
こんにちはコウカワシンです。
今回は加藤俊徳(かとう・としのり)さんの著書『脳の強化書』から学ばせていただきます。
『脳の強化書』はどんな本?


『脳の強化書』は、ズバリ!「効果的なトレーニングで「理想の自分」をつくる」がコンセプトです。
本書はこのような本
本書の著者・加藤俊徳(かとう・としのり)さんは、1万人以上の脳画像を分析してきた「脳」のスペシャリストです。
脳を積極的につくり変え「前向き」な思考を育てることで強い脳を育てようと提唱しているのです。
しかし、大切なのはトレーニングにおいて自分流の工夫を加えることです。このことにつき本書は大きな力となってくれます。
本書は、現在(2022年9月22日)amazonの本読み放題サービス「キンドルアンリミテッド」の対象本です。
キンドルアンリミテッドは、ビジネス書からマンガまで幅広いジャンルの本が読み放題です。ぜひこの機会にご検討ください。
本書は聴く読書であるオトバンクの「audiobook.jp」で、聴くことができます。
スキマ時間の活用にぜひお役立てください。
本書は誰におすすめか?
本書はこのような人におすすめです。
『脳の強化書』がおすすめな人
- 勉強や仕事の効率を上げたい人
- 脳トレに興味のある人
- 「なりたい自分」がある人
『脳の強化書』 の要点は?


著者は、「筋肉を鍛えるのと同じように、脳をトレーニングすることはできるのだろうか」という疑問を14歳のころには持っていたそうです。
医学部に入学し卒業後にはアメリカに留学。MRI(磁気共鳴画像)という最先端技術を使い脳の研究に取り組まれました。そして、ある事実がわかったそうです。
それは、「チャンスを与えれば、脳はいつまでも成長し続ける」ということです。
実は、人の脳は未開発の部分がたくさん残っていて、そのエリアでは成長前の多数の脳細胞が情報や経験を吸収しようと待機しているそうです。
そして、その脳細胞たちに適切な刺激を適切なタイミングで与えると、脳はみるみる新しい姿に変わっていくというのです。
ですので、「なりたい自分」があるのなら、手に入れるために脳を積極的につくり変えていくことで、脳を自分流にデザインすることができる可能性があるのです。
本書は「なりたい自分」になるために66のトレーニング法を説いてくれています。



それでは本書の要点を、わたしの独断と偏見であげさせていただきます。
脳は死ぬまで成長する
著者は、「生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、まだ成長する前の真っ新な状態で、一生の中で最も脳細胞が多い」といいます。その後、脳細胞の数は年齢を重ねるにつれて減少していくのだそうです。
脳細胞の減少に反比例して、脳内では、アミノ酸などの物質が増えていきます。アミノ酸は「生命の源」といわれるように、体を形つくる上では欠かせない栄養成分です。
脳細胞は、数こそ減ってはいるものの、このように栄養が供給されている限り、その成長を止めることはないそうです。つまり「脳は死ぬまで成長し続ける」ということなのです。
脳が最も成長するのは20代から40代にかけて
脳には本来、「成長したい」というエネルギーが満ちあふれているそうです。その勢いが最も強くなるのが20代から40代にかけてです。
この時期に正しく鍛えれば、脳はどんどん強くしなやかになっていきます。
脳が20代から大きく成長する要因は、「社会人」というキーワードが強く影響しています。というのも20代前半までの多くの人は学校生活を送り、決まったカリキュラムをこなすことに重点が置かれ、それ以外の能力はあまり重視されません。
ところが社会人ともなると、直接社会にアクセスする機会が増えるため、学生時代には使われない脳を働かせる機会が劇的に増えます。つまり、脳が本格的に刺激を受け、成長を始めるのは社会人になってからなのです。
わたしたちも「将来こうなりたい」という姿を思い描き社会に出ますし、社会も業種や職種に応じてさまざまな役割をわたしたちに求めてきます。
脳の成長エネルギーが強くなるのが、まさにこの社会人の活躍時期ですから、本人の意識しだいで脳そのものも大きく成長する可能性を秘めているというわけです。
ですので、「今さら鍛えたって遅い」とか「自分の能力はどうせこんなもんだ」と決めつけてしまったりしては、脳の成長の妨げになります。
著者は、「脳の成人式は30歳」ということを主張し、バランスよく知識も人格も偏りなく成長させるべきだとされています。
つまりは、自分の脳を鍛え、つくり変えようとするなら、30歳からでも遅くないということでもあります。
「脳トレ」は自分の脳に合った方法で!
「この方法を実践すれば、あなたの脳は劇的に良くなりますよ」的な「一品主義」の脳トレやドリルがあります。しかし、ひとつのトレーニングだけでは脳全体が強化されるものではありません。
人には個性があるように、脳の個性もそれぞれありますから、「自分の脳に合った方法で鍛える」という視点が必要です。脳を鍛え、あるべき姿にデザインしていくためにこのことを自覚しておくべきですね。
8つの脳番地
脳番地とは?
脳番地とは、著者が提唱している概念です。
脳には1000億個を超える神経細胞が存在し、このうち同じような働きをする細胞同士が集まり、脳細胞集団を構成しています。そして、この細胞集団は、それぞれの働きによって「基地」を作っています。
この細胞集団と、その細胞集団がよりどころにしている基地のことを著者が「脳番地」と名づけました。
もっとわかりやすくいうと、場所によって働きが違う脳を1枚の「地図」に見立て、その働きごとに「住所(番地)」を割り振ったということです。
脳は脳番地ごとに、一生成長するそうです。そのためには「脳番地トレーニング」が最適だとされています。
8つの脳番地とは?
脳全体では、120の脳番地に分けられるそうです。その120の脳番地で似たような働きを持つ脳番地をまとめると8つの系統に分類できるとされています。


(出典:脳の学校「8つの脳番地とは」より)
脳番地は「つながる」ことで強くなる
ほかの細胞と同じく、脳の神経細胞も年々減っていき、年齢を重ねるごとに老化していきます。しかし、この神経細胞は複数の脳番地をネットワークでつなぎ、そのネットワークは年々成長していくことがわかったそうです。
つまり、たとえ老化により細胞が減っても、脳番地の連携が進めば、神経細胞同士のつながりが強くなり、脳の機能が強化されるのです。
脳番地は組み合わせて鍛えられる
脳番地の能力を上げるには、たくさんの経験を積んで使い込むことが必要です。とくによく使っている脳番地には、それまでに直面したことのない「新たな経験」が必要ということです。
そして、先ほどに述べた脳番地が別の脳番地とつながろうとする傾向あることから、この連携を利用すれば組み合わせて鍛えることができるのです。
たとえば、相手の話を聞きながら何かを考えているときは、聞く役割を担う聴覚系脳番地と考える役割を担う思考系脳番地がつながっている状態で、両方が鍛えられているということです。
その他にも、本とかの文章を目で追いつつ、考えを巡らせることで、視覚系脳番地と思考系脳番地がつながり同時に鍛えられているなど、組み合わせでどんどん脳全体が鍛えられ能力が上がっていくのです。
脳番地を刺激する3つのポイント
脳番地を鍛えれば脳全体の機能がアップします。つまりは脳番地をトレーニングで鍛えるということですが、守るべきポイントがあります。
脳番地を刺激する3つのポイント
- ポイント1 日常の習慣を見直す
- ポイント2 脳の「癖」を知る
- ポイント3 「したい思考」で発想する
ポイント1 日常の習慣を見直す
まず、日常生活を見直すことが大事です。これは、知らない間に身につけていた「習慣」を見直すことにもつながります。
たとえば、1日2000円の食費で過ごしていた人が、急に「1000円で過ごせ」といわれたら、なかなかに難しいと感じるのではないでしょうか。
なぜなら、日常的に食費2000円生活に慣れているから、予算1000円にするためには、何らかの工夫が必要だからです。
外食中心の生活なら、自炊中心にすることに切り替えるでしょうし、買い物も回数を減らす必要性に迫られる可能性があります。
大事なのは、このように生活習慣を変えて、脳番地に「揺さぶり」をかけることです。これまでの脳番地の使い方を生活習慣を変えて新しい経験をつくり出すことです。
これにより、眠っていた脳番地が刺激を受けたり、無関係だった脳番地同士がリンクしたりします。
つまり、生活習慣を変えるということは、それまでの自分をあらゆる角度から見直すことになるだけでなく、自分の脳を点検し、脳の使い方を一新することにもつながるということです。
この「見直し」の効果は、とくに仕事面において有効です。というのも1日のうちで、仕事に必要な脳番地を使うのが許されるのは8~10時間程度とされ、それ以上の時間を仕事に費やしていると結果、脳が疲弊して作業効率が低下するからです。
長時間同じ作業を続けている人は、改めて自分の生活習慣を見直し、仕事の一部を誰かに手伝ってもらったり、小休止を取って気分転換を図ったりすることが必要といえます。
脳を鍛えるには、特別なことをする必要はなく、日常生活をほんの少し見直すことで、使っていない脳番地を刺激することで与えることができるということです。
ポイント2 脳の「癖」を知る
誰でも独特の癖(くせ)がありますよね。
たとえば、ほおづえをついたりとか、貧乏ゆすりをしたりと、さまざまな癖を持っていたりします。同じように人間の脳も「癖」があるそうです。
それは、万人に共通する癖と、それぞれの人が持っている固有の癖です。
万人の共通する癖は、
- ほめられると喜ぶ
- 数字でくくると認識しやすい
- 睡眠によってパフォーマンスが高まる
などがあります。
それぞれの人が持っている固有の癖、たとえば、「マンガを読むのは好きだけど、本を読むのは嫌い」というのがあるとします。簡単に言えば、脳は「好き・嫌い」と嗜好に大きく影響されるということです。
なぜこういうことが起こるかというと、こういう人は活字から場面を想像するという思考回路が未発達なため、絵を見ながら文章を読まないと内容を理解しづらいからと思われます。
人間はどうしても「好きなこと」を選びたがるので、マンガが好きという人は、放っておけばマンガばかり読み、これがその人固有の「癖」となるのです。
ここで面白いことに、著者はこの「脳の癖」のことを高速道路にたとえています。
いつも、好きなこととしてやってる、つまり「通行」している思考の高速道路に乗ると、たやすくこなせるけど、「苦手なこと」や「やってないこと」は、道がない状態ということで、できるようになるには道路工事が必要なのです。
でも、「道路工事をする」つまり癖づけをしてしまえば、できるようになると著者は言います。ですので、脳を効率よく鍛えたいなら、自分の持っている「脳の癖」や特徴をよく知ることが必要ということです。
ポイント3 「したい思考」で発想する
人は誰でも「やらされている」という受け身の状態では、脳番地も受け身的になるそうです。これを「させられ思考」といいますが、させられ思考では脳番地が鍛えられないということです。
それと、なんとなく行動するのも「させられ思考」だと言います。たとえば、テレビをつけたときに、たまたま放送していた野球中継を見るのと、「野球を見たい」と思って野球中継を見るのとでは大きな違いが生まれると言います。
「野球を見たい」と思ってみる行為を「したい思考」と言って、望んでいる情報を自分のもとに積極的にたぐり寄せる考え方というわけです。
脳番地的に言えば、使っている脳番地は「したい思考」、使っていない脳番地は「させられ思考」になっていて、どちらが脳を鍛えるのに適しているかといえば「したい思考」に他なりません。
つまりは、自分の脳の習慣を見直し、それぞれの脳番地を「させられ思考」から「したい思考」に変化させることが脳の機能を高めることにつながるということです。
脳番地トレーニング
脳番地トレーニングは、「させられ思考」から「したい思考」に転換し、今まで受け身だった自分とは違う、なにごとにも前向きで積極的な自分に生まれ変えさせるためのマインド・チェンジの入り口です。


(出典:ゆほびかweb「脳は8つの「脳番地」というエリアに分かれる」より)
その8つある脳番地トレーニングから、
- 脳全体をひっぱる司令塔の「思考系脳番地」
- 死ぬまで成長を続ける「感情系脳番地」
- 成長を支える旺盛な好奇心とされる「理解系脳番地」
についてポイントを探ってみたいと思います。
思考系脳番地トレーニング
思考系脳番地は、左脳・右脳それぞれの前頭葉の部分に位置しています。その前頭葉ですが、大脳の中心よりやや前方にあり、思考や意欲、創造力など高度な機能をつかさどっているのです。
ですので、思考系脳番地は「こうなりたい」と強く望んだり、集中力を強くしたりする機能が集まってきているのが特徴なのです。
ちなみに思考脳番地が発達しやすい職業として、経営者や学者などの方がいます。とくに経営者は、重要な決断を迫られる分、この番地が発達している人が多いと言えます。
そして、思考系脳番地はその人の将来のビジョンに対応する特徴があります。自分の願望・目標を実現するために理解系・聴覚系・視覚系・記憶系の脳番地に向けて「必要な情報を取りに行きなさい」と明確な指示を出すのです。
つまり、思考系脳番地は、すべての脳番地の司令塔なのでこの部分を鍛えることは自己実現に向けて大きなパワーとなるということなのです。
では、この思考系脳番地トレーニングの方法を3つほど紹介します。
「1日の目標」を20文字以内でつくる
朝、出かける前に1日の目標を決め、それを20文字以内で表現する。たとえば、「失敗しても必ず成功するまでやりとげる」といった感じです。
ポイントとして1日のスケジュールを把握したうえで、どの予定を重視すべきか、その予定をどう進めるかについて思いを巡らせます。それを文章にすることでモチベーションが高まり、思考系脳番地を活性化させるのです。
「絶対ノー残業デー」をつくる
忙しい仕事をしている人は「残業しないなんて考えられない」と思われるでしょうけど、週に1日、絶対に残業をしない日を自身で強制的につくり、それを実行してみてください。
これはタイムマネジメントのトレーニングでもあり、仕事の終了時間を明確にし、仕事上の区切りを意図的につくり出すことは自分の能力を引き上げる意味においても大いに効果があるということです。
寝る前に必ず3つのことを記録する
毎日、忙しく過ごしていると「先週の水曜日は何をしていたの?」と聞かれても、すぐに思い出せない人は多いのではないでしょうか。
同じように、朝から夜まで仕事をする生活を何日も続けていると、曜日感覚がなくなります。このようなときは1日の総括ができていないというのが原因とされています。
ですので、寝る前にその日のできごとを振り返る時間をつくりましょう。1日を振り返って「楽しかったこと」「大変だったこと」「やり残したこと」などを3つあげ、記録すればいいのです。
たしかに「大変だったこと」として「いつもなら30分で終わる作業が1時間もかかってしまった」ことが思い浮かんだとします。その場合はなぜ1時間もかかってしまったかという原因を探るでしょう。
その原因が「作業時間が延びて疲れてしまい、仕事がすべて終わらなかった」という場合、翌日からは疲れが残らないように5分程度の休憩を挟んだり、いつも通り仕事を始めて、余裕ができたら前日の仕事をやろうといったことを考えることができます。
寝る前にこうした振り返りをすることにより、わずかな時間でも頭の中が整理され、思考系脳番地が活性化されるということです。
感情系脳番地トレーニング
脳の奥深くには、、感情を左右する扁桃体(へんとうたい)という部位があり、この扁桃体は、感情系脳番地の中心だとされています。
感情系脳番地の特徴は、一生涯にわたって育ち続け、しかも老化が遅いことです。
感情系脳番地が発達しやすい職業の代表格が俳優です。年齢を重ねるごとに演技に円熟味が増していくことを見ていれば、感情の表現が発達し続けていることが理解できます。
もっとも、ふだん、突然怒り出したり、すぐに落ち込んだりと感情の起伏が激しい人は、どんなに優秀でも、人から敬遠されてしまいます。
自分の感情をはっきり示すのは必要ですが、状況やタイミングを見誤ると人間関係に悪影響をあたえかねないので注意しなくてはいけません。
そのコントロールを担うのが前出の思考系脳番地で、感情系脳番地は思考系脳番地と相関関係にあります。
思考を盛り上がらせたければ、感情を高ぶらせ、冷静に考えたければ感情を抑えなければいけません。ところが感情が不安定だと、思考も不安定になり、いい考えが浮かばなくなります。
そこで、感情系脳番地を鍛えて穏やかな気持ちになるトレーニングを2つほど紹介します。
出かける前に「何があっても怒らない」と唱える
脳の前頭前野には、体に不調があったり、怒ったり興奮したりしたときにも大量に血液が流れ込むそうです。よくカーッときたときに「頭に血がのぼる」といいますが、あの状態です。
わたしも頭に血がのぼりやすくて、家族に迷惑をかけたことがあるのでよくわかります。でも原因は何であれ、ささいなことですぐに怒ってしまっては人格が疑われますから、そういう事態を避けなければいけません。
ですので、朝出かける前に、「何があっても怒らない。キレたらその場を離れる、人にはやさしく、やさしく・・・・・」と自分に言い聞かせることが最善策です。
このことで、前頭前野に「目的」を与えることになり、思考や感情のささいな変化に惑わされることなく、穏やかな状態で過ごすことができます。
「ほめノート」をつくる
何をやってもうまくいかない時期は誰にでもあるかと思います。そういうときは、どうしても気持ちが後ろ向きになりますよね。
そのことにより、なにごとにも消極的になり、いざという場面でもあきらめの気持ちが先に立ち、ふだんなら成功するようなことがうまくいかなくなることもあります。
この悪循環を抜けるためには、常に自分の心の動きに気を配り、気持ちがネガティブな状態に傾いたら、すばやく「応急処置」をすることが必要です。
そのために有効なのが「ほめノート」をつくることだと著者は言います。
この「ほめノート」には、日々の生活の中で「自分で自分をほめたい」と思ったことを書き留めておくのです。内容は、どのようなささいなことでもかまいません。
たとえば、「定時に仕事が終わった。最近はいい調子だ!」とか「コンビニで1品多く買いたかったが我慢した。よくあそこで踏みとどまれた」など何でもいいから書いてみましょう。
もちろん、人からほめられるようなことがあったら、それも合わせて書き留めるべきです。褒められてウキウキすると、感情系脳番地と思考系脳番地が同時に刺激され良い循環が生まれます。
それが、自分への気分転換となり、モチベーションを高めてくれるきっかけとなります。
理解系脳番地トレーニング
目や耳などから情報を得て、その情報を理解するときに働くのが理解系脳番地です。ただ単に受け入れた情報を理解するだけではなく、その情報から推測し理解するのも理解系脳番地は働いているのです。
言われたことを理解したり、推測したり、と人の理解の仕方はさまざまですが、理解のバリエーションが増えれば、なにごとも広く深く理解できるようになり人間としての幅が広がります。
理解系脳番地を伸ばすには、自分の理解力が最も伸びていた時期を思い出し、その当時の気持ちで日常生活を送ることが一番だと著者は言います。
自分の理解力が伸びていた時期というのは、「未知のことが多く好奇心旺盛だった頃の状態でものごとを見たり、人に接したりするといった、それまでとは異なる形で理解が深まったころ」を指し、その当時の意識を維持することが理解系脳番地に強い刺激を与えるとのことです。
理解系脳番地が発達しやすい職業としては弁護士や新聞記者、編集者などがあります。相手の話す内容やその場の状況を瞬時に理解する能力に長けているのです。
それでは、理解系脳番地トレーニングから3つ紹介します。
10年前に読んだ本をもう1度読む
理解系脳番地を大きく2つに分けると
- 「言語」を理解する番地
- 図形や空間などの「非言語」を理解する番地
に分かれ、「言語」は左脳、「非言語」は右脳に主要な機能が位置しています。
そして言語を理解する脳番地を鍛えたいなら、読書が効果的です。でもたくさん本を読めばいいというわけではなく、理解を深めるために同じ本を複数回読むことが大事です。
そこで著者がすすめるのが、10年ほど前に読んだ本をもう1度読んでみるやり方です。なぜなら、どんなにしっかり読んだ本でも、過去に読んだ時には気づかなかったことを長い時間を経て忘れていたことが必ず見つかります。
なぜなら、脳自体が成長しているので、2度目に読むときは以前とは違う脳番地を使って本を読んでいるからです。つまり、本は同じでもそれを読む自分の脳はまったく別物になっているということなのです。
そこでおすすめなのが、あえて過去に読んだ面白いと思わなかった本を読んでみることです。もしかしたら以前とは異なる解釈で読めるばかりでなく、そのときはなぜ面白いと感じなかったかを現在の視点で分析できるからです。
このように本の内容を多角的に読み込むことで、理解力は高まっていくといえるのです。
電車内で見かけた人の心理状態を推測する
著者の友人で人間観察が趣味という人の話では、「電車内で気になる人を見つけて、その人の背景を推理するのが楽しい」のだそうです。
たとえば、傘を持っている人に注目して、「なぜ快晴なのに傘をもっているのか」「荷物が増えて面倒だとは思わないのか」など、いろいろな想像を膨らませるのだそうです。
ブスっとした顔で座っている人を見れば「あの人は何か嫌なことがあったのかなあ」と想像できるし、大きなスーツケースを持った外国人を見かけたら、「この人は日本語をあまり話せないだろうなあ。不安そうだなあ」と思うことでしょう。
このように人の表情を読む訓練は理解系脳番地を刺激します。なぜなら、初対面の人のことは何ひとつわからず、表情やちょっとしたひと言から、相手がどのような人物なのかを想像し、理解しようと努めるからです。
この観察が、理解系脳番地を活性化させますが、あまりジッと人の顔を見続けると思わぬトラブルを引き起こしてしまうかもしれないので、相手を不快にさせないように注意が必要です。
普段絶対に読まない本のタイトルを黙読してみる
著者が18歳のころから続けている習慣のひとつに、「図書館や書店でふだん読まないジャンルのコーナーに行き、本のタイトルだけを黙読する」というものがあるそうです。
たとえば政治関連のコーナーで「ポリティカル・シンキング」というジャンルがありますが、政治に詳しくない人にとってはどんな内容か謎ですし、実際に本を手にしてみても意味がわからずあっさり読むのをあきらめてしまうことと思います。
しかし、ポリティカル・シンキングのコーナーに並んでいる書籍を眺めてみると、その分野ではどんな人が本を書いているのか、本のタイトルとして最も使われる単語は何か、などがおぼろげながら理解できます。
その本の著者のプロフィールから、どのような経歴で、他にどんな本を書いているかもわかるし、どのような意見を持っているかもだんだんにつかめてきます。
もしかしたら、「テレビ番組で見たことがある」人かもしれません。
このように、予備知識がなくてもタイトルや著者の情報をザっと読むだけで、そのジャンルの傾向を何となく理解できるようになるのです。
理解系脳番地トレーニングにおいて一番お金もかからずに鍛えることができる方法と言えますね。
『脳の強化書』 の感想・まとめ


脳のしくみを知り、鍛えることで能力は伸ばせる
「脳は死ぬまで成長する」・・・この言葉にすごく勇気をもらえました。
もう現代では「人生100年時代」です。医療の進歩で長生きできるのは良いこととして、自分の生活を維持するのは老後資金と体の健康、そして何よりも頭の健康です。
残りの人生をどのように生きるかは人それぞれながら、「自分の人生をデザイン」するのに、脳番地トレーニングはとても重要だと思います。
本書で紹介された8つの脳番地と66のトレーニング法は、とても実用的ですぐに実践可能なものばかりです。「自分の価値観」に照らし合わせて、自分自身を見つめ直すきっかけにもなります。
もし興味が出てきたというならぜひご一読ください。
『脳の強化書』の概要


本書の目次
『脳の強化書』
はじめに
1 脳を❝理想の形❞につくり変えよう!
●あなたの脳の鍛え方、間違ってない?
●脳の力がグンとアップする「脳番地」という考え方
●脳番地を刺激する3つのポイント
2 思考系脳番地トレーニング
思考系脳番地 脳全体をひっぱる司令塔
3 感情系脳番地トレーニング
感情系脳番地 死ぬまで成長し続ける脳番地
4 伝達系脳番地トレーニング
伝達系脳番地 あらゆるコミュニケーションを担当
5 理解系脳番地トレーニング
理解系脳番地 成長を支えるのは旺盛な好奇心
6 運動系脳番地トレーニング
運動系脳番地 最初に成長を始める脳番地
7 聴覚系脳番地トレーニング
聴覚系脳番地 成長のきっかけは生まれてすぐの本能的欲求
8 視覚系脳番地トレーニング
視覚系脳番地 見る・動きをとらえる・目利きをする脳番地
9 記憶系脳番地トレーニング
記憶系脳番地 伸ばす秘訣は知識・感情と連動
おわりに
著者の紹介
加藤俊徳(かとう・としのり)
1961年 新潟県生まれ。
医師、医学博士、株式会社「脳の学校」代表。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を探そうと、医学部への進学を決意する。
昭和大学医学部、同大大学院を卒業後、91年国立精神・神経センターにて脳機能を光計測するNIRS原理を発見。
95年より、アメリカ・ミネソタ大学放射線科MR研究センターに研究員として在籍。
臨床診療の経験を生かし、胎児から100歳を超えるお年寄りまで1万人以上の脳画像を分析してきた。
帰国後は慶應義塾大学、東京大学などで脳の研究に従事しながら、MRI脳画像診断のスペシャリストとして活躍。
06年、株式会社「脳の学校」を立ち上げ、脳酸素を計測するCOEやMRI技術を使って脳の「個性」の鑑定」を行っている。
著書に『東大脳になる勉強習慣』(PHP研究所)、『脳は1冊で鍛えなさい』(致知出版社)、『仕事ができる人の脳 できない人の脳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。


コメント