
こんにちはコウカワシンです。
今回は、バートン・マルキール/チャールズ・エリス両氏の共著『投資の大原則』から学ばせていただきます。
『投資の大原則』は、どんな本?
『投資の大原則』は、ズバリ!「確実な資産づくりのテキスト」です。
本書はこのような本
人生100年時代と言われていますが、生きていくにはお金が必要です。
昨今では、あまり聞かれなくなった老後2000万円問題ですが、やはり備えあれば憂いなしです。
できるだけ若いうちから貯蓄することを心がけ、貯蓄したお金を投資に回せば、複利効果から思ったより多くの資産を得ることができます。
名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』のバートン・マルキール氏と『敗者のゲーム』のチャールズ・エリス氏は、「長期投資のバイブル」ともいえる本書を世に出しました。
それは、日本でも始まった「つみたてNISA」、「iDeCo」にもうまく適応できる内容で、一生お金に困らないノウハウが満載ということです。
つまり本書が目指すところは、「長い期間をかけての資産形成」ということになります。
しかも誰にでもできる至高の成功法則を知ることができる一冊なのです。
本書がおすすめな人
『投資の大原則』がおすすめな人
- 高校生
- 「つみたてNISA」、「iDeCo」をまだ始めていない人
- 投資を始めたいけど、どうすれば失敗しないかを知りたい人




『投資の大原則』の要点は?
本書では「Keep It Simple,Sweetheart」を合言葉に、その投資法を「KISS Investinng」(簡単で単純な投資法)と名づけました。
それには5つのルールがあります。
- できるだけ若いときから計画的に励む
- 政府や企業の貯蓄優遇や課税軽減制度を最大限に活用する
- インデックスファンドで広範な分散投資
- リバランス通じて資産配分を守り続ける
- 市場価格の変動に惑わされない
このシンプルな投資を実践するための手順を様々な事例やエピソード、最新のデータを駆使して解説しているのが本書です。



それでは、わたしの独断と偏見で、その根拠となる部分を本書から取り上げてみたいと思います。
若いうちからの貯蓄のススメ
節約して損をすることはない
浪費で損をすることはあっても節約で損をすることはありません。
節約の第一歩はムダづかいをやめることです。自分の収入以上に浪費する生活は貯蓄できないどころか、生活破綻を起こす恐れがあります。
とくにクレジットカードの使いすぎをやめないといけませんし、カードローンに頼ってもいけません。
クレジットカードやカードローンで得をするのはカード会社だけです。
しかもたちが悪いのは、「すぐに返さなくてもよい」と、リボ払いなどの手法を顧客に勧め、本来なら返さなくてもよい利子まで上乗せして返済させます。
ですので、必要以上の浪費はするべきではなくて、カードも使わず節約してなるべく貯蓄し、貯まったら余剰分を投資に回しましょう。
驚異の「72の法則」
「72の法則」というのをご存知でしょうか?
お金が2倍になる期間が簡単にわかる便利な算式で、「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となります。
これをXとYを使った計算式で表すと、
X(お金が2倍になる年数)×Y(リターンの年率)=72
になります。
例をあげると、
- お金を10年で2倍にするには、どれくらいなリターンが必要か?
-
10×Y=72なので、Y=7.2%
- 8%のリターンのとき、自分のお金が倍になるには、何年かかるか?
-
72÷8=9なので、9年
- 年利3%では、何年で資産を倍にできるか?
-
72÷3=24なので、24年
と、このようになります。
この「72の法則」に当てはめれば、今手持ちのお金を投資に回し運用することが、興味深くなりますよね。
「時は金なり」と言いますから、資産を長期にわたって再投資し続ければ、その合計はおどろくべき額になります。
ここで、AとBという二人の65歳の男性の例をあげてみます。
Aが20歳のとき、リタイア後に備えて、毎年4000ドルを株に投資しました。20年後、合計8万ドルを投資資金として投入したところで、新たに資金を投じるのをやめました。
しかし、口座に貯まったリターンは、新しい資金として再投資を続けたのです。その資金が平均10%のリターンを生みます。
結果、Aの資産は約250万ドルほどになりました。
一方、Bはリタイア後の資金を40歳から貯め始めました。ちょうどAが新たに投資をするのをやめたときです。
Bは4000ドルを25年間貯め続け、投資合計額は10万ドルになりました。
結果、Bの資産は40万ドルに届かなかったそうです。
実際に投資した額は、Aのほうが少ないにもかかわらず、Aのほうが200万ドルも多く貯めたのです。
つまり、若くから始めると大きく増え、複利の有利さをフルに活かせるのです。
会社や国の制度を有効に活用しよう
アメリカには、401kプランといって、アメリカの内国歳入法の第401条k項に課税上の得点プランが定められている確定拠出年金があります。
そして、403bという大学、病院、学校、非営利団体などの職員向け退職貯蓄プランもあるそうです。
ですが、多くの人たちがこのプランに参加していないことを著者は残念に思うそうです。
これは積極的に活用を考えるべきだと著者は言います。
日本で言えば、「つみたてNISA」と「iDeCo」が近いと思います。
詳しくは、次の記事をご覧ください。
たしかにメリットもあればデメリットもありますが、このような制度を活用することで蓄財が進むのは目に見えています。
まだ利用していないというならぜひ検討してみましょう。
シンプルな投資法
インデックス・ファンド
インデックス・ファンドとは市場全体の動きを表す特定の株価指数(インデックス)に連動した成果を目指す投資信託です。
つまり、市場を構成するすべての株を買って持つ単純な投資方法ということです。


これに対し、プロのファンドマネージャーが投資商品を選定・運用し、収益が指数(ベンチマーク)を上回ったり市場平均以下にリスクを抑制したりする運用を行う投資信託のことをアクティブ・ファンドと言います。
どちらにもメリット・デメリットありますが、著者は断然「インデックス・ファンド」をすすめます。
なぜなら、インデックス・ファンドは、
- アクティブ・ファンドのようにいくつもの運用ファンドを自分で評価して選ぶ必要がない
- コストが低く、税金も安い
- 今後の予想が立てやすい
たしかにインデックス・ファンドは市場に連動するためアクティブ・ファンドのような一時的な高いリターンは望めませんが、長期で見た場合はアクティブ・ファンドの3分の2かそれ以上に勝っているそうです。


(出典:投資信託ネット「インデックスファンドとアクティブファンドの違いとは?」から)
ですので、リスクをなるべく抑えるには、長期的にインデックス・ファンドに投資し続けることが、実は「勝者のゲーム」なのです。
一に分散、二に分散、三に分散
先ほど、インデックス・投資でリスク回避の話が出ましたが、リスク回避は株や債券、市場と分散させましょう。
株式投資をするときは、1つや2つの企業ではなく、何百にも及ぶさまざまな銘柄に投資をするのです。
まあ、このような投資は、大富豪でなくてはできない芸当ですが、インデックス・ファンドであれば誰でも買うことができます。
そしてインデックス・ファンドの中にもバイオテクノロジーや中国株に特化しているものよりも、広範な業種を網羅したさまざまな会社の株を保有する投資信託を選びましょう。
広く分散された株式銘柄を保有することで、投資家はリスクを軽減できます。
なぜなら、何か経済的なできごとが起こっても、すべての会社に同じような影響を与えないからです。
アメリカ国債も安全な債券として考えられます。
優良な債券投資信託は、株式市場が大きな上昇や下落に見舞われたとき、それを相殺する動きをしてリスクを緩和するそうです。
たとえば、2008年の深刻な世界的不況が予想されたことで米国や多くの国の株価が急落しましたが、金融当局が景気刺激策として政策金利を引き下げたのでアメリカ国債の価格は上昇しましたし、金利が下がれば債券価格は上がりますので、考慮すべきです。
インフレが進行するときは、不動産や森林、石油といった、いわゆるコモディティへの投資は、製造業の株式よりも通貨の価値が相対的に減少するリスクを回避する効果があります。
実はこの『投資の大原則』の第Ⅴ章で紹介されているような広範囲のインデックス・ファンドに投資をすることで、直接に不動産やコモディティ投資から利益を得るのと同じになります。
こうした幅広く分散されたファンドに投資しておけば、かなりリスクが抑えられることになります。
リバランスでリスクを軽減する
リバランスとは、プロのファンド・マネジャーが使うテクニックで、資産がしっかり分散されているかどうかを確認する作業です。
なぜリバランスが大事かは、時間が経つにつれて、それぞれの資産価格は上がったり下がったりします。そのことで株式を資産全体の5割と決めていても、株価が上昇した結果、6割になるかもしれません。
リバランスというのは、自分の資産の配分比率を定期的にチェックすることなのです。
望ましいと思う資産配分が外れているなら、元に戻すことが重要なのです。
リバランスをすることで、投資資産のリスクを軽減し、多くの場合は、リターンは増加します。
たとえば、資産配分を株式を60%、債券40%と決めたとします。
資産を増やしていくときに新規の投資に資金の60%を株式、40%を債券としていくのです。
でも、もし株が短期間で2倍の値上がりとなり、債券の値段は変わらないとしたら、どうするかです。この時点で資産の4分の3は株が占め、4分の1が債券となりました。
これでは自分で決めた資産配分に対応するリスク水準から外れてしまいます。これとは反対に2008年のような株の急落で債券価格が上がった場合というのもあるでしょう。
その時に取る行動は、資産比率を本来のものに戻すことです。それは自分が最善と思う資産配分比率からかけ離れたものをそのままにしないことを指します。
株式の配分が高くなりすぎたなら、新規資金や配当金を株式に回さずに債券に投資すること、債券投資の比率が過大になった場合は、その資金を株へと移動させます。
もし株の配分が望ましい状態から大きく外れているときは、所有株式の一部を売却して債券投資に振り向けましょう。
ここで大事なのが、配分された資産の一つが暴落しても、決してあわてたり売ったりしてはいけません。むしろ長期保有すると強く決意し、買い増す精神力を持つべきです。
株価が下がれば下がるほど買うチャンスと思うことも大事です。相場が急落すると、「もっと損をするかもしれない」という不安に駆られると思います。
しかし、下げ相場に辛抱強く資産配分を見直し続ければ、長い目で見て、十分なリターンを得ることができるのです。


暴落しても慌てない
ドル・コスト平均法なら、市場変動はチャンス
長期積立をするうえで大事なのが、価格が変動する投資商品に対して「常に一定金額を、定期的」に買い続けていくことです。
これをドル・コスト平均法と言います。
なぜなら株式市場の絶え間ない上昇・下落は、しばしばメリットになるからです。
まず購入金額を一定に保つことで、このような効果があります。
- 価格が低いときには、購入量(口数)が増加
- 価格が高いときには、購入量(口数)は減少
価格に関係なく一定の量(口数)を購入していくことで毎回違った金額での購入となりますが、ドル・コスト平均法による購入方法は全体の平均購入単価を平均化させる効果があり、これが長期的な資産形成を行っていくうえで有効な方法の一つになるのです。
この図を見てください。
ドル・コスト平均法で、ある投資商品を毎月2万円ずつ10回購入した様子を示しています。


(出典:アクサ生命人生100年の歩き方「ドルコスト平均法とは? 毎月定額で積立てる方法の長所と注意点を解説」より)
これを見ると、価格が下がっても投資元本200,000円に対し、評価額218,400円と18,400円のプラスになっています。つまり、ドル・コスト平均法によって長期的に価格変動リスクを提言することに成功しているといえるのです。
21世紀の初め、インターネットバブルがはじけ、市場が半分になったことがありました。2000年代の終わりにかけてリーマンショックのため相場は50%落ち込み、株式投資に失望した人が多くいました。
ですが、こういった最悪条件の中でもドル・コスト平均法で買い進め10年経ったとき、そこそこのリターンを生み、資産は増えたということです。
たしかに短期的に市場は今後も大きく上下に動きます。
ですが、長期投資家にとって相場の動きは気にしなくてもいいのです。相場の変動は、むしろプラスになります。
退職後に備えて蓄えようとする長期投資家にとっての最大リスクは、短期変動をいかに乗り切るかではなく、積み立て投資のルールを相場の激しい動きに振り回されずに維持できるかなのです。
長期投資で成功するためのカギ
最後にまとめます。
今後も世界情勢や新型コロナウィルス感染症などの伝染病、経済動向の移り変わりといったできごとで、市場は上下を繰り返します。
今がホットな銘柄やベストな投資信託を追いかけ、下がればあわてて投げる投資家、損失を免れません。
長期的に成功するために自分でできることは何でもやりましょう。
ポイントして、あげられるのが「コストを抑える」「相場に気を取られない」「自分で立てた投資方針をしっかり守る」ということです。
投資で長期的に成功するカギは以下の4点です。
- 分散投資
- リバランス(定期的にチェックし、一度決めた分散比率へ戻すこと)
- ドル・コスト平均法(定期定額長期積立投資)
- インデックス・ファンド
これは実に忍耐力が要りますが、この忍耐力と継続こそが、誰でも資産を形成するうえでリスクが最も少ない方法であるといえます。
『投資の大原則』の感想・まとめ
誰にでもできる至高の成功法則
世界最大の資産運用会社「バンガード」の最高投資責任者ガス・ソーター氏はこう言います。
この『投資の大原則』は、これまで投資をしたことのない人、経験のある人にも必読の書である。
高校でこの本を読むことを義務化するといい。
複利の効果はとくに若者に役立つものだからだ。
投資経験豊かな人々にも、この本は役に立つ。
多くの思い違いを指摘し、無意識に犯す間違った行動を明らかにしてくれるからだ。
自分の思い違いや間違った行動がわかれば、自ずと投資はうまくいく。
もっといい方法があるはずだという誘惑に駆られないように、この本を何年かに1度は読み直してほしい。
わたしが言いたいことは、まさにガス・ソーサー氏の言ったこの言葉そのものです。
もともと日本では、投資を含めた「お金の勉強」が海外に比べて、すごく遅れています。
自分の人生を豊かにするための蓄財を、「自分でなんとかする」ではなく、他の力に頼り過ぎではないかと思う時があります。
責任自分論で築いた蓄財は、かならず満足いく人生の一助になるはずです。
そういった意味で、まずは自分にできることからを気づかせてくれる本書をぜひ多くの人に読んでいただきたいと感じました。
本書の他に、バートン・マルキール氏の『ウォール街のランダムウォーカー』、チャールズ・エリス氏の『敗者のゲーム』もぜひ読んでみてください。
『投資の大原則』の概要
本書の目次
『投資の大原則』
人生を豊かにするためのヒント
『投資の大原則』第2版刊行にあたって
序文
はじめに
すべてはお金を貯めることから
Ⅰ まず貯蓄を始めよう
Ⅱ シンプルな投資法
Ⅲ 一に分散、二に分散、三に分散
Ⅳ 大きな失敗を避けよう
Ⅴ 私たちが勧めるKISSポートフォリオ
Ⅵ 暴落期でもあてはまる大原則
まとめ 超シンプルな投資法
推薦図書
謝辞
訳者あとがき 第2版に寄せて
著者の紹介
バートン・マルキール
プリンストン大学経済学部教授、プルデンシャル・ファイナンシャル、バンガード・グループ等の社外取締役プリンストン大学経済学博士。
同大学経済学部長、大統領経済諮問委員会委員、アメリカン証券取引所理事長などを歴任したほか、米有力企業の社外重役を務める。
主な著書
『ウォール街のランダム・ウォーカー』日経BP (2019/7/19)
チャールズ・エリス
ホワイトヘッド財団理事長。
1937年生まれ。
資産運用分野における世界的重鎮。
エール大学卒業。ハーバード・ビジネススクールで最優秀MBA、ニューヨーク大学でPhD取得。
1972年にグリニッジ・アソシエーツを設立。
以後、30年にわたり代表パートナーとして、金融会社、投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査、コンサルティングで活躍。
2001年6月、代表パートナーを退任。この間、全米公認証券アナリスト協会会長などを歴任。
主な著書
『キャピタル 驚異の資産運用会社』日経BP (2015/8/3)
『チャールズ・エリスのインデックス投資入門』日経BP (2017/12/13)
『敗者のゲーム』日経BP (2022/1/6)
『ゴールドマン・サックス 上: 王国の光と影』日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2010/10/1)
『チャールズ・エリスが選ぶ「投資の名言」』日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2009/8/1)




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