるため、より多くの利益を狙いやすくなります。
つまり、キャッシュリッチな銘柄はデフレに強い銘柄ということです。
一方で、インフレとは、お金の価値が下がり、それ以外の資産価値が高まる状態のことで、現金ではなく株式などの有価証券や、不動産を多く保有する企業の価値が高まる状態でもあります。
つまり、他社の株式を多く持っている“株リッチな株”や不動産を多く持っている“不動産リッチな株”はインフレに強い銘柄となります。
もう一歩踏み込むと不動産リッチ株の場合、「どこの不動産を持っているのか」にまで注目できるとなおよいとされています。
まとめるとこうなります。
- 時価総額が正味流動資産の2/3いかなら買ってもよい
- 資産の大小によってそれぞれ強みが異なる
バリュー投資の極意
防衛的投資家が買うべき銘柄の特徴、ポートフォリオ
防衛型投資家とは、「安全かつシンプルな投資を好む人」のことです。
逆に防衛的投資家より全体的な利益を多く得ることを望む人のことを「積極的投資家」といいます。
どちらの投資家を目指すかは、それぞれが抱える事情によって異なります。たとえば、仕事がほかにある多忙な人が投資を行おうとした場合、投資にまつわる勉強や資産管理に十分な時間を取れないというハンディキャップを負うことになります。
そのような人が無理に積極的投資家として投資を行うと、十分な戦略を立てることができずに、損失を被る可能性があります。
そのため、投資を専業とする投資家以外の個人投資家は防衛的投資家を目指すべきだとグレアムはいいます。
防衛的投資家が資産形成をするうえで大事なのが、ポートフォリオの構築です。
なるべく単純化したポートフォリオを組むことで、手間や時間を減らすことができます。
その手法として、株と債券を50対50の割合で持つ方法を提唱しています。


これが基本的なポートフォリオです。
これに慣れたならば、今度は相場の大まかな変化を読みながら、株式の割合を変えていきます。
グレアムは、バリュー株を購入し、高値づかみをさける手法として、「株式相場の変化に応じて、株式の割合を25~75%の間で変える」ことも解説しています。
たとえば、弱気相場(株式市場などの下落が継続的に続いていて、当面の間上昇が見通せないような相場環境)のときは、株式の割合を最大75%にまで上げるというものです。
なぜなら、弱気相場のときほどバリュー株が多くなるためです。
反対に、株価が上がり過ぎたときは要注意です。
株価上昇の後には下落が訪れるため、株式の割合を最小で25%まで減らす必要があります。
「相場が上がっているから株式を買う」という考え方は、投機に寄っているため避けたほうがいいのです。


それでは、防衛的投資家が買うべき銘柄の特徴を挙げてみたいと思います。
まず、財務状況が極めて良好で、今後収益が割り込めたいと見込める、などといった条件も確認する必要があります。
確認すべき基準は次の7つです。
- 適切な事業規模(小型株は避ける)
- 健全な財務状況(流動資産が流動負債の2倍以上かつ負債が株式資本の2倍以下)
- 収益の安定性(過去10年間で安定した収益がある)
- 配当歴(20年連続で配当を出している)
- 収益の伸び(過去10年のうち直近3年間の1株当たりの純利益が3年間より33%上昇)
- 妥当なPER(株価収益率)(PERが15倍以下)
- 妥当なPBR(株価純資産倍率)(PBRが1.5倍以下)
ただし、6と7の基準には例外があって、PERが15倍以下であればPBRはある程度高くてもかまわない。その目安を測るため、「PER×PBRが22.5未満であること」とされました。
この計算は「ミックス係数」や「グレアム指数」と呼ばれ、現在でもバリュー投資家に割安さを測れる指数として愛用されています。
それでは、これら7つの基準にあった銘柄を見てみましょう。
下の図は、堀場製作所(6856)に1~7の基準を当てはめてみたものです。


1~7までの基準は適合し、株価も上昇傾向。2012年8月には6000円台に上昇しました。つまり、約10年で株価が2.6倍になったということです。
このように、グレアムはこれらの条件に合致する銘柄を推奨しています。
こうした特徴に適合しやすい構造の業種として、電気・水道・ガスなど、生活に密着したサービスを提供するインフラに類する公益企業株を推奨しています。
しかし、すべての公益企業がいいというわけではありません。
たとえば日本の電力会社は約9割のエネルギーを輸入に頼っているので、為替や資源価格によって収益が左右されやすいのです。
ですので、かぶ1000さんは、現代においてインフラの特徴を持つ「通信株」が新しいインフラとして役割を果たしていると見ています。
実際に、通信株は収益が安定していて、配当が比較的高いです。なおかつ株価の推移も順調であることがわかります。
下の図は、通信株のKDDI(9433)です。


2012年~2022年の株価チャートですが、世界的にコロナ禍が発生した2020年でもマイナスの影響は小さく、順調に伸びていることがわかります。
7つの基準照らしてみても、ほぼ当てはまる優良株で、タイミングによってはバリュー株として購入できる銘柄であるといえます。
まとめるとこうなります。
- 財務や企業規模など総合的に判断するために7つの基準を用いる
- ミックス係数は割安さを測る指標として支持される
グレアムが確立した売りのタイミング
バリュー株投資というのは、いかに割安な銘柄を買うかが要になります。ですので購入タイミングの手法やその後の運用方法について注目されることが多いです。
でも、売りの基準については注目が薄くなりがちなところがあります。
購入した銘柄はいつか売却し、現金に換える必要がありますが、売りの基準を決めずに感覚的に売却を判断するにはどのようにすればいいのでしょうか。
購入時は割安だった銘柄が値上がりしたとき、どこで売るのが安全か、投機性が高まっていないか、いつまで保有しておくべきかなどを確認しておきましょう。
グレアムは、売却するタイミングとしての考え方を下の図のように取り決めています。


グレアムは、個人投資家向けのアドバイスとして「株式を買った理由に合わせて、明確な売却方針を持つべき」だと、売却についても言及しています。
バリュー株は、割安なタイミングで購入し、割安さがなくなったとき、購入の理由が崩れても十分な利益が得られるため、売却することができます。
バリュー株の株価が十分に上がれば、投資家はとても満足するでしょうけど、ここで余計な思惑を巡らせてはいけないともいいます。
たとえば、「ここまで株価が上がるんだったら、割安なときにもっと買っておけばよかった」「この強気相場に乗って買い増しをしたら、より利益が得られるのではないか」というものです。
こうした考えは、グレアムにとって余計な心配であり、むしろ失敗するもとにもなるというのです。
特に強気相場での買い増しは「最悪パターン」ともいえます。
というのも、強気相場ではプレミアムがつきやすく、その後は株価の下落が始まることがわかっているためリスクが高いのです。
まとめるとこうなります。
- 株式を買った理由に合わせて明確な売却方針を持っておく
- 含み益が出ても、余計な思惑を巡らせない
『ベンジャミン・グレアムの投資術』の感想・まとめ


先人の残した投資手法から学び、失敗しない投資術を身につけよう
漫画でわかる投資術の本として、少々軽く見ていましたが、全然見た目とは違い、中身の濃い一冊でした。
グレアム氏の投資術に対して、かぶ1000さんの解説やそこから昇華した現代に適した投資手法は、失敗しないとはいえなくても失敗の少ない投資には間違いないと思います。
まあ何といっても、株式投資には失敗はつきものではありますが、「してもいい失敗」と「避けなければいけない失敗」というのがあり、その避けるべき失敗を先人の投資術から学ぶのは、とても有意義だと感じました。
これからは、誰でもかれでも、投資をしていくべきですし、せざるを得ない状況になっていきます。
そうなったときに、「知っている」のと「知らない」のでは、大きな差ができてしまいます。
ですので、このわかりやすい投資本を入門用に取り入れ、自分に合った投資を心がけるのが一番ではないでしょうか。
そういった意味で、たくさんの人にぜひ読んでいただきたい一冊です。
『マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術』は、現在(2023年1月30日時点)amazonの本読み放題サービス「キンドルアンリミテッド」の対象になっています。
キンドルアンリミテッドは、ビジネス書からマンガまで幅広いジャンルの本が読み放題です。ぜひこの機会にご検討ください。
『ベンジャミン・グレアムの投資術』の概要


本書の目次
『マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術』
はじめに
PART 1 幼少~青年期 母の姿から事実を把握することの大切さを学ぶ
PART 2 成人期 ウォール街への就職と財務分析への挑戦
PART 3 壮年期 世界恐慌での失敗をきっかけにバリュー投資を開発
PART 4 最盛期 名著を執筆しバリュー投資を世に知らしめる
PART 5 熟年期 現代に通じる弟子たちのバリュー投資
グレアムの年譜
おわりに
著者の紹介
かぶ1000【監修】
専業投資家歴34年。
1988年中学2年生の時に貯金40万円を元手に株式投資を始め、高校2年生には株式資産を1500万円まで増やす。
専門学校卒業後に専業投資家となり、累積利益は4.8億円(2022年現在)。
投資スタイルはPMV(事業家的市場価値)とカタリストを重視したネットネット株、資産バリュー株がメイン。
株主資本成長率を最も重視。
ツイッター(かぶ1000@kabu1000)やツイキャスも人気。
主な著書
『貯金40万円が株式投資で4億円 元手を1000倍に増やしたボクの投資術』ダイヤモンド社第1版 (2021/1/12)
『賢明なる個人投資家への道』ダイヤモンド社第1版 (2021/12/7)
ひげ羽扇(ひげ・うせん)【漫画】
2008年に恋愛漫画家としてデビュー。
雑誌連載やWeb連載を経て、2016年に実用ジャンルの活動を開始。
商品パッケージおイラストやアプリイラストなども手がける。
作画を担当した書籍は『マンガでやさしくわかる敏感すぎるあなたがラクになる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『まんがでわかるランチェスター理論を経営・営業に活かす方法 差別化戦略で小が大に勝てる』(ウェッジ)など。


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