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『思い込みにとらわれない生き方』から学ぶ多様化社会を生きるために必要な「心の中立化」スキル

コウカワシン

こんにちはコウカワシンです。

今回は、坂東眞理子(ばんどう・まりこ)さんの著書『思い込みにとらわれない生き方』から学ばせていただきます。

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目次

『思い込みにとらわれない生き方』は、どんな本?

『思い込みにとらわれない生き方』は、ズバリ!「心の意識改革」教本です。

本書は、このような本

「アンコンシャス・バイアス」という言葉があります。

これは「無意識の思い込み(偏見)」という意味です。

「自分は思い込みが激しくないし、偏見なんて持っていない」という人はいませんか?

実は「思い込みがない」なんて言っている人こそ思い込みが激しいのかもしれませんよ。

わたしたちは、これまで生きてきた経験や得た情報から無意識の思い込みをしています。ですが現代の社会は、これまでの経験だけでは、収まりきらないほど多様化しているのも事実です。

著者の坂東眞理子(ばんどう・まりこ)さんは、「アンコンシャス・バイアス」から自由になり、とらわれない生き方を説くためのノウハウを本書に込められました。

本書は、社会が多様化し今後も複雑になっていくであろう人間関係にもメスを入れ、誰にでも起こりうるトラブルを防ぐためにも読んでおきたい一冊となっています。

本書がおすすめな人

『思い込みにとらわれない生き方』がおすすめな人

  • 親世代の人の常識に違和感を感じる人
  • 新しい文化に対してかなりな抵抗を感じる人
  • 自分の価値観と他人の価値観の違いに悩んでいる人

『思い込みにとらわれない生き方』の要点は?

「無意識の思い込み」であるアンコンシャス・バイアスは、誰もが持っていますが、それにより、偏見、他者批判など、争いの火種になりえます。

ましてや多様化社会の現代では、自分の価値観に合わなければ、「許せない」という極端な思考が沸き起こり、それにより終わりのない争いへと向かっていきます。

それを防ぐためには、誰もがアンコンシャス・バイアスを弱めていくしかありません。

コウカワシン

それでは本書から、わたしの独断で選んだ「ポイント」を取り上げてみたいと思います。

この記事から「この本いいなあ」と思っていただいたなら、ぜひ本書を手に取って読んでみてください。

アンコンシャス・バイアスとは何か?

まず「アンコンシャス」とは、「無意識」という意味です。無意識ということは、意識していないということですから、思い込みがあるなんていうことも意識していません。

「バイアス」というのは、偏った見方、考え方をすることです。自分が何か偏見を持っていることも自覚しないまま、何気なく言ったり、行動することを指します。

たとえば、こんな考え方をしていないでしょうか?

あの人は、有名大学を出た人だから、優秀で頭がいい。

頼りなさそうな人だけどいざという時には頼りになる。さすが男だね。

○○県人は、お酒が強い。

関西人は面白い。

家事や子育ては女性がやるもの。

女性は小さいことによく気が付いて、清潔でおしゃれで、細やか・・・・・・。

こういった思い込みは全員がしてるわけではありませんが、平均すればこんなとらわれ方をしている人が多いといえます。

多くの人は、自分の経験上にあるものを参考にこのような考え方をしているということです。

でも学歴が高いからといって優秀でない人もいますし、低学歴でも優秀な人はたくさんいます。

人それぞれ異なる存在であるのに、まとめて偏見というレッテルを貼っている、「こういう人」と思い込んでいるというのが、アンコンシャス・バイアスなのです。

しかもアンコンシャス・バイアスは、「この女性はしっかりしていて成績優秀だが、どうせすぐ結婚して退社するだろう。男のほうが伸びしろがあるな」と思い込んで平凡な男性のほうを採用するという悲劇を生んだりします。

今では死語になりつつある「女性の幸せは結婚して子供を産むこと」「男性はきちんと仕事をし、妻子を養っていかなければいけない」という決めつけも、いまだに根強く残っています。

こういう考え方が、自分自身の視野を狭め、アンコンシャス・バイアスにとらわれて自分の価値観に影響してしまうのです。

ですが今は、社会が大変革しています。

リモートワークに見る働き方自体も移行中ですし、それにともない生活も変化しています。

そのうえ、LGBTQや夫婦別姓の問題など、多様な価値観を認めることも求められています。

つまり、自分の経験にない価値観や社会にいちいち腹を立てないで適応していくためにも、まずは自分の中にもアンコンシャス・バイアスがあることを認めていくことから始めていかなければいけないというのが著者の意見です。

アンコンシャス・バイアスはなぜ起こる?

なぜ、アンコンシャス・バイアスが起こってしまうのでしょう。これには大きく分けて2つの理由があると著者は言います。

  • 「自分の経験からこうに違いない」という思い込み
  • ひと昔前の過去の経験にとらわれてしまっている

「自分の経験からこうに違いない」という思い込み

たとえば、これまで100人以上の外国人と接してきたとします。

もうそれだけで、自分は国際派だと考え、その経験から「外国人は日本人と違ってこういう性質を持っている」と外国人を型に入れて考えてしまうのです。

先ほどの「○○県人はお酒が強い」とか「関西人は面白い」というのと同じです。

しかし、外国人は世界に何十億人といます。それらを自分の狭い経験から分類するのは無理です。

とはいえ、数十億人と会うことは不可能です。そのため、自分の限られた経験から、「外国人はきっとこうだろう」と推測し決めつけてしまうのです。

ひと昔前の過去の経験にとらわれてしまっている

たとえば、昔はこうでした。

女性は勉強ができても短大に進学し、数年働いたら、結婚して子育てにいそしむのが当たり前でした。

子どもが生まれても働き続けるにはさまざまな困難があったという経験をした女性は、自分の娘にも「子どもが生まれたら、無理して働くことないわよ」と言ってしまいます。

つまり、過去の自分の経験に引っ張られてしまった結果、アンコンシャス・バイアスに陥ってしまったのです。

これは、「環境の激変」を体験してこなかったり、または意識的に新しい情報に触れてこなかったりした人によくある思い込みといえます。

たとえば「環境の激変」を体験しないというのは、こういうことです。

  • 海外生活や環境の変化がなかった
  • 転職を経験しなかった
  • 数十年同じ勤め先、同じ業務に就いていた
  • 離婚や失業などのつらい経験をそれほどせず、人生を順調にすごした

つまり、人生経験の幅が狭かったり、限られた人とだけ付き合ってきたりした「行動範囲や生活パターンがある程度決まった中で生きてきた人」ということなのです。

こうなると、「自分の当たり前」を疑うような機会がほとんどありません。

自分の考え方が通用せずにおどろいたり、それに反発したりする経験が乏しいため、知らないうちにアンコンシャス・バイアスにとらわれてしまうのです。

でもたまたまそういう環境に生きていくことが悪いのではありません。

とはいえ、アンコンシャス・バイアスに陥らないために、新しい価値観に触れよう、と自ら意識する必要があるということです。

もちろん、「新しいから良い」「古いからダメ」と決めつけるのもアンコンシャス・バイアスです。

これまでの経験や知識で積み上げられた知恵は尊重するべきですし、今までの経験が間違っているわけではないのです。

ただ、その知恵の中には、時代や環境の変化にともなって、現代では通用しなくなっているものも少なくないといえます。

「昔から常識だったことはそう変わらない」といった「昔からの知恵=100%良い」というのが思い込みなら、逆に「古いものはもう通用しない」というのも思い込みです。

良いものもあるけど、通用しないものもあるということです。

また基本は変わらないけど表現は時代にそぐわないというものもあります。そのことを理解する必要があると著者は言います。

社会によって形成されるアンコンシャス・バイアス

社会によってつくられたアンコンシャス・バイアスもあります。

たとえば、昭和~平成はこんな感じではなかったでしょうか。

社会人は、何があっても休まずに職場に出勤して仕事をするのが当たり前といった常識。

前日に飲みすぎて二日酔いでも、風邪をひいても熱があっても、休まない、這ってでも出勤するというのが勤勉だと評価される時代でしたよね。

でも今では、このコロナ禍でそんなことをしたら「迷惑だ」と非難されてしまいます。

そのほかにも、

上司が残っていたら部下も付き合うべきだ。

有給休暇を取ると周囲に迷惑をかける。

子供が風邪を引いたという理由で休むのは肩身が狭い

などとされてきましたよね。

また、一度企業に勤めたら、どんな嫌な仕事でも、つらくてもがまんして定年まで勤めあげるのが安定した人生を送る秘けつとされ、そのレールからはみ出すのは「わがままで忍耐力のない人」ともいわれてきました。

もちろん、まだまだ若いうちから起業するといえば、「失敗したらどうするんだ」と失敗を恐れ、失敗した人に対しては、「あいつは失敗して人に迷惑をかけた」と烙印を押すというのが社会の常識でした。

そして、「仕事は会社に出社してするもの」、「舅、姑の介護は、長男の嫁のつとめ」という思い込みも昭和~平成の社会では当然のようにあり、今の感覚で生きる若い世代はびっくりすることでしょう。

昭和~平成の時代を生き抜いてきた人も、昔の価値観が抜けきれないまま令和に突入した人もたくさんいます。

このギャップは、これからしばらくたっても急にはなくならないと予想できますね。

「思い込み」にとらわれないために心がけること

それでは、思い込みや偏見にとらわれない生き方をするにあたり、どのようにすればいいかですが、著者は次の方法を紹介しています。

経験を増やす

アンコンシャス・バイアスに陥る多くの原因は「経験が少ない」ことです。

これは、自分自身の視野が狭いことを物語っています。

たとえば、一つの職場でしか働いた経験がない人は、自分が属している会社内での当たり前としている常識、ルール、マナーが社会全体に通じると思い込んでいます。

しかし、そのような人が、「分野の違う会社や集団に入る」という経験をしてみると、「前の会社では当たり前だったことが、この会社では違う」と、相対化することができます。

著者も公務員から大学教員になって、最初は戸惑ったものの、それぞれ別のルールがあることを認識し、許容範囲が広がったといいます。

つまり、「経験を増やす」ということはアンコンシャス・バイアスを弱めるのにとても大事なことなのです。

本を読む

「本を読む」こともアンコンシャス・バイアスを弱めるのに効果があります。

なぜなら、「他者との違い」、「文化の違い」など、さまざまな「違い」を知ることができるからです。

著者は、もともとストーリー性豊かな文学作品や歴史書が好きでよく読むそうですが、科学書や経営学の本を読むこともあるそうです。

そのように違うジャンルの本を読むことにより、自分とは異なる考え方、新しい思考、新しい世界に触れることができ、「自分とは違うけど、こういう感じ方や見方、考え方もあるのか」と気づくことができるのです。

そういう考え方ができると、世の中の人たちのみんなが、同じ考えを持っているわけではなく、こうした「違い」を知識として知っているか、知らないかで意識が変わってくるのもうなずけますよね。

でも、自分で選ぶというと、やはり分野が偏ってしまいがちです。こんな時は、「図書館に行く」、「書店で本を選ぶ」のが最適です。

というのも、ネットで本を選ぶとなると、次々と同じ傾向の本がすすめられ、新しい分野の本に触れずらくなるからです。

そこで、図書館や書店に行き、「自分以外の他者の視点が入っている本」に触れることで、分野の偏りを弱めていきましょう。

好き嫌いで決めつけない

「決めつけない」ということです。

人は、物事を無意識に好き嫌いで判断して決めつけてしまっていることが多いといいます。そのうえ、自分が嫌いだと思っているものは、どうしても興味が持てずに切り捨ててしまうということをします。

アンコンシャス・バイアスを弱くするためには、その習慣を見直すことが重要になってきます。

とても難しいことですが、嫌いなものでも完全にシャットアウトせず、視野に入れるくらいには、やわらかい関心をもつべきだというのが著者の意見です。

なぜなら、時代の移り変わりで、そのときそのときの関心事がかわってくるからです。

たとえば、今やカリスマ的な存在で、人々が共鳴する言葉を説く美輪明宏(みわ・あきひろ)さんは、あの中性的な雰囲気が災いしてか、若い時にあまり評価されず、逆に良く思わない人がかなりいました。

瀬戸内寂聴(せとうちじゃくちょう)さんも出家する前は、波乱万丈な人生を送りメディアからは叩かれていましたが、その後、国民的なスターとなり、人々の悩み、苦しみを救う存在となりました。

このように、前には嫌いだった、苦手だったと思っていた人であっても、その人自身も時代も変わります。

自分とは別の考えや感じ方に日常的に触れておくことで、「自分とは違うけど、そういう考え方もあるんだ。なるほど・・・」と受け入れられる力が身についてきます。

著者は、自分の価値観に固執することなく、他者の考え方や価値観を受け入れる。そんな心のあり方を「やわらかな知性」と呼んでいるそうです。

つまり、「しなやかであれ」といっているのです。

アンコンシャス・バイアスを弱めるためにも、自分の嫌いなもの、自分とは違うものでも、しなやかに受け入れる「やわらかい知性」を心がけたいですね。

常識の2面性を学ぶ

「常識の2面性」を学ぶことも大切なことです。

ひとくちに常識といっても敬語やあいさつなどのマナー、社会で生活するための基礎的な知識、専門家の常識、その企業内で通用する常識など、いろいろなレベルがあり、すべての常識に従う必要はないにせよ、そういった常識を知ることは大事です。

一方で、常識には流行の部分もあります。

時代や人の変化に合わせてどんどん変わっていく常識です。実は常識の大半を占めるのは流行の部分で、昔から現代まで引き継がれ変わることのない常識の部分はとても小さいのです。

そんな流行の常識を時代を通じて変わらない常識であると思い込んでしまうところに、無意識の偏見、アンコンシャス・バイアスが生じるのだと著者は言います。

たとえば、昔はこのような常識が定着していました。

「24歳までに結婚しなきゃ条件が悪くなる」

「若くないと結婚できなくなる」

「妻子を養える収入がないと結婚する資格がない」

最近のニュースで、女性の医学部受験での差別問題がありましたが、これも医療現場に女性が増えると途中(結婚・子育て)で辞めてしまって人手不足になる、だから男性を確保しなければいけない・・・が、常識として横行したのです。

ですが、このような流行の常識は、ちょっと考えると思い込みであるとわかるものがほとんどです。

その時代には常識で、いかにももっともらしく扱われたものもご都合主義で、根拠の薄弱なものが多いということです。

特に女性の出産・育児に関する問題は、経営者側の「女性を安い給料で使いたい」という意図もあったし、「育児休業で休む女性は使いにくい」「女性に長く勤続されると困る」という本音もあるでしょう。

それを「常識」と思わせることで上手に女性を排除してきたということです。

どちらにしても、時代や限られたフィールドの中で生まれた常識で生きてきた人はそうしたことがあたかも時代を通じて変わらない常識であるように思い込みがちです。

そこで、今の常識が本当に正しい常識かどうかを見分けるための解決策は、「時々、自分の置かれている現状について、別の視点はないか、と考えてみること」です。

一度立ち止まって考える時間を持ちましょう。自分の意見を親しい人に口に出していってみてもいいと思います。意見が分かれたなら「人は違う考えなんだ」と発見することができるということになります。

さまざまな情報源を持つ

「さまざまな情報源を持つ」ことはとても大切です。

というのも、現代の情報化社会において、一つのパイプだけで、すべての情報をカバーするのは非常に難しくなっているからです。

いつも使っているスマホやPCの検索サイトでは、情報を収集する際、単に検索しているだけでは自分が興味を持っている情報しか出てきません。

これは収集する情報にすでにバイアスがかかっている状態です。

インターネット空間の中だけに住んでしまうと、自分の嫌いな情報はシャットアウトしているので一切入ってきません。

そうなると、自分の好き嫌いの感覚だけで無意識に物事を決めつけてしまうことになります。

テレビだって、「見たい番組だけ見る」という人が多いはずです。

結果、「自分が賛同できる情報だけを信じ、嫌いな情報はフェイクだ」と決めつけてしまうことでしょう。

また、自分と同意見の人ばかりと話をしていると、あたかも「自分の考えていることが世間の常識だ」と疑いもしなくなります。

加えて、好きなこと、興味の対象だけにどんどん深入りして狭い世界に入っていき、「まだ知らないけど、自分が興味を持つかもしれない情報」「知ったら面白いと思う情報」すらも入ってこなくなるのです。

そうならないための方法が、「さまざまな情報源を持つこと」です。

インターネットに頼るだけでなく、「新聞」や「本」といった紙の媒体から得るのが、手っ取り早い方法ですよね。

新聞は、いつも読む新聞以外に数紙(できれば逆の視点からとらえているもの)読むことがベターですし、本は自分の知らない情報をいくらでも知ることができます。

図書館、書店に訪れ、本当に欲しかった本とは別に「これも面白いかな?」とついでに手に取った本が、実は良かった、今まで知らなかった知見を得られたというのは、かなりな頻度であります。

このように、自分には無駄だと思っている情報や、自分の興味の有無に関わらない情報がたくさんある場所に行くと、世界が広がります。

これらの方法で情報を複層化していきたいものですね。

特定の集団にとらわれない

「特定のコミュニティに固執しない」ことも大切です。

たとえば、子どもが通う学校の仲良しグループ=ママ友のコミュニティの中では、なんとなくみんな同調しなくてはならない雰囲気になりがちです。

「お茶会やランチ会など、定期的な集まりに来ない人は陰で悪口を言われそう」「子どもが仲間外れになるとかわいそう」などと考え、つい無理やがまんをして行きたくない集まりに行ったり、気の合わないママたちとつながり、コミュニティにしがみついてしまうのです。

このように、職場や家庭以外のコミュニティも、人を束縛することがあるのです。

そんな場合は、一応コミュニティに在籍はしているものの、そういった集まりには3回に1回は出ないといった習慣をつくって、「あの人はそういう人だから」というようにしておけば、毎回コミュニティの同調圧力に従わなくてもよくなります。

簡単なことではないかもしれませんが、チャレンジするのも大事なことですね。

そして、「コミュニティに依存しない」という姿勢を持つのもアリです。気が合わないコミュニティに無理に固執しないほうがよっぽどハッピーだからです。

特にママ友コミュニティなどの場合、「自分が抜けると子どもがかわいそうだ」と思うかもしれませんが、子どもにとっても別の世界があることは、良い経験になるはずです。

こんな場合は、親子で居場所を探してみるのもいいことで、子どももスポーツクラブや学習塾といった、学校とは別の集団に属すると視野が広がります。

それから、別の世界に飛び込む際には、今まで関わりがなく自分のことも知らない環境のほうが楽な場合があります。人間関係を構築するためにゼロからお互いを知ることになります。

今までとは違うルールを持つ、行動範囲外のコミュニティに入る、ということでアンコンシャス・バイアスに陥ることも防げるということです。

失敗を恐れずに新しい価値観を受け入れる

「失敗することを恐れず、新しい価値観を受け入れる」ことでアンコンシャス・バイアスを弱めることができます。

というのも、アンコンシャス・バイアスの温床となるのが「古い価値観」だからです。

古い価値観が通用する安定した環境にいれば、あまり失敗したり、痛い思いをしたりといった経験をすることはないかもしれません。

なぜならそれは、一つの価値観が通用する世界で生きているからです。

人間は、自分の正しいと思っていたことに反発されたり、失敗したり、怒られたり、いじわるされたりということが多く起こる現実の世界で、耐えて生き延びることにより、自分とは違った価値観、常識があることを知り得ます。

しかし、保護され続けている人や、別の世界で失敗したことがない人は、その経験がありません。

そしてその必要がないと、ぬくぬくとした温室のようなその場所から出てこようとはせず、そのため、どんどんアンコンシャス・バイアスが強くなってしまうということです。

誰でも嫌な思いはしたくないものですが、自分の古い価値観に安住する限り、自分の接する世界がどんどん狭くなり、仕事、趣味、人間関係などもどんどん収縮していき、結果、その思い込みが自分を苦しめ、他人をも傷つける可能性すらあります。

そうならないための提案として著者は、こう言います。

違う価値観の人に会ったら、「へぇ~、こんな考え方もあるんだ」と言って面白がってみること。自分と違っていることを楽しんで、やわらかく受け入れるのです。

とくに年齢を重ねれば重ねるほど、自分では気づかない殻に閉じこもりがちになりますから、意識してこのようにやわらかく受け入れる姿勢でいなくては、新しいことに興味すら持てない人間になってしまいます。

周りの目や声を過度に気にし過ぎない

「周りの目や声を過度に気にし過ぎない」ことも大切です。

毎回同じ人と同じ会話を繰り返していると、どうしても世界が狭くなり、自分の近くにいる人、近くにあるコミュニティの人たちの目線や意見が世の中の正解になっていると思い込みがちです。

たとえば、「子どもが小さいうちは専業主婦で子育てするほうが、子どもにとって良い」とか、「フルタイムで働いたら、親子が触れ合える時間が少ないから、子どもがかわいそう」という周囲の声があったら「そうかも」と真に受けてしまいますよね。

でも、これはあくまでもその限られたコミュニティの中にいる人たちの考え方にすぎません。

この逆の考え方として、「親の働く姿を小さいうちから見ていた子どもは自立心が強くなる」とか「会えない時間が長いからこそ、触れ合える時間を大切にできて子どもとの絆が強くなる」というのがあります。

他にだって、子育てを終えた世代が集まるコミュニティや、子どものいない人、独身の人、異性の多いコミュニティでは、また違った意見があることでしょう。

生き方や働き方にも「必ずこうやってやらなければならない」ということはありません。

さらに、時代は常に変化し続けていて、世の中全体の常識も刻々と変わっています。思い切って今までいたことのない世界へ飛び込んでみれば、自分の今までの価値観が覆されることだってあるでしょう。

それには、さまざまな情報を集めたり、意見に触れたりすることで、いろんな価値観があることに気付けると思いますし、アンコンシャス・バイアスを防ぐ意味でも、自分の人生の可能性を広げる意味でも、周りの目や声を過度に気にすることは止めるべきです。

それよりも、もっとたくさんの人と出会い、たくさんの本を読むことが大切であると著者は繰り返しそう言います。

他人の価値観をリスペクトする

誰でも、「○○は、○○すべき」という価値観を持っていると思いますが、他人の価値観にもそれなりに尊重してみることもアンコンシャス・バイアスを弱めるきっかけになってくれます。

自分の「○○は、○○すべき」から外れている人に対して批判したり、攻撃したり、排除するのではなく、その人の意見にも耳を傾けるということです。

ただし「○○は、○○すべき」にも、社会的責任が伴うものがあります。

たとえば、日本大学の前理事長が所得税法違反罪に問われた件がありましたが、やはり大学の理事長たる者は法律を守り、清廉潔白であるべきですし、「個人の自由だから好きなように行動する」と言うべきではないと著者は言います。

わたしもこの意見に賛同します。

では逆に「○○は、○○すべき」を展開しないほうがいいのはどんな場合かというと、たとえば、行動を制限したり強制したりするものが当てはまります。

「社内恋愛禁止」

「受験生は遊んではダメ」

「母親なら子どものために自分を犠牲にするべき」

というものが、わかりやすい例ですね。

まあ、とにかく物事すべてが「○○は、○○すべき」で語れるものではなくて、人それぞれの価値観やモノ・コトに対する価値観の違いによって変わるものだというのを認識することです。

では、アンコンシャス・バイアスに陥らないためにどうすればいいかは、「社会に受け入れられる範囲はどこまでか、どこからが行き過ぎなのか、自分の立場も含めてわかっておくこと」だと著者は言います。

とても難しいことですが、自分の大事にしたい価値観、それを認識したうえで他人の価値観も大切にするというスタンスを持つことが重要で近道のような気がします。

持っていた思考やイメージを意識的に手放す

「持っていた思考やイメージを意識的に手放す」とはいってもピンときませんよね。

これまでの経験や知識、また付き合ってきた人たちによって、わたしたちの思考は形作られています。

そのため、アンコンシャス・バイアスがあると認識しても、その考え方を切り替えるのは簡単ではありません。

それでも、いったん、自分が持っている経験やイメージを意識的に手放してみることを著者は勧めています。

たとえば、昔、親から受けていた「男(女)は、○○あるべき」というイメージとか昭和、平成のころに自分がしていた働き方、そして思考などです。

これらをすべて手放し、今の働き方はどうなのか、考え方はどうか、若い世代はどんな結婚観を持っているか、といったことをまっさらな気持ちでインプットするのです。

余計な先入観やイメージを持たずに物事を見ることができれば、それがそのまま、とらわれることなく多様な視点を持つことになるということです。

著者も、実際にすべてを手放すことはなかなかに難しいし、自分自身もその境地に至ってはいないと述べています。

しかし、少しずつ自分の古い経験を過去のもの、と認識するように心がけているとのことです。

『思い込みにとらわれない生き方』の感想・まとめ

無意識の思い込みをやめ、「柔軟な思考」を持ち「心の中立化」をはぐくもう

「時の流れに身を任せ~」といいますが、移り行く時代に沿った思考を持つというのは、人間として生きていれば、それが困難であることを誰もが感じると思います。

でも、時は流れ、その時その時の「自分の立ち位置」は、自分の価値観を変えざるを得ない機会を与えてくれると思います。

その時に適切に自分の「価値観」「思考」「偏見」を柔軟に変更し、社会に対応していける人こそが、生き残れる人になっていくのだと感じました。

人生100年時代に大事なことは、一に「健康」、二に「柔軟な思考」だと思います。

たしかに変わらぬ価値観はあります。

ですが、多様化する社会、進化する社会に自分を合わせていく必要は誰もがあります。

そういった意味で、本書は「柔軟な思考」「心の中立化」をはぐくむうえでの入門書といえます。

ぜひ、たくさんの人に読んでいただきたい一冊です。

『思い込みにとらわれない生き方』の概要

本書の目次

『思い込みにとらわれない生き方』

はじめに

第1章 アンコンシャス・バイアス=思い込み とは?
第2章 日本特有のアンコンシャス・バイアスを考える
第3章 人間関係の中にある「思い込み」
第4章 「思い込み」にとらわれない生き方とは

おわりに

著者の紹介

坂東眞理子(ばんどう・まりこ)

昭和女子大学総長・理事長。

1946年富山県生まれ。

東京大学卒業後、総理府入省。1995年埼玉県副知事。

1998年オーストラリア・ブリスベン総領事。

2001年内閣府初代男女共同参画局長を務め03年に退官。

2004年昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。

2007年に同大学学長、2014年理事長、2016年から現職。

著書に300万部を超えるベストセラーの『女性の品格』の他『70歳のたしなみ』『幸せな人生のつくり方』他多数。20代から仕事と執筆を精力的につづけながら、同時に出産、子育て、転職、親の介護、孫の育児手伝いなども経験。

趣味は読書、短歌。

主な著者

女性の覚悟』主婦の友社 (2022/6/30)
女性の品格』PHP研究所 (2006/9/16)
大人になる前に身につけてほしいこと』PHP研究所 (2008/6/27)
賢く歳をかさねる人間の品格』SBクリエイティブ (2020/12/4)
親の品格』PHP研究所 (2007/12/15)
やわらかい知性』河出書房新社 (2021/12/17)
幸せの作法 働く女性に贈る61のヒント』角川アスキー総合研究所 (2011/8/10)
仕事も人間関係もうまくいく 大人の気づかい』リベラル社 (2017/4/7)
女性の幸福(仕事編)』PHP研究所 (2010/9/16)
美しい日本語のすすめ』小学館 (2009/10/6)
つなぐ力 つながる作法』潮出版社 (2013/4/20)
言い訳してる場合か!‎ 法研 (2017/12/30)
女性の知性の磨き方』ベストセラーズ (2015/2/25)
錆びない生き方』講談社 (2010/3/30)
すべては書くことから始まる』クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2016/12/21)
働く女性が知っておくべきこと』KADOKAWA (2013/6/10)
「なりたい!」が見つかる将来の夢さがし! 職業ガイド234種』集英社 (2001/9/26)
日本の女性政策―男女共同参画社会と少子化対策のゆくえ』ミネルヴァ書房 (2009/10/1)
坂東眞理子の 「わたし」磨きの名言集』世界文化社 (2009/10/21)

共著

女は後半からがおもしろい』潮出版社 (2011/5/20)

コウカワシン

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

四国在住。
ミニマリスト。趣味は映画観賞と音楽鑑賞、読書、野球観戦。
映画は特に好き嫌いなくほとんどのジャンルーを観ます。音楽はジャズとクラシックが大好きです。読書は歴史書が好きでよく読みます。

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