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『すばらしい人体』から学ぶ「人の体」の神秘さと教養としての現代医療

コウカワシン

こんにちはコウカワシンです。

今回は山本健人(やまもと・たけひと)さんの著書『すばらしい人体』から学ばせていただきます。

著者の山本健人さんは医師。そして、Twitterで情報発信し、その総フォロワー数は8万人超え、各地で一般向け講演なども精力的に行なわれています。

人体の構造・機能の美しさに心を奪われ、その一方で、このすばらしいしくみを損なわせる、「病気」という存在の憎らしさも実感されました。

そこで、病気の成り立ちを理解し、病気によって失われた能力を取り戻すのも、医学の役割であるとされています。

本書は、「人体の素晴らしさ」、「なぜ病気になるのか?」、「医学の歴史」、「医学の知識」などを著者が、一般の人にもわかりやすく面白く説明してくれる一冊です。

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目次

『素晴らしい人体』は誰におすすめか?

本書はこのような人におすすめです。

『すばらしい人体』がおすすめな人

  • 人体に興味がある人
  • 病気になるしくみが知りたい人
  • 医療についてもっと知りたい人

『すばらしい人体』って、どんな本?

本書の目次

『すばらしい人体』

「あなたの体をめぐる知的冒険」

はじめに
第1章 人体はよくできている
第2章 人はなぜ病気になるのか?
第3章 大発見の医学史
第4章 あなたの知らない健康の常識
第5章 教養としての現代医療
おわりに

著者の紹介

山本健人(やまもと・たけひと)

2010年京都大学医学部卒業。

医師・医学博士。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。Yahoo!ニュース個人オーサー。

「医師と患者の垣根をなくしたい」をモットーに、「外科医けいゆう」のペンネームで2017年に医療情報サイト「外科医の視点」を開設し、これまで1000万を超えるページビューを記録。

時事メディカル、看護roo!などのウェブメディアで連載。

Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSでも情報発信し、その総フォロワー数は8万人超。

各地で一般向け講演なども精力的に行っている。

ペンネームの「けいゆう」は筆者の二人の子の名前から取ったもの。

主な著書

医者が教える 正しい病院のかかり方』幻冬舎 (2019/11/27) 
がんと癌は違います 知っているようで知らない医学の言葉55』幻冬舎 (2021/3/24) 
医者と病院をうまく使い倒す34の心得』KADOKAWA (2020/6/18) 
もったいない患者対応』じほう (2020/5/7) 
レジデントのための専門科コンサルテーション』医学書院 (2021/10/11) 
患者の心得 ―高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと』時事通信社 (2020/10/28) 
もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』シービーアール (2019/9/14) 

本書の内容

『すばらしい人体』はズバリ!「人体に対して理解を深め、自分の体に対して関心を持とう」です。

amazonの書籍紹介より

人体の構造は、非常によくできている。汚い例になってしまうが、私たちが「おなら」が できるのは、肛門に降りてきた物質が固体か液体か気体かを瞬時に見分けて、「気体の場合のみ気体だけを排出する」というすごい芸当ができるからである。

著者は、学生時代に経験した解剖学実習で、大変驚いたことがある。それは、「人体がいかに重いか」という事実だ。脚は片方だけでも10kgほどあり、持ち上げるのに意外なほど苦労する。一見軽そうな腕でも、重さは4、5kgである。想像以上にずっしり重い。私たちは、身の回りにあるものの重さを、実際に手にしなくともある程度正確に推測できる。だが不思議なことに、自分の体の「部品」だけは、日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらずその重さを全く感じないのだ。一体なぜなのだろうか? その答えを求めると、美しく精巧な人体の仕組みが見えてくる。

このような人体のしくみを探求する学問、それが医学である。医学は自然科学の一分野であり、物理学、化学、地学、数学、生物学・・・と並び称される学問として、人体の構造や機能、疾病について研究を積み重ねている。医学や人体に関する知識は、身近であるにもかかわらずあまり学ぶ機会がない。学校でも、 ごく一部が理科の授業で扱われる程度で、多くの人が「医学や人体の最も面白い部分」を学ぶことがない。

本書は、外科医けいゆうとして、ブログ累計 1000 万 PV超、twitter(外科医けいゆう)アカウント8万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介していく。健康情報として医学を取り上げるのではなく、サイエンス書、教養書として、人体の面白さ、医学の奥深さを伝え、読者の知的好奇心を満たす一冊!

コウカワシン

外科医けいゆう先生は、わたしもTwitterでフォローしていますが、常に健康に役立つ情報を発信されています。

そんなけんゆう先生が、本書で記したのは、読み物としての「人体および健康・医療」についてです。

ですので、根拠ある情報の信頼性は出典として掲載されていますし、専門外の知識についても各専門医に監修を依頼しているという念の入れようです。

医学の知識がない人でも興味を持ち、健康や今後の医療に関心が持てる一冊です。

『すばらしい人体』の要点は?

本書は、目次からもわかるように、「人体の構造」以外に「病気」のことや「医学史」、「健康の常識」、「現代医療」についてももうらしているのですが、この記事では人体の構造の素晴らしさ・・・面白さ、そして不思議さだけを紹介しようと思います。

コウカワシン

すみません。わたしの独断と偏見でそうさせていただきます。

人体はよくできている

人の体って、とても素晴らしい機能を持っています。同じものを機械で作ろうとしてもなかなか難しいとされています。

たとえば、ランニングとかしている最中でも道路標識を読むことができたり、前から歩いてくる人をよけることができるし、頭が上下に揺れていても、視界が揺れて酔うということはありません。

これと同じことをスマートフォンで、やってみたらどうでしょうか。スマートフォンのカメラを目の前に構え、走りながら動画を撮影してみたとしたら、たぶん収められる映像は大きく揺れ動き、視聴に耐えるものではないはずです。

このわたしたちの目とカメらが収める映像の違いは大きく違い、わたしたちの体には「視界が揺れないための精巧なシステム」が備わっているということなのです。

コウカワシン

わたしはバードウォッチの趣味があり、オートフォーカスの双眼鏡を使用したりするのですが、性能が向上したといってもピントが合うのにタイムラグがあり、やはり機械と人の目というのはかなり性能が違うと感じますね。

人の体って、精巧にできてるしすごい性能を持っていると実感します。

便はなぜ茶色いのか

まず、食べものはそれぞれに色を持っているのに食べてから便になって出るときには茶色になっているのを見て不思議になったことはありませんか?

あれは食べものが、胃から十二指腸へと送られる過程で胆のうから出された胆汁(たんじゅう)によって茶色になっているのです。(胆汁の作用についてはここでは省略します)

ですので、健康な体から出される便は茶色ということになります。

もし、何かの理由で胆汁が流れ出なくなると食べものが胆汁と混ざらないため、白っぽい便が出ますし、他にも病気によっては便の色が変化することがあります。

たとえば、便に血液が混じると、赤くなったり黒くなったりするのです。

大腸や肛門などから出血すると、血液がそのまま便に付着するので真っ赤になりますし、胃とか十二指腸のような上流部分からの出血の場合は、便の真っ黒になるのです。

また、飲んだ薬の影響で便の色が変化することもあり、バリウムや、貧血の治療で鉄剤を飲んでいる人の便も色が違うのです。

とにかく便には、体の不調から飲んだ薬まで、さまざまな情報が詰まっているということなのです。ですので、自分の便について関心を持つということは自分の健康状態をベストに保つきっかけになるということです。

おならは何でできているのか?

まず、おならというのは、食事中にたべものと一緒に飲み込んだ「空気」なのです。胃の中に入った空気が逆流して口から出たものが一般に「げっぷ」と呼ばれるものです。

一方、食べものと一緒に小腸、大腸に送られた空気が大腸内の臭いガス一緒に肛門から排出される・・・これがおならということです。

おならの回数が多くて悩んでいる人も多いと思います。

しかし、空気を飲み込まずに何かを食べるのは不可能です。どれほどゆっくり慎重に食べても、空気は必ず飲み込むものですが、急いで慌てて食べものを飲み込むと、当然空気も飲み込みやすくなります。

ですので、食べものをよく噛んで、ゆっくり食べることで余分な空気を飲み込まないことにつながります。

とてつもない肛門の機能

人間の体にとって、大切ではない部分はありませんが、とくに大事にしたいのが「肛門」です。

肛門は、精密機械のようによくできていて「降りてきたものは固体か液体か気体か」を瞬時に見分け、「気体のときのみ排出する」という高度な選別をします。

しかも、固体と気体が同時に降りてきたときには、「固体を直腸内に残したまま気体のみを出す」という芸当もできるのです。こうしたシステムを人工的につくるのは不可能です。

考えてもみたら、おならと便を識別できないと、生活はとても不便になります。なぜなら・・・おならひとつするのに、毎度トイレに行き便座に座らないとできないからです。

そのうえ、直腸に溜まった便を「無意識」にせき止めておき好きなときに排出できるというのも優れた機能です。

これらの高機能な筋肉と、極めて繊細なセンサーが、わたしたちの日常生活を支えているのです。ふだんであれば肛門のありがたさを感じづらいですが、実は替えのきかない優れた臓器であることは認識しないといけません。

ですので、肛門の外傷は必ず防ぐべきですし、他人に対してもしてはいけません。肛門や直腸は非常にデリケートなので乱暴にあつかうと裂けたり出血したりし、あげくに取り返しがつかない事態になりますのでご注意ください。

人はなぜ病気になるのか?

「がんが死因」が増えた意外な理由

2019年のデータでは、がん(悪性新生物)、心疾患、老衰、脳血管疾患(脳卒中)、肺炎の上位五疾患が死因の7割近くを占め、それ以下には不慮の事故や腎不全、アルツハイマー病など頻度の低い死因が1~数パーセントを占めているそうです。

1980年代から死因の1位を独走し、今もなお増えているが、「がん」です。がんは今や死因全体の四分の一以上を占める疾患として君臨しているのです。

がんの死亡率が伸び続けている最大の理由は高齢化。つまり、長生きするからがんになるリスクが高まったのです。実際に年齢別のがん死亡率では、50歳代からがんの死亡率が徐々に増え始め、70歳代以降はさらに急増するのです。

がんというのは、遺伝子に何らかの異常が起き、正常な細胞ががん細胞に変わり、これが無秩序に増殖したものです。細胞に起きるこうしたトラブルは、長年「使い古した」体で起こりやすいのです。

こう言ったら不謹慎ですが、医療の進歩により長生きするようになったおかげで、相対的にがんで死亡する割合が増えたということなのです。

それでも、がんの治療は近年おどろくほど進歩しました。新たな抗がん剤が次々に生まれ、手術の質が向上し、放射線治療や免疫療法など、使える武器がますます増えてきたからです。

がん以外の死因にあげられている、心疾患と脳血管疾患(脳卒中)では、原因に生活習慣病が背景にあります。

生活習慣病とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い病気)など、生活習慣と関連して発症する病気のことです。

かつては、歳をとればやむなく現れる防ぎようのない変化に見られていましたが、食習慣や運動習慣の改善、肥満の解消、禁煙などで病気を予防することができます。

たしかに、がんを含め死因の上位にある疾患は生活習慣病が原因となることが多いのですが、生活習慣病の原因が生活習慣だけにあるわけではなく、遺伝的な要因や環境要因も大きく関わっているといわれています。

「病気になったのは自己責任」といった偏見はよくあるそうですが、病気の原因はそれほどシンプルではないと著者は言われていることを加えておきます。

かつては日本の国民病だった「脚気」(かっけ)の話

脚気(かっけ)は、かつて日本で「国民病」といわれるくらいに流行したことがあります。

今では脚気といわれてもピンとこないと思いますが、脚気にかかると神経の障害により手足がまひし、しびれなどを引き起こし、重度になると、心臓に障害を起こして死亡するという病気だったのです。

脚気は、江戸時代に、玄米に代わって白米が徐々に普及するにつれ、広がり始めたそうです。

当時は副食(おかず)も乏しく、精米によって米の胚芽に含まれるビタミンB1が取り除かれたことにより栄養不足となって人体に現れた奇病とされ、白米がいち早く普及した江戸に多かったことから「江戸わずらい」などとも呼ばれていたそうです。

明治時代でも脚気は猛威をふるい、年間1万~3万人が脚気で亡くなったそうです。特に軍隊では脚気により兵士が次々と亡くなり、国家を揺るがす大問題となりました。

海軍軍医の高木兼寛(たかぎかねひろ)は、脚気の原因が食べものにあると見ぬき、兵食に麦飯を取り入れ、海軍の脚気を激減させました。高木は、イギリス留学の経験があり、イギリス海軍に脚気がないことに注目し洋食が解決の鍵であることに気づいたからでした。

一方、陸軍軍医の石黒忠悳(いしぐろただのり)や森林太郎(もりりんたろう)は、脚気は「脚気菌」による細菌感染症であるとする説にこだわっていました。

当時ドイツでは、細菌学が隆盛し世界をリードしていたのですが、ドイツに留学し最先端の医学を学んだ森にとって、高木の経験則に基づく治療は非科学的に映ったのかもしれず、麦飯が有効とする説に対抗するように細菌説に固執しました。

当時の陸軍の兵食は、一日に白米6合で副食は乏しく、皮肉にも脚気のリスクが極めて高い食生活だったそうです。結果、日清・日露戦争では、合わせて3万人以上の陸軍兵士が脚気で死亡した一方、海軍兵士は死亡数が3人であったということです。

1911年に科学者・鈴木梅太郎(すずきうめたろう)が、脚気に効く物質を米ぬかから取り出すことに世界で初めて成功し、これをオリザニンと名付けました。ですが日本語論文での発表だったため世界では広まらなかったそうです。

その翌年にポーランドの科学者フンクによって、「ビタミン」が発見され、ようやく脚気はビタミン欠乏症の一つであると認知されたということです。

さて、陸軍と海軍の脚気による死者の数の違いも、たしかに兵士の数が圧倒的に陸軍の方が多いということを差し引いてもこの差は歴然です。

当時の情報の少なさだけでは、ビタミン欠乏症だからという根拠が乏しく、森軍医の細菌感染症説を信じて疑わないという向きがあったと思います。

しかし、実地で患者に接し治療を行うという、柔軟さがあれば脚気の研究も進み、死者の数も激減できたのではないかと感じますね。

このように偏った思想によるプライドは進歩を阻害するという典型的な例であります。今後の良い教訓にしたいものですね。

病気であることが「有利」になるとき

鎌状赤血球症(かまじょうせっけっきゅうしょう)という遺伝病の話です。

ある遺伝子変異によって、円盤状の赤血球が三日月のような形に変化してしまう病気だそうです。

出典:Dr.医療株「バイオ・製薬会社関連の米国株(グローバル・ブラッド社:GBT):鎌状赤血球症に対するボクセロトール」より

この病気のことをくわしく書くのはここでは省略しますが、三日月状の赤血球はこわれやすいため、特に重篤な貧血を起こしたり、毛細血管につまって梗塞を起こし、臓器にさまざまな問題を引き起こします。

不思議なことに、この遺伝子変異を持つ人たちは分布的に偏りがあり、日本人にはほとんど存在しませんが、アフリカには極めて多いそうです。

黒色人種のアフリカ人の約30%がこの遺伝子変異を持っていて、生存に不利ともいえる問題ある遺伝子が、なぜこの地域に多いかですが、その理由はマラリアの流行にあるとされています。

マラリアとは、マラリア原虫が引き起こす感染症であり、ハマダラカが媒介して感染します。下の写真がハマダラカでありマラリア原虫を運んでくるのです。

出典:Malaria no more JAPAN 「年間42万人以上が命を落とす感染症、マラリアとは」より

マラリアは、人間に感染すると赤血球に寄生して成長し、高熱や下痢などを引き起こします。 脳や腎臓を侵し、適切な治療を行わないと死亡する病気です。

ところが、鎌状赤血球症の異常な赤血球はこわれやすいため、マラリア原虫が侵入すると赤血球が破壊され、原虫が増殖できなくなります。

結果、鎌状赤血球症は、マラリアにかかりにくいいう点において、アフリカなどのマラリア流行地域では「健常であること」より有利なのです。

人間の体とは不思議なもので、このようにマラリアに対抗するために生存に不利とされる遺伝子が受け継がれていくというサイクルが成り立ち保存される、まさに環境によって遺伝子が自然選択されたという例ということですね。

健康の常識をアップデートしよう

最強の猛毒ボツリヌス

「ハチミツを含む食品は1歳未満の乳児に与えてはいけない」

このことはご存知の方もたくさんいるし、ハチミツを含む食品のパッケージには必ず表記されています。なぜなら、ボツリヌス菌による食中毒にかかるリスクが高いからです。

ボツリヌス菌というのは、土壌や河川など、自然界に広く存在し、ボツリヌス菌がつくり出すボツリヌス毒素は、極めて危険な神経毒だそうです。

ボツリヌス菌は、大人の腸内に入っても他の腸内細菌との生存競争に負け、大きな問題を起こさないのですが、腸内環境が未熟な乳児では、腸内にボツリヌス菌が繁殖して毒素を産生し、「乳児ボツリヌス症」という重い症状を起こします。

神経のマヒにより全身の筋力が低下し、哺乳力が落ち、首が座らなくなる・・・もっと重い場合は呼吸が止まって致命的になることもある恐ろしい食中毒なのです。

1歳以上ならハチミツは問題なく摂取できるのですが、たとえ大人であってもボツリヌス毒素を多く含む食品を食べると食中毒にかかるそうです。

日本で有名なのが1984年6月に起きた辛子蓮根(からしれんこん)による大規模な食中毒です。

熊本の郷土料理である辛子蓮根の真空パック詰食品により、14都道府県にまたがって36人が発症、11人が死亡するという大事件になりました。

患者は神経毒に侵され、手足がマヒし、ものが二重に見える、ろれつがまわらないなどの症状が現れ、重いケースでは呼吸ができなくなり亡くなったとされています。

他にも、里芋の缶詰、グリーンオリーブの瓶詰、ハヤシライスの具の真空パックなど、さまざまな食品が原因となった事例が報告されたとあります。

ん?と思われた人も多いはず、缶詰や瓶詰、真空パックなどでは、外気に触れずに保存されるため細菌が増えず「安全そうな食品」と思いますよね。

でも、これはわたしたち人間が陥りがちな「思い込み」によるものだと著者は言います。

実はボツリヌス菌というのは「嫌気性菌」(けんきせいきん)なのだそうです。嫌気性菌とは、簡単に言うと「生きるために酸素を必要としない菌」のことです。

さらに嫌気性菌は、酸素存在下でも生育できる通性嫌気性菌と、大気レベルの濃度の酸素に暴露することによって死滅してしまう偏性嫌気性菌に分けられます。

ボツリヌス菌は偏性嫌気性菌です。つまり、真空パックのように酸素が存在しない場所は、むしろ絶好の環境なのです。パックの中でボツリヌス菌が繁殖し、毒素がつくられてしまったということです。

また、ボツリヌス菌には芽胞(がほう)を形成できるという特徴があります。芽胞というのは、いわば殻の中にこもった冬眠状態で、厳しい環境でも耐久性が極めて高いとされています。

アルコールなどの消毒液でも死滅せず、100度で、長時間沸騰させても生き延びるそうです。ボツリヌス菌の芽胞を死滅させるには、120度で、4分以上の加熱が必要です。

こうした加熱処理がされたレトルトパウチ食品、加熱処理されていない真空パック食品は、きちんと表示を見ないと紛らわしいことがあります。

加熱処理がされたレトルトパウチ食品は長期保存が可能ですが、加熱処理されていない真空パック食品は、冷蔵保存が必要で、一般に消費期限は長くないとされています。

なお、芽胞と違って、ボツリヌス毒素そのものは熱に弱く、80度、30分の加熱で機能を失うそうです。

つまり、食品は消費期限、消費方法を指定された通り、きちんと守ることが思わぬ事故を防ぎますので、しっかり確認するようにしましょう。

生肉についての誤解

「新鮮な生肉は食べても❝あたらない❞」という誤解がなかなかなくならないと著者はいいます。

たしかに生で食べるお肉料理っていろいろとありますよね。もともと魚を生で食べる習慣がある日本人には、その影響かユッケとかレバ刺しなどの食肉の生食も受け入れやすいようです。

かつては、生肉を食べてはいけないと頻繁に言われたものでしたが、食品衛生や安全管理の質の向上が吹聴されるにつれて、そんな言葉は聞かれなくなってしまったようです。

B級グルメの流行なども手伝って、さまざまな飲食店が生肉メニューを提供するようになり、若者を中心に生肉に対する意識は変化し、ここ数年生肉ブームが続いている状態です。

しかし、動物の肉は、十分に加熱しない限り必ず❝あたる❞リスクがあります。食中毒のリスクは、「新鮮かどうか」とは関係がないのです。

なぜなら、動物たちもわたしたち人間と同じで、さまざまな微生物と共生しているからです。

牛や豚、鶏などの家畜の腸内にもたくさんの細菌が生息していて、中には人間にとって有害な細菌も存在し、食肉加工場で加工するとき、それが食肉の表面に付着するのです。

食中毒を起こす頻度の高い細菌は、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、カンピロバクター、リステリア菌などです。特にカンピロバクターによる食中毒は年間2000人程度に起こっているということです。

カンピロバクターは、特に生の鶏肉にリスクが高いとのことです。とにかく生肉や生焼けの肉を食べるのを避け、肉を切った包丁やまな板はしっかり除菌洗浄しなければいけません。

生肉ではありませんが、生野菜にも腸管出血性大腸菌が付着している可能性があります。動物との接触や糞便による汚染などが原因と考えられています。

持ち帰ったらすぐに冷蔵保存し、食べる際にはしっかり洗うという手間をかける必要がありますね。

消毒液は傷の治りを悪くする

軽い傷なら、消毒液は必要ないそうです。水道水でしっかり洗い、砂や泥などの異物を丁寧に洗い流すだけで十分なのだそうです。

なぜなら、皮膚には細菌が常に存在し、共生しています。消毒した瞬間には細菌を死滅させられても、その後に細菌が傷に入り込むことまでは防げないからです。むしろ、定期的に傷をしっかり洗浄することのほうが大切ということです。

最近では、消毒液が傷の治りを悪くすることがわかり、よほどのケースを除いて傷は消毒しないのが当たり前になってきているそうです。

消毒液や抗菌薬を必要とする場合というのは、汚染のひどい傷です。たとえば、犬や猫などの動物にかまれた傷は、ふつうの傷に比べると感染リスクが非常に高いです。

その場合は、必ず医師の診断に従って治療を行うべきといえます。

『すばらしい人体』の感想・まとめ

自分の体を守るために常に常識を疑い、情報のアップデートをしよう

この『すばらしい人体』では、常に変化する今まで信じられてきた常識を打ち破り、自分自らがその新しい情報を掴みに行くべきだという姿勢を学ぶことができました。

医学を含め、科学の世界においては、普遍的に「正しい」真実はありません。学問の進歩とともにその「正しさ」たえず変化するものであり、歴史的事実の解釈も、人によって異なるのは当然といえます。

その学ぶ姿勢こそが、自分自身を守る盾にもなり、武器にもなるとわたしは思います。

そういった意味で、本書はいろいろな参考文献からさまざまなことを教えてくれました。いやまだまだ知り得ないことも多いのですが、興味を持つ入口くらいには立てた気がします。

そういった意味で『すばらしい人体』は、すごくおすすめです。ぜひ手に取って読んでみてください。

コウカワシン

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

四国在住。
ミニマリスト。趣味は映画観賞と音楽鑑賞、読書、野球観戦。
映画は特に好き嫌いなくほとんどのジャンルーを観ます。音楽はジャズとクラシックが大好きです。読書は歴史書が好きでよく読みます。

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