
こんにちはコウカワシンです。
皆様、先行きが見通せない世の中ですが、何か打てる手はないかなあ~と考えたことはありませんか?
コロナ終息の見通し、アメリカと中国のパワーゲームなど、大きな問題が山積していますが、これが今後どうなるのかが見通せたらどんなにいいでしょうね。
たしかに、未来のことは誰にもわかりません。ですが、予想を立てることはできます。それにより今後打てる手も考えることができるはずです。
しかし、やみくもに予想を立てることはできません。予想を立てるには、一定量の資料を集め、その資料から法則を探り、思考する必要が、あります。
ところで、エマニュエル・トッドさんという人をご存知でしょうか。トッドさんは、フランスの歴史人口学者で「ソビエト連邦の崩壊」「リーマン・ショック」「イギリスのEU離脱」など、数々の予測を的中させてきた人です。
そのトッドさんの著書『エマニュエル・トッドの思考地図』は、「時代の潮流」を見通すために必要な思考法を記しています。
実はこの本、「日本人に向けて書かれた本」なのです。今回は、この『エマニュエル・トッドの思考地図』から学ばせていただきます。
『エマニュエル・トッドの思考地図』はどんな本?
本書の目次
『エマニュエル・トッドの思考地図』
日本の皆さんへ
序章 思考の出発点
1 入力(脳をデーターバンク化せよ)
2 対象(社会とは人間である)
3 創造(着想は事実から生まれる)
4 視点(ルーティンの外に出る)
5 分析(現実をどう切り取るか)
6 出力(書くことと話すこと)
7 倫理(批判にどう対峙するか)
8 未来(予測とは芸術的な行為である)
ブックガイド
著者の紹介
エマニュエル・トッド
1951年フランス生まれ
歴史人口学者
パリ政治学院終了、ケンブリッジ大学歴史学博士。
家族制度や識字率、出生率などに基づき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析、ソ連崩壊やリーマン・ショック、イギリスのEU離脱などを予見したことで広く知られる。
主な邦訳書に、世界的なベストセラー『帝国以後ーアメリカ・システムの崩壊』のほか、『世界の多様性ー家族構造と近代性』『最後の転落ーソ連崩壊のシナリオ』(以上、藤原書店)、『シャルリとは誰か?ー人種差別と没落する西欧』(文春新書)などがある。
本書の内容
『エマニュエル・トッドの思考地図』の中身
知的活動は「入力→思考→出力」から成る。
入力する。
(自分の中に図書館をつくり、広く文献やデーターを読み、脳内に蓄積する)
⇓
思考する。
(蓄積したデーターから、思考し発見をする。思考とは自然発生的な「思いつき」や「気づき」である)
⇓
出力(発表)する。
(人に話す、文章に書く)
『エマニュエル・トッドの思考地図』は誰におすすめか?
本書がおすすめな人はこのような人です。
『エマニュエル・トッドの思考地図』がおすすめな人
- 歴史好きの人
- いろんな資料から分析するのが得意な人
- 未来予測が好きな人



歴史は繰り返すといいますが、未来のことを予測するのに過去を顧みるのは大事なことです。
それを踏まえて「過去の反省」をできる人、または「失敗を成長」と置き換えられる人ですね。
『エマニュエル・トッドの思考地図』の要点
本書での思考法モデルとして、「知的活動のプロセス」というのが、どのような流れになっているかを知っておく必要があります。それが下の図です。


(出典:『エマニュエル・トッドの思考地図』より)
この図って、前田裕二さんの「メモの魔力」でも、紹介されたやり方によく似ていますよね。
「ファクトを入力し、創造・分析で抽象化、転用で出力する」という流れが、新たなアイデアをつくります。
まず、トッドさんが「ソビエト崩壊」を予測したいきさつを見てみたいと思います。
エマニュエル・トッド氏が「ソビエト崩壊」を予測した経緯
パリ政治学院を経て、イギリス・ケンブリッジ大学にて歴史学で博士号を取得したトッド氏は、25歳の時、ソビエト連邦が大国として君臨していた時代に、幼児死亡率の増加と出生率の減少傾向をもとにソビエト連邦崩壊を予言しました。
それはソビエト崩壊の15年前のことです。当時は疑念を向けられ、批判の的となったそうです。
つまり、「入力⇒思考⇒出力」で、導き出したものなんですね。このようなしくみを一度自分で作ってしまうと何事も未来への予測がある程度できる気がしますね。
それでは、本書の要点を簡単に取り上げてみたいと思います。



もちろん私の独断と偏見で!
入力(脳にデータバンクをつくる)
さてプロセスの最初に位置し、最も重要で、そして私にとって最も面白い作業が本章で扱う「入力」です。私にとって考えるということは、椅子に座って自問自答を繰り返すようなものではない。
むしろ、ひたすらに本を読み、知識を蓄積していくことなのだと。何かを学び、新たなことを知ったときの感動こそ、私が大切にしてきたものです。
自分の中に図書館をつくる
まずは、データー収集です。自分の頭の中に図書館をつくり、本やさまざまな情報を収集し、自分の中にデーターを蓄積していくと、ある時点で自分の脳がデーターバンクのようになります。
では、何をどのように収集すればいいかですが、歴史書や専門書などから事実(ファクト)を収集するのと同時に、カニ歩きの読書を並行する必要があります。
カニは斜めに歩き、横に進みます。こういう進み方が研究には必要だとトッドさんは言います。そこで新たな発想が生まれ、思考が深まります。
新たな発想・・・アイデアとも言いますが、「アイデア=思ってもみなかったようなことがらの気づき」をするためには、その研究の柱となる部分から外れた読書することが大切だと言います。
研究の大元になるのは読書です。どうやってアイデアを得るか、そのために何をしたらいいかというと、「ひたすらなんでも読む」べきだとのことです。
でも、関連性のないものでは、比較できませんよね。だから、別の問題を取り上げつつも内容の近い本で比較研究するのが良いと思われます。
たとえば、「日本史」と「日本人」といったような2つ交錯点を探れるような本を同時に読むことで、新たなアイデアが探れそうですよね。
思考(創造し分析する上で参考にしたこと)
自分より前に多くの人が発信したデータをひたすら取り入れるということは大切です。そして知識を蓄積していると、ある日突然アイディアが湧くという瞬間があるのです。それは、まったく偶然の出来事です。自制の利かない無意識のメカニズムを通してアイディアが湧いてくるのですが、それは理性的に計画された出来事とは真逆にあるものなのです。
私は何かについて考える際の軸になっているものは、一つはデータであり、もう一つは歴史です。
トッドさんは、これまで歴史人口学者という立場から、「家族構成」とその変化から分析をもって研究をされてきました。家族構成や識字率、人口の変化から導き出したものが未来予測に関連づける資料になったのです。
各地の家族構成から見えることは、研究の特徴として16、17、18世紀において、家族構造や人口関連の変数と当時の社会に認められる歴史的な一致を理解しようとするもの・・・これは未来の社会にも当てはまるかもしれないと仮説を立てたのです。
つまりトッドさんは、先代の師たちがそれぞれ16、17、18世紀の研究するために使用した分析ツールを今の社会に適応させて研究をしているのです。
トッドさんは、ロシア、アラブ世界、アメリカに関する予見で成功したのですが、これは1960年代、70年代のフランス・アナール学派の方法やイギリスの歴史人類学の学派の研究の質の高さを証明したとのことです。
トッドさんが現在において未来を見るときの視点というのは16、17、18世紀の村を考察するときの視点と同じだと言われています。
こういったことは人口学の技術的なツールを超えたところで、物事から一歩下がり距離を保つことを可能にし、思想や幻想から離れることを可能にするのです。
予測(思考から予測へ・・・三つのフェーズからポスト・コロナを見る)
まず、私は経験に基づいた思考、経験主義的思考から入ります。これが経験主義フェーズ、第一フェーズです。ここで重要なのは、待つことでした。物事が描写できる程度のしっかりとしたデータが集まるまで待つのです。
次に、第二フェーズ。経験主義的フェーズで得られたデータと自分自身の経験や歴史ーここではエイズという過去の深刻な事態ーとを対比させるフェーズでした。
それから第三のフェーズ。これは私が芸術的フェーズと呼ぶものです。ここでは、私の本能、直感、歴史家としての経験を自由に解放させ、いくつかの予測を断行します。もちろん、予測するということは経験主義から出るということです。なにしろ、まだ起きていない出来事について話すのですから。


予測というものは、過去の出来事からデータを収集し、自分の経験も踏まえ対比させ、予測するといった手順になります。その手順を並べたのが上の図で示した「予測のプロセス、3つのフェーズ」です。
いかにデータに基づかない将来をイメージするかは、すでに手元にあるデータを、これまでにないカタチで関連づけることで生まれるものなのです。
しかし、歴史の直感を未来に応用するというのは、大部分が本能的なものですので、創造的知性というのとは少し違うそうです。創造的知性を働かせて得たアイディアは、そのアイディアが湧いた後に、データの確認という検証作業があります。
ここでは、「新型コロナウィルス」の大流行について取り上げ、新型コロナウィルスに関連したデータを取り、ポストコロナを予測するということを取り組まれています。
まだ現在進行中であり、またさまざまな国を襲ったものの時間的にもずれているため最終的なデータというものがまだないとのことです。
国によっては、グローバル化の波に乗って、自国で生産拠点のない国ほど新型コロナウィルスで死亡する確率が高かったということです。
たとえば、フランスでは人工呼吸器、マスク、薬などの生産が追いつかず、後進国のようになってしまいました。マスク一つ作れない国・・・つまり、グローバル化というのは社会発展のステップではないということなのです。
たしかに自国に生産チェーンを持つ国(ドイツ・中国・日本など)は、第一波を乗り切ることができたといえます。ですが、この後も大丈夫かというと・・・変異株の状況次第では、まだまだ分からないとトッドさんはいいます。
それでもエクセルで表を作り、いろんな観点からスキャンしたかたちで、ある程度の結果が見えてきてるとのことです。そして、1982~1983年頃に流行したエイズと対比させ「新型コロナウィルス」はエイズほどは深刻ではないという予測を立てられました。
エイズという過去の確固たる経験を踏み台にして、仮説を立て、今現在に起きていることに当てはめてみる・・・。
ポスト・コロナを予測するのに関連づけるために、エイズが発生した過去の社会で確認された、「ウィルスの流行自体が社会の思想傾向を変化させることはなかった」とのトッドさんの経験からです。
けど、ポストコロナでは、貧困化が進み、社会経済的な衝突が一層深刻化するという予測もされています。その不平等の広がりは関連するさまざまな現象の深刻化を「変化」として捉える正当性があるとトッドさんは言います。
つまり、革命のようなものが起きる可能性があるということなのです。これは根拠ないことではなくて、ロシア革命などが、社会的な緊迫感が強まり、革命派たちが台頭し、大きな戦争などでさらに疲弊する社会構造の上に起こったことだからです。
ポスト・コロナでも、今の社会情勢においては、可能性として十分にありうるのではないでしょうか?
なんだか、暗い話ばかりになってきましたが、ここで大事なのは、各国が最低限の自立をすることが大事だということです。つまり国家が国民に対し生産と安全を保障するということです。



これは個人においても言えることだなあ~とわたしは思いました。
『エマニュエル・トッドの思考地図』の感想・まとめ
データを収集し思考し備えるための処世術
本書の内容は、『ファクトフルネス』とは真逆のリスクに備えるため手段を説いたものと感じました。
決してファクトフルネスが悪いというわけではなくて、歴史を振り返ってみればある意味、「周期をもって訪れる出来事」を予測できるとし、それに対しての備えをすることで危機を回避できる可能性もあります。
両学長が、よくいうことで「適正なリスクをとろう」とリスク管理の重要さを説いてくれます。


これは、ユダヤにまつわるタルムードシリーズから「7匹の太った牛とやせた牛」というお話で、「良いことはいつまでも続くとは限らない」という戒めから、常にリスクに備えることの重要性を語ってくれています。
ユダヤ人は、子どもの頃からタルムードを習い、危機管理がしっかりできた人たちばかりです。トッドさんもユダヤ人であることから危機管理という観点を頭に置き、予測に生かしているのではないでしょうか。
このトッドさんの本は、大変難しく読み切るのがなかなかに大変ですが、根底にあるのは、「自分の人生を人任せにして「なるようになる」という考え方しかしないよりは、自分で情報を集め、それを基に考え、備える自立人間になろう」だと思います。
ですので、幅広い方たちに一読していただきたいものです。
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