
こんにちはコウカワシンです。
今回は細谷功(ほそや・いさお)さんの著書『地頭力(じあたまりょく)を鍛える』から学ばせていただきます。
『地頭力を鍛える』はどんな本?


『地頭力を鍛える』 の内容は、ズバリ!「フェルミ推定」を使って思考力を鍛えるというものです。
本書はこのような本
本書で語られている「フェルミ推定」は、コンサルティング会社の面接試験で出題されることで有名です。
たとえば、「シカゴにピアノの調律師は何人いるか」とか「世界中で1日に食べられるピザは何枚か」などを聞かれて即答できる人はまずいません。
ですが、概算により近い答えを導き出すことができるのがフェルミ推定なのです。このフェルミ推定で「考え方のプロセス」問うことにより、「地頭力」が鍛えられます。
ここでいう「地頭力」とは、「情報を選別して付加価値をつけていく力」であり、あらゆる思考の基本となる知的能力を指します。この「地頭力」は、これからの情報社会において最も重要な能力とされています。
なぜなら、インターネットの普及により「物事を記憶する」といった能力は陳腐化し、知り得た情報から自分なりに考え抜き、問題解決を図っていく地頭力が今後を生き抜くための重要なスキルだと考えられているからです。
地頭力の本質は、「結論から」、「全体から」、「単純に」考える3つの思考力です。しかもこの3つの思考力は訓練によって鍛えることができます。
本書は、AIに仕事が代替えされていく時代を生き残るためのスキル「地頭力」のトレーニングに最適の内容となっています。
本書は、現在(2021年8月1日)Amazonのキンドルアンリミテッドの対象本です。
Amazonのキンドルアンリミテッドは、ビジネス書からマンガまで幅広いジャンルの本が読み放題です。ぜひこの機会にご検討ください。
本書のマンガ版もございます。
本書は誰におすすめか?
本書はこのような人におすすめです。
『地頭力を鍛える』 がおすすめな人
- これからの時代に求められる能力を身につけたい人
- マーケティング・コンサルタント業の人
- 営業マン
『地頭力を鍛える』 の要点は?


企業、特にコンサルティング会社の採用現場などでは、知識をたくさん知っていたり計算が速いなどの単に頭がいい人ではなく、「地頭のいい人」が求められていると言います。
それに、インターネットで検索した内容をそのまま「コピー&ペースト」してレポートにする「コピペ族」の増殖に伴う人々の思考停止の危機に、「考える」ことの重要性がかつてないほどに高まっています。
これから本当に重要になってくるのはインターネットやPCでは大替が不可能な、「膨大な情報を選別して付加価値をつける」という本当の意味での創造的な「考える力」です。
本書ではこの基本的な「考える力」のベースとなる知的能力を「地頭力(じあたまりょく)」と定義し、地頭力を鍛えるのに強力なツールが「フェルミ推定」であるとしています。



それでは、本書の要点をわたしの独断と偏見で選ばせていただきます。
「地頭力」を鍛えるならフェルミ推定
フェルミ推定とは?
たとえばですが、「東京都内に信号機は何基あるか?」とか「世界中にサッカーボールはいくつあるか?」といった把握するのが難しく、ある意味無茶ぶりとも思える数量について何らかの推定ロジックによって短時間でだいたいの数を求める方法をフェルミ推定といいます。
生みの親はフェルミ教授
「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者のエンリコ・フェルミ(1901~1954)が、自身こうした物理量の推定に長けていたとともに教鞭をとったシカゴ大学の講義で学生たちにこのような課題を与えたことから、彼の名前を取って「フェルミ推定」と呼ばれます。
実はこのフェルミさん、マンハッタン計画により、世界初の核実験が行われた1945年7月、ニューメキシコ州アラモゴードの砂漠の中のベースキャンプでいました。
あらかじめ用意していたノートをちぎった紙片を、爆発を感じると同時に部屋に自由落下させ、爆発の衝撃波で飛ばされたその紙の動きから、実験に用いられた核爆弾の爆発力の規模を推定して、実際の規模との比較における正確さを示しました。
フェルミ推定がどこで使われているか?
フェルミ推定が活用されている場面として有名なのが、コンサルティング会社や外資系企業での面接試験です。こうした会社は「地頭の良さ」を求めているため、その質問としてフェルミ推定が用いられてきたのです。
コンサルティング会社を志望する就職活動中の学生の間では「傾向と対策」として模範解答を習得して面接試験に臨むことも行われており、アメリカでは専用の対策本も出版されているとのことです。
それから、欧米の学校では理科系の思考訓練の題材として人気があり、いくつかの大学や高校生以下向けのウェブサイトにさまざまな質問が掲載されているそうです。
しかもそれらを集めてフェルミ推定の「科学オリンピック」のような競技会も毎年行われているようです。
フェルミ推定が面接試験で用いられる3つの理由
フェルミ推定が面接試験で用いられる理由は3つあります。
- 質問の内容が明快かつ身近なものであるから
- 「正解」がないため 回答者に対し純粋に考えるプロセスを問えるから
- 簡潔でありながら問題解決の縮図であるから
たしかに知識レベルだけでは、その人の思想・思考を図ることはできないわけで、地頭力を問う質問として『ビル・ゲイツの面接試験』という本にある「マンホールのふたはなぜ丸い?」などの問いは、身近であり正解も1つではなく、ひたすらに物事に対する深い思考を知ることができるということですね。



『ビル・ゲイツの面接試験』・・・副題が「富士山をどう動かしますか?」だなんて、考えるだけで空想の世界が広がりそうなのはわたしだけでしょうか?(笑)
地頭力固有の3つの思考力
「結論から考える」仮説思考力


仮説思考力の目的
仮説思考力の目的は、「いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、常にそれを最終目的地として強く意識して、情報の精度を加えながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考法」です。
このことから仮説思考力のポイントをあげますと、
仮説思考力のポイント
- 少ない情報からでも仮説を構築する
- 前提条件を設定して意識する
- 検証を繰り返し仮説を修正する思考
ということになります。
仮説思考力の特徴としては、「最終目的地から逆算して考える」です。
つまり、「はじめからではなくおわりから」「できることからではなくやるべきことから」「手段からではなく目的から」といった具合に「ベクトルを逆転させる」という発想をもつことです。
イメージとしたらこのような感じです。


仮説思考のメリットとしては、「限られた時間内で最善の結論を効率的に出せる」ということが言えます。
「全体から考える」フレームワーク思考力


フレームワーク思考力はの目的は「思考のクセを取り払う」ことです。
なぜなら、人は過去の経験や知識から知らず知らずのうちに思考のクセがついているからです。
フレームワーク思考力の目的
思考のクセを取り払って、
- コミュニケーションを効率的に進める
- ゼロベースで斬新な発想を生み出す
思考のクセがついているからと言って、必ずしも悪いわけではありませんが、新しいアイデアをしがらみにとらわれずにゼロベースで考え出そうとするときや認識が共有されていない他者とのコミュニケーションするときは、じゃまになるので、フレームワーク思考力を使います。
フレームワーク思考力のポイントとして、「全体俯瞰力(ぜんたいふかんりょく)」と全体像を分解する「分解力」です。
フレームワーク思考力のポイント
- 対象とする課題の全体像を高所から見渡す力(俯瞰力)
- とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力
全体像を高所から見渡す力を全体俯瞰力(ふかんりょく)といいますが、これは、「広い視野を持つ」ことと「客観的に物事を見る」ことを指します。
まさに「全体から考える」ということなのですが、 「先に枠を固定することによる思考そのものの固定化」 を避けるためであります。
そこでとらえた全体像を分解する「分解力」とは、物事をできる限り切り分けて考えることのできる力のことを指します。
イメージとしてはこのような感じです。


分解力で「分類」「因数分解」などの4細かい説明はここではあえてしませんがのちほど、「フェルミ推定の例題に挑戦」で、「分類」「因数分解」を使って応用問題をします。もし理論などを興味がおありならぜひ本書を手に取ってご確認ください。
フレームワーク思考力では、「思考のクセを取り払う」というのが基本姿勢です。
ですので、
フレームワーク思考力で、何か課題に取りかかる時には、「一歩引いて考える習慣」が必要であるということです。
「単純に考える」抽象化思考力


抽象化思考力の目的
抽象化思考力の目的は、「特徴をつかんで単純に考える」ことです。それには、物事の枝葉を切り落とし本質をつかまなければいけません。
どのようにするかポイントをあげますと、
抽象化思考力のポイント
対象の最大の特徴を抽出して、「単純化」「モデル化」した後に一般解を導き出して、それを具体化して個別解を導く思考パターンを使います。
この時の抽象化・・・つまり「要約」に重要なキーワードは、
- モデル化
- 枝葉の切り捨て
- アナロジー(ある事柄をもとに他の事柄をおしはかって考えること)
であります。
つまり、抽象化とは「一を聞いて十を知ること」なのです。
イメージとしてはこのような感じです。


そもそも抽象化して考えることがなぜ必要なのかですが、それは「限られた知識の応用範囲を飛躍的に広げる」ためです。
「モデル化」「枝葉の切り捨て」「アナロジー」の適用範囲はきわめて広く、抽象化の苦手な人は自分の経験のみに依存するあまり「自分は特別だ」という意識が強く、他方面でやっていることをアナロジーとして自分の中に取り入れる発想ができません。
そのことから、たとえ他方面であっても「共通点を探す」あるいは「パターンを認識する」というのは、「考える」という行為の中でも最も基本かつ重要といえる能力の一つなのです。
抽象化思考力のまとめとして、「抽象化思考力により抽象化思考力によって応用力を飛躍的に向上させることができる」ということです。
ただ、守るべき点として、
- 具体化とのバランスを常に意識すること
- 過度に一般化しないこと
をつけ加えさせていただきます。
フェルミ推定の例題に挑戦
それでは、フェルミ推定で導き出すやり方を例題をあげて紹介したいと思います。
例題:「日本全国に電柱は何本あるか?」
※解答に際してのルール
- 制限時間:3分
- 電卓/PCなどは使わない(紙と筆記用具のみ)
- 一切の情報の参照不可
①アプローチ設定
日本国内の電柱の本数は?
「面積当たりの電柱本数を日本国土に展開する」(仮説の設定)
②モデル分解
「日本の国土全体を市街地と郊外(市街地以外)に分類」(分類)
⇓
「(面積当たりの本数×面積)に分解」(因数分解)
③計算実行
日本の面積と面積当たりの本数の算出(モデル化)
日本の面積を算出
日本の面積を長方形で近似で算出する。もともと日本の面積を38万k㎡と知っている場合はそれを使う。知らない場合は仮説を立てる(たとえば東京博多間の新幹線の速度と所要時間などから類推したり、日本国土を同面積の長方形で近似した場合にどのくらいになるかを想定する)
だいたい1500km×200kmだとすると総面積は30万k㎡と想定できます。
面積当たりの本数をエリア別に算出
市街地と郊外の比率を「2:8」と想定する
1k㎡当たりの本数を概算する
市街地の電柱配置はだいたい1本/50m
郊外の電柱配置はだいたい1本/200mと仮定
よって、
市街地は400本/1k㎡
郊外は25本/1k㎡
と予想されます。
日本国内の推定電柱本数
これまでのデータをもとに計算してみます。
市街地の本数=30万k㎡×0.2×400本=2400万本
郊外の本数=30万k㎡×0.8×25本=600万本
合計:3000万本
という数字が示されました。
④現実性現象
それでは、実際の本数と比べてみましょう。
電力会社とNTTから公開されている電柱の本数は約3300万本ということでした。
フェルミ推定から導き出した本数が3000万本
この結果をどう取るかですが近い数字が算出できたのではないでしょうか?
これまでの算出法のイメージ図がこれです。


この結果を踏まえていろいろと検証してやり直してみるということを繰り返せば、ますますフェルミ推定の面白さがわかってくると思います。
『地頭力を鍛える』 の感想・まとめ


「考えること」は、生きていく上で大事な根っこ
インターネットで検索すれば、なんでもわかる時代になってきました。アレクサやsiriのおかげで問いかけたり命令するだけで、答えがすぐに見つかったりかゆい所に手が届くような生活が訪れようとしています。
しかし、それは人間としての能力を落とす前ぶれでもあります。人間が考えるということをやめてしまったら、ただの自然破壊を繰り返す動物というだけになってしまいます。
頭の良さって、いろいろあります。
- 「物知り」タイプの有する記憶力
- 「機転が利く」タイプの対人感性力
- 「考える力」が高い地頭力
それぞれ特徴がある頭の良さですが、この中でいつまでも陳腐化しないのは、「地頭力」です。しかも、「地頭力」は、いくつになっても鍛えることができます。
ですので、ぜひ老若男女すべての人にご一読いただきたいものです。
『地頭力を鍛える』の概要


本書の目次
『地頭力を鍛える』
はじめに
第1章 「地頭力」とは何か
第2章 「フェルミ推定」とは何か
第3章 フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか
第4章 フェルミ推定をビジネスにどう応用するか
第5章 「結論から考える」仮説思考力
第6章 「全体から考える」フレームワーク思考力
第7章 「単純に考える」抽象化思考力
第8章 地頭力のベース
第9章 さらに地頭力を鍛えるために
おわりに
参考・引用文献
フェルミ推定練習問題集
著者の紹介
細谷 功(ほそや・いさお)
クニエ マネージングディレクター
1964年 神奈川県生まれ。
東京大学工学部卒業。
東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(ザカティーコンサルティング→クニエの前身)に入社。製造業を中心として製品開発、マーケティング、営業、生産等の領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定量化、プロジェクト管理、ERP等のシステム導入およびM&A後の企業統合等を手がけている。
著書に『アナロジー思考~「構造」と「関係性」を見抜く』(東洋経済新報社)、『いま、すぐはじめる地頭力』(大和書房)、『「Why型思考」が仕事を変える』(PHPビジネス新書)、共訳書に『市場をリードする「業務優位性」戦略』(ダイヤモンド社)などがある。


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