MENU

「クリティカル・シンキング」~メンタリストDaiGoが重要視する今後必須な処世術スキル

コウカワシン

こんにちはコウカワシンです。

今回は、メンタリストDaiGoさんの著書『悩む力』から学ばせていただきます。

突然ですが、「クリティカル・シンキング」ってご存知ですか?

「クリティカル・シンキング」とは、直訳すると「批判的思考」ということなのですが、批判するとか、否定するみたいなネガティブな考え方ではないのだそうです。

自身の論理や内容について深くかえりみることを意味します。

たとえば、最初の考えから少し離れて「ん? ちょっと待てよ。本当にそれで合っていると言えるのか? 別の方法はないのか?」と自問自答する行為や考え方をすることです。

人間は完璧な生き物ではないので、考え方に偏りがある可能性があります。それを前提に、あらゆる仮説を立て、根拠をデータで証明し、具体的なゴールに向かって最良の答えを探し続ける作業のことを指します。

メンタリストDaiGoさんは、この「クリティカル・シンキング」を昔から重要視し、自らを偏りのない選択や決断に導いてきたと言います。

そんなメンタリストDaiGoさんが出版した『悩む力』は「クリティカル・シンキング」を天才にすら勝てる考え方だとし、メンタリストDaiGoさんの原点となったスキルとしています。


スポンサーリンク
目次

『悩む力』はどんな本?

本書の目次

『悩む力』

はじめに

第1章 凡人が天才に勝つ唯一の思考法
第2章 クリティカル・シンキングで得られる8つのメリット
第3章 「ソクラテス式問答法」をマスターしよう
第4章 正しく考える力を養う5つのトレーニング
第5章 ❝悪いヤツら❞にダマされないための8つのクリティカル・シンキング
第6章 頭ひとつ抜けた説得力が手に入る「欠陥論理」の8つのパターン
第7章 他人を操作できる9つのクリティカル・シンキング

おわりに

本書の内容

本書では、クリティカル・シンキングにより

  • 思考力や判断力が磨かれ、鍛えられる
  • 仕事や勉強面だけでなく、家族や友人関係も好転する

などの効果があり、それにより質の高い情報を自ら選べ、思考力を高めることができます。

『悩む力』は、どのような人におすすめか?

本書は、このような人におすすめです。

『悩む力』は、こんな人におすすめ

  • 常に正しい判断をしたい人
  • 「答えは一つではない」がわかる人
  • 仕事の生産性を高めたい人
コウカワシン

「クリティカル・シンキング」は、今後求められるスキルとして最重要視されていますので、意識高いビジネスパーソンにもおすすめしたいです。

『悩む力』の要点

本書の題名『悩む力』って、いったい何のことだろう?

本書を最初見たとき、こんな感想を持ちました。なぜかというと、ネガティブな考えを転回していくのかと思ったからです。

でも読み進めていくうちにそんな印象は吹き飛んでいきました。なぜなら、この本の「クリティカル・シンキング」の考え方は、今後求められる能力であり、人として成長するのに必要だと思ったからです。

この「クリティカル・シンキング」を実践するためには、本書を何度も読み返さないといけませんが、要点を3つほどあげさせていただきます。

「クリティカル・シンキング」で天才にも勝てるスキルを身に付けよう

天才にあって凡才にないもの・・・それは知性(IQ)です。

わたしたちの知性は遺伝の影響が大きいと言われています。成年期のIQは90%が生まれつきの問題に左右され、生まれつきのIQの高い天才に、後からいくら頑張っても知性で勝つのはかなり難しいと言われています。

生まれつき知性(IQ)の高い人を、後天的なトレーニングで出し抜く方法がひとつだけあり、それが「クリティカル・シンキング」なのです。

「クリティカル・シンキング」とは何か?

「クリティカル・シンキング」は、直訳すると「批判的思考」ですが、正しい証拠をもとに合理的な結論を導き出す考え方を意味します。

ポイントは2つ

  • 目の前の問題に関する証拠と論理の流れを把握し、そこに関わる人たちの感情も適切に解釈する
  • 自分が考える論理や証拠の集め方に偏りがないかを確かめる

つまり、SNSで見る炎上のきっかけになるような、ひたすらにお互いを傷つけあう批判合戦でなはく、相手の感情を思いやり、自分の知識について謙虚な態度を保つことまでがふくまれます。

他人の攻撃やあげあし取りとは、完全に真逆の考え方で、常に建設的な合理性のある結論を求める思考法になります。

IQの高い人は偏りがち

「クリティカル・シンキング」で、なぜIQの高い人に勝てるのでしょうか?

それは、IQが高い人が「思い込み」に頼りがちだからです。そもそも人間は「思い込み」に弱い生き物であるというのを思い出す必要があります。

IQが高い人は合理的な思考が得意です。しかし自分の知識や思い込みなどの自己判断に頼り、思わぬ判断ミスをすることがあり、これは人間である以上は仕方がない話なのです。

一例として、トロント大学の研究を紹介します。

500人の被験者のIQを調べたうえでの実験。以下の文章を読ませました。

「リンダは31歳、独身でとても頭が良く、はっきりとものを言います。大学では哲学を専攻し、人種差別や社会正義の問題に関心を持ち、反核デモに参加していました」

その後、全員に「リンダの現在の職業は次のどちらが正しいと思うか?」と尋ねました。

(1)銀行員
(2)銀行員で、女性解放運動もしている

この問題の答えは(1)の「銀行員」です。「銀行員」の方が「銀行員+女性解放運動家」よりも広い概念なので、正解率は高くなるためです。

ところが実験では約80%が(2)と答えたうえに、正答率の高さはIQの数字とはまったく関係しなかったのです。

つまり、IQが高いからといって合理的な答えを出せるわけではないということなのです。

IQの高い人が合理思考ができないわけ

生まれつきIQが高い人たちでも意外と合理的な思考が苦手なのは、もともとクリティカル・シンキングを高めるモチベーションが低いからです。

なぜなら、IQの高い人はデータ処理が得意なので、クリティカル・シンキングがなくてもある程度まで人生に成功しやすいからです。

しかし、それが逆に足かせとなり、生まれつきの能力でそれなりにやっていけるため「複数の視点を身に付けう」や「自分の見方に偏りがないか気をつけよう」といった意識が生まれにくい・・・すなわち、クリティカル・シンキングを鍛える意識が育たないのです。

たしかにIQの高い人はデータを処理するスピードは速いのですが、そのデータの集め方がまちがっていたら正しい結論は出せません。

正しく意思決定するには、「このデータの出どころは?」や「データの種類は目的に合っているのか?」と客観的に問い直す視点が欠かせません。

ところがIQの高い人は、意識して客観的な思考を起動させる前に、すぐに目の前にあるデータ処理にとりかかってしまうことがよくあります。

そこでクリティカル・シンキングを鍛えて客観的な思考で正確な意思決定ができれば、知性が高い人を超えられる可能性があるというわけです。

優秀なクリティカルシンカーがやってる6つの習慣

「思い込みの罠から逃れて、視点を増やし、精度の高い証拠をもとに意思決定を行う」

これがクリティカル・シンキングの要点です。しかしクリティカル・シンキングは、人間が生まれ持つ脳の働きに逆らう行為なので、イメージが浮かべにくいですよね?

クリティカル・シンキングがうまい人たちは、6つの習慣で視点を増やし、精度の高い証拠をもとに意思決定を行っています。

クリティカルシンカーが行っている6つの習慣

  • 習慣1 「同定」
  • 習慣2 「調査」
  • 習慣3 「バイアスチェック」
  • 習慣4 「推論」
  • 習慣5 「欲求の確認」
  • 習慣6 「好奇心」
習慣1「同定」

「同定」とは、「自分が今どんな問題と向き合っているか?」を確認する作業のことです。クリティカル・シンキングの基礎と言われてます。

DaiGoさんは、よく「YouTubeで成功するにはどうしたらいいですか?」と質問されることがあり、必ず返す答えが「まずはベンチマークをしてください」なのだそうです。

これは何も考えずにユーチューバーになる前に、動画サイトのトレンドや自分の立ち位置を調査したうえで、「YouTubeで成功するために取り組むべき問題は何か?」をはっきりさせるためです。

ここで、クリティカル・シンキングができる人とできない人の差ができ、できる人は成功する可能性が高くなるけど、できない人はただ成功者のマネを行い、再生回数も上がらないままやめていくケースが多いのだそうです。

クリティカル・シンキングができる人は、成功者の動画をチェックしたうえで、そのままマネをするのではなく、「この人が成功した理由とは?」や「成功者の類似点は?」と考えを進めていきます。

こうすることにより、ただのヒトマネにおわらない、自分だけの斬新なアイデアを練り出すきっかけになるのです。

習慣2 「調査」

自分の議論に説得力を持たせるために信頼できない情報を持ち出したり、自分にとって都合がいい情報を集めてしまう人は少なくありません。

参考にする情報のソースを調べるクセをつけ、その根拠のレベルをチェックしていくのが「調査」のキモです。

たとえば、最近の「新型コロナウィルスは、うがい薬で死滅する」などの情報は、典型的ですね。新型コロナの不安を解決してくれそうな情報には嘘でもいいから飛びつきたくなるのが人間ですからね。

情報の出所を意識しないと、自分にとって都合がいい情報だけ集めがちです。それを解消するには、この場合「情報源はアカデミックな機関なのか?」とか「それともネットに転がっている情報を広めただけなのか?」など、深掘りして調べないと正しい意志決定にはつながらないということです。

習慣3 「バイアスチェック」

「自分はだまされない」とか「このアイデアはまだ誰も手を付けていない」など、「思い込み」という名の「自分の言葉」に疑いを持つ人は、驚くほどいないそうです。

たしかに、人間は自分が一番かわいい生き物なので、他人の言葉には厳しい人でも、自分の思い込み(バイアス)に立ち向かっていける人はあまりいません。

ここで大事なのは、自分の内からも外からも適当な距離を置かなくてはいけないということなのです。

習慣4 「推論」

「推論」とは、いまわかっていることから、別の可能性をいろいろと考えてみる行為を意味します。

たとえば、「肉をよく食べる人は寿命が短い」と結論づけたデータがあったとすると、そのまま鵜呑みにすれば「肉は健康に悪い」と考えてしまいます。

しかし、ちょっと推論を働かせてみると、「いや、肉で寿命が縮むのではなく、肉をよく食べる人の中に運動不足の人やタバコを吸う人がかなりの数いるのではないか?」との可能性に思いいたることも予想されますし、単純に決定できなくとも「肉=健康に悪い」とだけ考えるよりは精度の高い結論にたどりつきやすくなります。

つまり、多くの情報は特定の瞬間を切り取った断面でしかなく、そこからどのような変化を起こすかは推論に頼るしかありません。

その情報が信ぴょう性のあるものでも、それは世界の一面にすぎないという点は、ぜひ押さえておかなくてはいけません。

習慣5 「欲求の確認」

難しい問題を解決するときにありがちなのが、「そもそも自分にとって何が大事だったのか?」を忘れてしまうケースです。

たとえば、「利益を出すためにコストカットに手をつけたら、やがて支出の削減ばかりに意識が向かい、最終的な儲けが減ってしまう」とか「ダイエットのためにお菓子断ちをしたら、やがてお菓子の誘惑に耐えることでストレスが溜まり唐揚げやピザを大量に食べてしまう」などのことです。

このように手段が目的化したせいで最初の目的を忘れることはあるのではないでしょうか?

ここで重要視すべきは「利益の確保」であり「ダイエット」という「欲求の確認」なのです。クリティカル・シンキングを正しく行うために必ず意識したいものですね。

習慣6 「好奇心」

クリティカルシンカーに必要な「好奇心」
いろいろなことに興味が向かないと、幅の広い解決策は生み出せないと言われています。

たとえば、新たなマーケティングの手法を考えなくてはいけない状況で、同じ畑の人間にだけ話を聞いたり、似たような分野の専門書ばかり読んでも、本当に新しいアイデアは生まれません。

新しい発想を生むには、今自分が入っている箱からいったん出なければならないからです。

そこで、好奇心旺盛なクリティカルシンカーは、特定の枠にとらわれず、あらゆる分野から情報を集めようとします。

同じビジネスの分野だけでなく、映画、小説、古典、物理学など、幅広いジャンルから役立ちそうなものを手あたり次第に探し求めます。

たしかに解決するまで回り道することでしょうけどより良いアイデアが生み出される可能性はぐっと上がります。

そこで、ひとつ注意点!

人間は経験を積めば積むほど好奇心が薄れていく傾向があります。

クリティカル・シンキングを鍛えるには、意識して好奇心を持ち続ける必要があるのです。

「クリティカル・シンキング」のメリットとマスター法

「クリティカル・シンキング」のメリット

クリティカル・シンキングの8つのメリット

クリティカル・シンキングはメリットとして、合理的な思考をうながしたり新しいアイデアを生み出すとかビジネス色が強いイメージがありますが、プライベートでも人間関係やネガティブ思考の改善とかにも効果を発揮します。

クリティカル・シンキングの8つのメリット

  • キャリアの成功に役立つ
  • ものごとを決めるのがうまくなる
  • 自分をよく理解できるようになる
  • 未来を予測しやすくなる
  • コミュニケーションがうまくなる
  • 嫌な気分を軽くしてくれる
  • フェイクニュースにだまされにくくなる
  • 発想力が広くなる

多方面から思考を繰り広げることで進むべき道がハッキリ見えてくるのを感じるはずです。

これにより、意思決定やコミュニケーション能力だけでなく、発想力やメンタルまで強化してくれるのだから人生を変えるスキルといっても過言ではありません。

クリティカル・シンキングレベルは定期的にチェックする

そこで、クリティカル・シンキングの実践に向けて簡単なセルフチェックをしてみることをおすすめします。これは実践に入りやすくなるためのステップなのです。

クリティカル・シンキングレベルを計る7つのチェック項目

  • どんな主張も、信じる前に、それを支持する証拠を探す
  • つねに異なる視点から問題を考えている
  • 他人の意見に反論する時でも、自信をもって主張を述べられる
  • 既に知っていることでも、積極的に間違っている可能性を探している
  • 自分の意見は、個人的な経験や感情よりも証拠に左右される
  • なにか確信が持てないことがあれば、もっと調べる
  • 特定のトピックに関する知識を増やすために、どこを探せば信頼できる情報が手に入るかを理解している

さて、皆様はいくつ当てはまりましたか?

このチェックリストは、「いくつ当てはまったら合格」という基準はなく、最終的には、すべての項目に「いつも当てはまる」と自信をもって答えるのが目標なのです。

ですからクリティカル・シンキングをトレーニングしながら定期的にチェックを行い、自分に足りないものや心がけないといけないものを意識するのが大事なのです。

クリティカル・シンキングをマスターする方法は「ソクラテス式問答法」

「ソクラテス式問答法」

古代ギリシアの賢者ソクラテスが弟子を鍛えるために使っていた技法が「問答法」と呼ばれるものです。相手にいくつかの質問を投げかけ相手が自然と解決策を思いつくように導くのがこの方法です。

注意点としては「あくまで自分から具体的なアドバイスはしない」ことです。

本書からひとつの例を引用します。

たとえば、友人から「運動したいけど時間がないんだよね~」といった相談を受けた時は、次のような質問を投げかけます。

自分「時間がないというのは、どこまで本当なの?」
友人「夜まで仕事をしているし、帰ったら疲れ切っているしねぇ」
自分「それは大変だね。でも、時間があったらどんな運動がしたいの?」
友人「そうだなあ。ランニングとかジムに行ってみたいかなあ」
自分「そもそも運動したいと思った理由って何なの?」
友人「運動で体力をつけて、もっとスピーディーに仕事がしたいんだよ」
自分「体力をつけるために、ランニングやジム以外にできることはないかなあ?」
友人「そういえば、会社の階段を使うとか、いつもより手前の駅で降りて歩くみたいなやり方もよく聞くね」

いくつかの質問を重ねることで問題の理解が深まり、よりよい結論を思いつきやすくなるわけです。

クリティカル・シンキングを鍛えるトレーニングでは、この「ソクラテス式問答法」を自分に向かって使います。

なんらかの問題が起きたら、独り言を話すかのように自問自答を繰り返し、少しずつ視野を広げていくのです。DaiGoさんも日頃から「ソクラテス式問答法」を愛用しビジネスにおいても加速した経験がたくさんあるそうです。

自分の中にソクラテスを作り、自分と仮想ソクラテスとのやり取りをシュミレーションし、仮想ソクラテスが「根拠は? 理由は? 他のやり方は?」と疑問を投げてくるのをひたすら打ち返すのが重要なポイントなのです。

「ソクラテス式問答法」に欠かせない6つのパターン

「明確化の質問」

問題を明確にするための質問です。

たとえば、

  • 「〇〇〇とはどのような意味なのですか?」
  • 「別の方法で説明するとどうなるのですか?」
  • 「その本質やメインの問題は何であると思いますか?」
  • 「何か具体的な例をあげてもらえますか?」
  • 「そのポイントをさらに広げることができますか?」
  • 「その問題のゴールは何ですか?」

このような質問をなげかけることで、問題のりんかくがはっきりし、どこから解決の糸口を探すべきかがわかり、具体的な解決策が考えやすくなります。

「前提調査の質問」

問題の「前提」を深掘りするために使う質問です。

基本文型 「初期設定」

  • 「この問題はどの点が重要ですか?」
  • 「この問題の解決は簡単ですか? 難しいですか? その理由は何ですか?」
  • 「そのように考えた理由は何ですか?」
  • 「この問題の前提は何でしょうか? 見落としている点はありませんか?」
  • 「この問題は、何が他の重要な問題と関係がありますか?」

基本文型 「仮定」

  • 「〇〇〇〇で仮定されていることは何でしょうか?」
  • 「いまの答えの代わりにどのようなことを仮定できますか?」
  • 「あなたは〇〇〇〇を前提にしているようですが、合ってますか?」
  • 「私はあなたの意見を正しく理解できていますか?」

このように、自分がいま抱えている問題について、「どのような前提がありうるだろうか?」「その前提を、どのように検証(または否定)できるだろうか?」と掘り下げるのが大きなポイントです。

「証拠の質問」

問題の解決策にどれくらいの証拠があるのかを考えるための質問です。

基本文型

  • 「〇〇に似ているものは何だろう?」
  • 「実例には何がありますか?」
  • 「〇〇が起きた原因は何だろうか? そう思った根拠は何だろうか?」
  • 「他に必要な情報はありませんか?」
  • 「〇〇〇の理由を教えてくれませんか?」
  • 「どのような理屈でこの結論にいたったのですか?」
  • 「証拠が本当かどうかを疑う理由はありますか?」
  • 「その信念にいたった理由は何ですか?」

このように根拠をひたすら掘り下げるのが「証拠の質問」です。ちなみにですが、ここでいう根拠は科学的な証拠やデータだけでなく、自分が特定の考えを持った理由や動機などもふくまれます。

「視点の質問」

問題を解決するにあたり、視点を変えてみたらしやすくなることがあります。ひとつの視点にとらわれない質問が功を奏する場合を想定してみます。

  • 「その問題について別の見方はないだろうか?」
  • 「いまの代替案は考えられないだろうか?」
  • 「それがなぜ必要で、どのようなメリットがあるのかを説明できるだろうか? そのメリットを受けるのは誰だろうか?」
  • 「それがベストだと思う場合、その理由は何だろうか?」
  • 「それの長所と弱点は何だろうか?」
  • 「反対意見にはどのようなものがあるだろうか?」
  • 「他の人や他のグループの人たちは、この問題にどう反応すると思いますか? そう反応すると思うのはなぜでしょうか?」
  • 「〇〇〇という反論に対して、あなたはどう答えますか?」
  • 「〇〇〇を信じている人、あるいは信じていない人は、あなたの意見についてどう思うでしょうか?」
  • 「〇〇〇と△△△のアイデアはどこが似ていますか? またはどこが違いますか?」

このようにあらゆる方向から別の可能性を探るのが「視点の質問」です。人間の凝り固まった考えを解くには、まったく違う角度から思考をうながし続けなければいけません。そうすれば、ひとつのアイデアにしがみつかず新しいアイデアの発見もあるのです。

「影響と結果の質問」

「影響と結果の質問」は、自分が考え出した結論や解決策の制度を確かめるためのものです。

基本文型

  • 「どのようなまとめができるだろうか?」
  • 「その前提の結果はどうなるだろうか?」
  • 「〇〇は△△にどのような影響を及ぼすのだろうか?」
  • 「〇〇は△△にいかにして(どんな段階を踏んで)影響を及ぼすのだろうか?」
  • 「〇〇は、以前に学んだこととどのように結びついているのだろうか?」
  • 「〇〇〇はどんな効果があると思うのだろうか?」
  • 「〇〇〇が起こる確率はどのぐらいだろうか?」
  • 「〇〇〇の代わりになるものはないだろうか?」
  • 「〇〇〇にはどんな意味があるのだろうか?」
  • 「もし〇〇〇が起こった場合、他にどんなことが起きるだろうか?」

問題解決のために思考を重ねて複数の対策を思いついても、すべてを試すのは困難です。そこで、「影響と結果の質問」を使い、その対策を実践した際にどのような結果が起きそうかを見積もっておくのが重要です。

「疑問の質問」

「ソクラテス式問答法」を使っていると、そのうち「質問の答えがなかなか思いつかない・・・」といった場面に行き当たることがあります。そんな膠着状態から抜け出すために「疑問の質問」をしてみましょう。

  • 「この疑問のポイントはどこだろうか?」
  • 「なぜこの疑問は重要なのだろうか?」
  • 「この疑問についてもっといい質問はできないだろうか?」
  • 「この疑問をベースに、どのような前提を生み出せるだろうか?」
  • 「この疑問は、なんらかの重要な問題に結びつくだろうか?」
  • 「なぜ自分はこの疑問を持ったのだろうか?」
  • 「〇〇とはどのような意味だろうか?」
  • 「〇〇を日常にどのように適用できるだろうか?」
  • 「それは自分のアイデアだろうか? それともどこかで聞いた事だろうか?」
  • 「いつもそのような考えが浮かんでいただろうか? それとも最近だけだろうか?」
  • 「あなたの意見は、他の人やコトに左右されたものか?」
  • 「どこでそのアイデアを思いついたのか?」
  • 「そのように感じた原因は何だろうか?」

行き詰まった質問の性質を掘り下げていくことで、あらためて問題の本質がどこにあるかを把握し、そもそも自分が疑問を持った理由や動機をあきらかにしていくわけです。

「ソクラテス式問答法」でセルフコーチング

「ソクラテス式問答法」をそのまま使おうとするのは最初は難しいかもしれません。なぜなら、たいていの人は自問自答の習慣がないからです。どの質問を使うのが最適かを判断できる人は、なかなかいないのではないでしょうか?

そのために、普段から「ソクラテス式問答法」を意識して試すセルフコーチングが必要です。

やり方が2つあります。

  • 「ソクラテス・テンプレート」を作る
  • 「他人の悩みに使う」

「ソクラテス・テンプレート」では、数ある質問の中から、とくに重要性と即効性が高いものを選び出すのがコツです。いま悩んでいる問題に対して、まずは2~3個の解決策を考えておく、そして直感で「これは良さそうだ・・・」と感じたアイデアをピックアップするのがいいでしょう。

「他人の悩みに使う」は、他人のために使うことにより主観が入りにくいため、自問自答よりスムーズに質問しやすいと思います。このトレーニングで大事なのは、聞き手はあくまで質問に徹すること。自分の意見など入れても相手の反発が増すだけですので、地道に話を聞き質問を重ねていくと解決に近づきやすくなります。

正しく考える力を養う5つのトレーニング

「ソクラテス式問答法」に慣れてきたら、さらにステップアップしてみましょう。

クリティカル・シンキングのスキルを高めるには、自分自身の創意工夫が必要です。これにより自分の頭で解決策を考えて未来を切り開く思考力が身につきます。

クリティカル・シンキングを鍛える5つのトレーニング法

  1. 弁証法的ライティング
  2. CAT法
  3. CLS法
  4. ケーススタディ法
  5. WOOP+C

1.弁証法的ライティング

脳内の思考を紙に書き出すトレーニングで、頭の中だけでものごとを考えるよりも格段の思考力を養うことができます。ただし、自分の頭に浮かんだことをダラダラ書き続けるだけでは、クリティカル・シンキングは鍛えられません。

論理力を高めるために「弁証法的ライティング」を使いましょう。

弁証法」とは、古代ギリシアから使われてきた思考法のひとつで、ドイツの思想家ヘーゲルによって定式化されました。

「弁証法」の進め方

  1. テーゼ(正)を考える 「物事のメリットやポジティブな側面について考える」
  2. アンチテーゼ(反)を考える 「物事のデメリットやネガティブな側面について考える」
  3. ジンテーゼ(合)を考える  「テーゼとアンチテーゼを合わせて、新しい解決策を生み出す」

たとえば、きれいな花が咲いていたとします。

テーゼでは「見た目が美しい」「香りが心地よい」

アンチテーゼでは「花は枯れてしまう」

つまり、花は美しいけど枯れてしまうという、両立しない特徴を持っているわけです。

この2つの特徴をベースにジンテーゼを考えると、

「美しい花はやがて枯れてしまうが、そのおかげで翌年もまた美しい花を楽しむことができる」

となります。

物事のメリットとデメリットをつなげて新たな価値観を探すのが弁証法のポイントです。これは頭の中だけで考えるのは難しいので紙に書き起こして考えると良いでしょう。

2.CAT法

「CAT法」は、アメリカの学校などで生徒にクリティカル・シンキングを教えるために使われている方法です。

「CAT法」の進め方

  1. 課題の設定
  2. ミニッツ・ペーパー
  3. 四つの質問
1.課題の設定

考えるべき議題の設定です。

2.ミニッツ・ペーパー

その議題についてどのような答えを出すかを考え、適当な紙に2~5分ぐらいの時間制限をつけてどんどん書き込んでいきます。あまり深く考えずに思いつく端から書き出します。

3.四つの質問

ミニッツ・ペーパーに書き込んだ内容から、四つの質問でそれぞれの答えを検討していきます。

四つの質問

  1. 重要度の質問 (その答えは他と比べてどれくらい重要か?)
  2. 印象の質問 (その答えにどんな印象を持ったか?)
  3. 混乱の質問 (その答えでよくわからない点はどこか?)
  4. 要約の質問 (この作業から学んだことは何か?)

3.CLS法

CLS法は日本語で「共同学習戦略」と訳され、他の人たちと議論しながらクリティカル・シンキングを鍛えていく方法です。

ポイントはこんな感じです。

「CLS法」の進め方

  1. 議題定義
  2. 根拠の議論
  3. 全体の参加
1.議題定義

トレーニングの前に、これから話し合う議題がどのようなものかをはっきりさせます。

2.根拠の議論

決めた議論についてグループで意見交換して、自分が考えた対策や解決法について、「なぜこの解決策が良いと考えたか?」を話し、意見を戦わせます。

3.全体の参加

議論の中で、主流意見以外の声を取り込むため「すべての人が議論に参加するように」と事前にルールを伝えておきます。

4.ケーススタディ法

ニュースや社会問題を使って思考力を鍛えるトレーニング法です。証拠や根拠を土台にした思考を養いたいときに有効です。

「ケーススタディ法」の進め方

  1. 事例を決める
  2. 事実を箇条書きにする
  3. 事実を分析する
1.事例を決める

ニュースや社会問題から議題を決めます。

物議をかもすような事例や、原因がわからない事例がいいでしょう。

2.事実を箇条書きにする

事実だけを書き出し、明確な証拠にもとづいた推論を進めていきます。

3.事実を分析する

「ソクラテス式問答法」により分析します。

5.WOOP+C

ニューヨーク大学の心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士が開発した「WOOP」という目標達成の技法をクリティカル・シンキングのトレーニングに応用したものです。

「WOOP」の進め方

  1. 「願望(Wish)」
  2. 「成果(Outcome)」
  3. 「障害(Obstacle)」
  4. 「計画(Plan)」
1.「願望(Wish)」

仕事やプライベートで自分が抱く希望や目標をくわしくイメージします。

2.「成果(Outcome)」

「願望(Wish)」でイメージした願望の「ベストな成果」を思い描きます。

3.「障害(Obstacle)」

「成果(Outcome)」でイメージしたベストな成果を達成する際に、障害になりそうなものを思い描いていきます。

4.「計画(Plan)」

すべての項をふまえて、最後に具体的な計画を立てます。

WOOPの手法に「好奇心」をプラスする

「WOOP+C」は、「WOOP」に「好奇心(Curiosity)」をつけてクリティカル・シンキングに応用したメンタリストDaiGoさんオリジナルの手法です。

では、メンタリストDaiGo流「WOOP+C」を、展開してみます。

願望 まずは願望の設定、議題は「YouTubeの再生回数を上げたい」に設定します。

成果 願望に対してベストな成果を考えます。「手間を減らして、いまよりも再生回数が増える」

障害 では、成果に対して障害になりそうなことを考えます。「編集スタッフの増員、動画内容のブラッシュアップ、編集時間の増加」

計画 障害を乗り越えてベストな成果に近づくにはどうすればいいかを考えます。「編集スタッフを入れず、動画で話す内容を事前に用意せずとも、視聴者を満足させられる方法はないか?」

好奇心 これまでの問いに対する解決策を考えます。「再生回数を増やそうとすれば手間が増える・・・」という障害について、最終的に「YouTubeで質疑応答のコーナーをつくる」という解決策にたどりつきました。

質疑応答であれば事前準備も要らずその場で答えを考えるだけなので編集の必要もないし、視聴者の方が抱く疑問に答えていけば、それだけ多くの人の役に立つ。

が、メンタリストDaiGoさんが最終的に出した結論ということになります。

以上が、「WOOP+C」の進め方及び応用編です。

『悩む力』の感想・まとめ

「クリティカル・シンキングは、私が昔からもっとも重要視している考え方です。
by メンタリストDaiGo

本書では、クリティカル・シンキングにより、天才が見せるひらめきよりも、「問答法」を駆使し試行錯誤することで、偏りのない明確で正確な答えが出せるとともに、いままでにない新しいアイデアさえも得ることが可能なスキルということを教えてくれました。

それから今回割愛しましたが、クリティカル・シンキングを使用することで、「悪いヤツらにダマされない・・・」「頭ひとつ抜けた説得力・・・」「他人を操作できる・・・」などのDaiGoさん流のスキルをも得ることができます。

それよりも、今後もっとありえない現実が、差し迫ってくる可能性があります。あらゆる分野にわたってクリティカル・シンキング能力を養うことはこれからもっと必要になってくるのではないでしょうか。

そういった意味でも一読いただきたい一冊です。

コウカワシン

最後までお読みいただきありがとうございます。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

四国在住。
ミニマリスト。趣味は映画観賞と音楽鑑賞、読書、野球観戦。
映画は特に好き嫌いなくほとんどのジャンルーを観ます。音楽はジャズとクラシックが大好きです。読書は歴史書が好きでよく読みます。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次