
こんにちはコウカワシンです。
今回は、土屋哲雄(つちや・てつお)さんの著書『ワークマン式「しない経営」』から学ばせていただきます。
『ワークマン式「しない経営」』はどんな本?


『ワークマン式「しない経営」』は、ズバリ!「企業の合理化・最適化マニュアル」です。
本書の内容
アパレル界で異端ともいえる存在の「ワークマン」。
高品質でファッショナブルでありながら、安価な製品を提供しているワークマンは店舗に行くといつもワクワクさせてくれます。
もともとは作業服のお店だったのにカジュアルで高機能なスポーツウェアーまで手掛け、いまや人気のアパレルブランドの一角を占めるまでになったワークマン。
そのワークマンの土屋哲雄(つちや・てつお)専務が書かれた本が本書です。
実は、ワークマンは業績を上げるためにいろんな「しない」ことをしてきた会社なのだそうです。
本書のターゲット
『ワークマン式「しない経営」』をおすすめな人
- 経営者
- 指導者
- 結果を出したいビジネスマン
『ワークマン式「しない経営」』の要点


本書の目的は次の通りです。
ムダなことをしないことで合理化を図る
⇓
エクセル経営の導入でデーターに沿った経営戦略を立てる
⇓
社員の目的意識とモチベーションが上がる
⇓
20年先も視野に入れる
ライバルのいる市場にはいかない
ライバルがたくさんいる市場は競争が過激です。
それを避け、誰でもが参入できない市場で業績を上げることがワークマンの強みになっています。
もともと作業服の市場でいたワークマンは、土屋哲雄専務が入社する前からも建設技能労働者向けのウェアの専門店として安定した経営をされていました。
土屋専務が入社してからは、なお一層のブルーオーシャン市場の拡張(客層拡大)と企業風土の改革(「しない経営」+「エクセル経営」)を手掛けられ、今日のワークマンに至りました。
ブルーオーシャン市場
ブルーオーシャン市場とは、競争のない理想的な未開拓市場ということです。まだ誰も手を付けていない市場を指します。その反対に競争激化の市場を「レッドオーシャン」と言います。
それには、「誰が、どのような価値に対してお金を払うのか?」をしっかりリサーチする必要があります。そのポイントが次の3つです。
- 製品力(差別化された製品)
- 顧客関係力(固定客の囲い込み)
- 運営力(現場の改善力、低コスト運営)
このようなデーターをしっかり取り、改善していくことが大事で土屋専務は「企業風土の改革」を進められました。
そして、ブルーオーシャン市場に打って出る。
こうしてワークマンの拡大を呼び込みました。
お客様の「異常値」が強みを教えてくれる
新製品やビジネスモデルのヒントを得るときに大事なのが、「異常値を検知する」ことだと言います。
もともとは作業服の専門店のワークマン。
それ用の用途の商品を色々出しています。
その中でも異常な売れ方をする商品があり色々調べてみると不思議なことがわかったのです。
たとえば、
- 「防水防寒スーツ」は、一般のバイクユーザーが愛用
- 「ファイリングリップシューズ(厨房とかの用途で必要なすべりにくいシューズ)」は、すべりにくいので妊婦さんが愛用
- 「メリノウールショートソックス」は、登山愛好家
- 「耐久撥水リップストップエプロン」は、一般のガーデニング愛好家
というように、その用途以外の一般の人に商品の良さが伝わり、異常な売り上げへとつながったのです。
それをすかさず「エクセル経営」のデーター分析にかけ、売れ筋の色の比率もわかってきたのです。
このことがきっかけで作業服の専門店からアウトドア・スポーツ・カジュアルに通じた「高機能ウェア」メーカーへと変貌を遂げたのです。
ブロガーアンバサダーを巻き込む
「お客様視点」は非常に重要です。
実際に使用するお客様のニーズが売り上げに作用するからです。
先ほど、「異常値を察知する」ことの重要さをあげましたが、最近ではブログやYouTubeなどでワークマン製品のユニークな使い方をする人たちが現れました。
そこに着目して、その方たち向けに「新製品発表会」を年2回したところ、その声を製品に反映することができました。
それは双方に相乗効果を出したのです。
ブロガーさんやYouTuberさんには「製品開発アンバサダー」になっていただき、ワークマンの店舗でポスターを貼り出します。
当然、その人たちのブログやYouTubeチャンネルにはアクセス数が増えます。 ワークマン側も製品の意見をもらい製品の宣伝もしてもらえます。
もちろん売り上げもアップします。互いに金銭の授受はなしにWin-Winの関係を築けるのです。
アンバサダー「狩女子」Nozomiさんの例
このMIXING(ミキシング)レインパーカーがとても欲しくなります。
この「狩女子」Nozomiさんもアンバサダーになる前からワークマンファンで自主的に製品を紹介してくれていた「熱いファン」のひとりでした。
アンバサダーといってもスポンサー契約をしているわけではないので、製品の悪口を言うことはありますが、ワークマン側はそれも大歓迎なのだとか。
Nozomiさんという方は、もともと東京で営業の仕事をしていたけど、現在の本業はヨガのインストラクター。彼女のおばあさんが丹精を込めた畑がイノシシの被害に遭うのをきっかけに猟師になったということです。
猟師のキャリアはまだ浅いものの、ワークマンの一般向け製品はアウトドア初心者向けなので、アンバサダーとしてぴったりだったことが決め手になったそうです。
そこで、ワークマン製品はアンバサダーとともに成長する、まさにウィンウィンの関係であるといえますね。
ワークマン式しないこと
「しない経営」でブルーオーシャン市場を切り開く
企業経営で重要なことがあります。
それは、
- 「目標は少なく」
- 「人をかけない」
- 「お金をかけない」
- 「期限を定めない」
で、スタートし、目標を達成までやりきるです。
つまり、「人とお金はかけずに、企画と準備に時間をかける」ことをモットーにされているのです。
短時間で実施しようとすると、企画案づくり自体が目的化する。すると、こぢんまりとした事業になってしまうからです。
具体的な出店段階に入ると人員を増やしていくという具合にします。
仕事の期限は設定しない
先ほども、言いましたが、ワークマンではさまざまな仕事に期限を設定しないのです。
その代わり、やろうと決めたことは時間がかかっても必ず実現させるのだそうです。
期限を設定すると、締め切りを守るために仕事の質が下がるかもしれないのと、社員の方でも評価が下がるという危機感を持つためです。
一方で、期限がなければ、自分で工夫して必ずやり遂げるということです。
面白いのは、上場企業ながら決算発表を延ばした話です。
通常、決算発表は、「決算日から45日以内に行う」というルールがあります。
ワークマンでは、3月決算なので例年4月末に決算発表を行っていました。
けど、そのために経理部員の負担が大きく、残業続きになります。
そうすると「働き方改革」のひとつである「長時間労働の是正」に反してしまいます。
同時に監査法人も残業することになり、短期間で監査を終えようとすると、やはり仕事の質が落ちます。
そこで、決算発表日を1週間延ばすことにしたそうです。
そこで心配されたのが、投資家やアナリストからの非難。
株価が下がるかもしれないというトレードオフの不安を抱えながら、断行しました。
ゴールデンウィーク明けなら、決算日から45日ルールに反さない。
そのおかげで経理部はストレスなく仕事ができたし、監査法人も余裕をもって入念にチェックしました。
そしてなによりも株価に影響がなかったことが幸いでした。
何も失うことなく「働き方改革」に取り組めたこの経験はとても大きいと言えるでしょうね。
ノルマの短期目標は設定しない
これは土屋専務の経験からノルマや納期のある仕事を多数抱えると、ストレスからミスが増え、結果は間違いなく悪くなる。また目の前の数字を上げるために、短期間で結果を出そうとすると、どうしても仕事はこじんまりしていまうという理由からです。
短期目標をいくつも掲げるほど会社はダメになる。社員に過度なプレッシャーをかけても何もいいことは一つもないし、社員も絶対に伸びない。ノルマや納期がないほうが、自分の頭で考え、順序立てて仕事ができる。
これがけっこういい結果になるそうです。
というのも不思議なことに「いつでもいいですよ」「時間がかかってもいからやってくださいね」といって仕事を任せたケースで、想定以上に時間がかかったことは、ほとんどないそうです。
社内の雰囲気も確実に明るくなるし、社員が前向きに仕事をしてくれるのは経営者にとってとてもいいはずですよね。
頑張ってできても意味がない
ワークマンでは、社員に無理をさせません。「頑張らない」「頑張ってできても意味がない」と考えているからです。
小手先で売上をあげるより、誰にでもできる仕事に標準化し、30年、40年と続く経営ビジョンを持っているからです。
ブルーオーシャン市場で、絶対に勝てるポジション取りをし、誰がやっても売上が伸び続けるしくみが重要なのです。
だから、個人の頑張りは必要ないし、スタープレーヤーも要らないのです。
社内行事はしない
社内行事って、いろいろあり、大きな組織が一体感を出す目的で行われますよね。けどそれって、かなり準備が大変だったりします。
社員同士はよく知った仲だしコミュニケーションの密度も深い、だから「社員行事を一切やめた」そうです。
社内行事の準備から解放された社員は「他の仕事ができるようになって良かった」とのことです。こういうことって考えていても部下から上司に言えないものですよね。
その気持ちを察したのでしょうね。
ランチ会や飲み会は社員の自主的に行うことはあっても会社として行うことなないのだそうです。仕事が終わったら家族や友達とリラックスして時間を使うべきだとはアメリカ的な思考ですね。
経営幹部は極力会社に行かない
会社の中で付加価値を生まない時間をつくる人物は誰でしょうか?
はい!答えは経営者や幹部です(笑)
優秀な経営者や幹部ほど、思いついたことをまわりに言い、そして社員に余計な仕事をつくるんだそうです。
まあ、そういう発想から新たなアイデアは生まれると思うのですが、社員からしたらそのようなことに振り回されたりします。
たとえば、
たまたまエチオピア経済のニュースを見た経営者が、「エチオピアが熱いというが、アパレルは生産しているのか?」と部長に聞く。
部長は忖度して「早速調べます」と言って、自分の部下に「明日までにエチオピアで生産しているアパレル業者についてレポートをまとめてくれないか」と仕事を振る。
部下は自分の仕事をいったん止め、ネットでエチオピアのビジネスをリサーチする。
結果として、エチオピアは関税面でアメリカにもヨーロッパにも有利に輸出できる有望な産地であることがわかる。
でも、会社には差し迫ったニーズはないし、なにしろ遠すぎる。
どうでしょうか?
たまたま耳に入ってきたトレンドをいたずらに興味を持ち部下に要らぬ時間を使わせたのです。
そんなに興味があるなら自分が調べればいいのです。
だからワークマンでは経営者や幹部は出社せず、「現場(店舗)に行っていろいろと発見する」ということにしました。
現場(店舗)で発見したことは、どこかで聞きかじったテーマよりも重要性は高いというわけです。
幹部が思いつきでアイデアを口にしない
先ほども言いましたが、思いつきで社員を振りまわすことほど会社にとってマイナスなことはありません。それは社員がやらなくてもいい仕事に時間を取られるからです。
ワークマンが目指しているのは「誰でもができる経営」です。だから「しない経営」に徹底しているのです。
感度のいい経営者は、ビジネス書を一冊読むたびに新しい事業やアイデアや改革案が浮かびます。それがビジネスに飛躍を持つかもしれません。
けど、ワークマンのように「一つのことを深掘りする」のが得意な会社には有害となります。だから会社全体を見つめ、封印する勇気も必要です。
『ワークマン式「しない経営」』 からの学び
4000億円の空白市場を切り開いた秘密
- 社員のストレスになるようなことはしない
- ワークマンらしくないことはしない
- 価値を生まない無駄なことはしない
「しない会社」が、どのようにブルーオーシャン市場を発見し、客層拡大して業績を上げたのか。
どのように自分の頭で考える社員を育てたのか。
本書の要点は!
本書の要点
- 個人向けの作業服という小さな市場を深化させた
- 自社の強みを考えブルーオーシャン市場を開拓した
- 商品開発と宣伝にワークマンのファンを使いアンバサダーにした
- 今までの常識を変え「しない経営」徹した
ポイントは!
- エクセル経営
- 市場の特性を読み進出先を考える
- 経営者や幹部が出社しない
です。



経営の合理化、働き方改革は、このような小さなことから始めていくべきですね。
『ワークマン式「しない経営」』の感想・まとめ


作業服といういわば競う相手がいない中、事業拡大してきたイメージのあるワークマンですが、舞台裏では、それにあぐらをかかないデーター蓄積に分析、合理化をしてきたからこそ作業服だけにのみならず、すそ野を広げていける企業に成長したのだと思います。
合理化の陰には戸惑う社員の方もいると思いますが、「瓢箪から駒」として風通しが良くなって仕事がしやすくなったのではないでしょうか。
ワークマン戦略についてはテレビの特番などで見たことはありましたが、実際に取り組まれていることは、本書『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』や『ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか』を読むべきですね。
本書は、ジャングル・ファイターとして「知の探索」を続け、すぐに実行してきた土屋哲雄氏と「知の深化」を続け、「しない経営」を実践してきたワークマンが出会い、双方の長所を活かし合いながら「両利きの経営」といった相乗効果を手に入れた方法を知ることができます。
社員みんなが無理なく残業もなく働けて前向きな気持ちになれる。
これがどれほど尊いものでしょうね。
日本は海外に比べ、幸せ満足度の低い国とされています。
このワークマンの取り組みは幸せ満足度を上げる一助になるのではと、わたしは思います。
よろしければ、ぜひ本書を読んでいただきたいものです。
『ワークマン式「しない経営」』の概要


本書の目次
『ワークマン式「しない経営」』
はじめに
第1章 「しない会社」にやってきたジャングル・ファイター
第2章 ワークマン式「第2のブルーオーシャン市場」のつくり方
第3章 「しない経営」が最強の理由
第4章 データ活用ゼロの会社が「エクセル経営」で急成長した秘密
第5章 なぜ「エクセル経営」で社員がぐんぐん成長するのか
第6章 興味こそがやりきる経営のエンジンである
第7章 「両利きの経営」はどうすれば実現できるのか
おわりに
著者の紹介
土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役。
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。
三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。
企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。
本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。
プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。
一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。
2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。


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