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【要約】『売り上げを、減らそう。』「飲食店のブラックな環境を打ち破ろう」働き過ぎない生き方の模索

コウカワシン

こんにちはコウカワシンです。

今回は、中村朱美(なかむら・あけみ)さんの著書『売り上げを、減らそう。』から学ばせていただきます。

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目次

『売り上げを、減らそう。』はどんな本?

『売り上げを、減らそう。』は、ズバリ!「シン・働き改革マニュアル」です。

本書の内容

2021年2月、新型コロナ感染症による緊急事態宣言で飲食店をはじめとした多くの業種で売り上げの低迷が問題化しております。

本当に由々しき事態で、出口の見えない状況に苦しんでいらっしゃるかたは少なくありません。

こんな時、どうすればいいのでしょうか?

時短営業で耐え忍ぶも限界があるのはしかたがないと思います。せめて運営できるだけの売り上げがあればいいのにと思いますね。

で、京都にある食堂が他とは違った経営をしていると知りまして調べてみますと国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋という文字が浮かんできました。

そのお店は、

  • 営業わずか3時間半
  • どんなに売れても100食限定
  • 飲食店でも残業ゼロ

というではありませんか。

おまけに店主の中村朱美(なかむら・あけみ)さんは「日経WOMAN」ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019を受賞されているとのこと。

しかも、佰食屋の運営について書かれたのが本書『売上を、減らそう。 たどりついたのは業績至上主義からの解放』です。

何とも奇妙な題名だと思いませんか?

「売上を、減らそう。」だなんてね。

中村さんは、社員を犠牲にしてまで『負うべき数字』なんてないといわれます。

これはとても興味をそそられましたので学んでみることにしました。

本書のターゲット

本書のターゲットは

『売り上げを、減らそう。』がおすすめな人

  • 飲食店の経営者
  • 飲食店の従業員
  • 企業のトップ
コウカワシン

昨今、注目されている「働き方改革」に意識のある方は参考になるのではないかと思います。

本書のポイントは?

本書の目的は次の通りです。

売上主義をやめ
  ⇓
時短・簡単経営に努め
  ⇓
仕事の満足度を高め
  ⇓
働き過ぎない生き方を得よう

佰食屋とは

佰食屋(ひゃくしょくや)は京都府京都市右京区にある「国産牛ステーキ丼」の専門店です。

店舗は10坪14席。

メニューは、

  • 国産牛ステーキ丼 ¥1,000+tax
  • 国産牛おろしポン酢ステーキ定食 ¥1,100+tax
  • 国産牛100%ハンバーグ定食 ¥1,000+tax(限定20食)

の3つのみ

100食限定のため整理券制にしています。

著者で代表者の中村朱美さんは、専門学校の職員として働かれていましたが、旦那様の「老後は飲食店をやりたい」という夢を「今やろう」と提案。

2012年に「1日100食限定」をコンセプトに「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」を開業されました。

その後、「すき焼き」と「肉寿司」の専門店もオープンし、連日、行列のできる超人気店になりました。

中村さんの取り組みが「ガイアの夜明け」で、取り上げられたのも記憶に新しいですね。

佰食屋が「1日100食」にこだわるわけ

佰食屋は「サービスを極限まで絞ることで売り上げをあげているお店」です。

100食限定とは「それ以上の売り上げを諦める」ということです。

売上をどんどん上げて業績を上げるのが一般的な企業の考え方なのですが、それとは真逆な主義が佰食屋の特徴であります。

佰食屋が「1日100食」にこだわるわけを追うと5つのメリットがありました。

「1日100食」の5つのメリット

  1. 「早く帰れる」はインセンティブ
  2. 「フードロスほぼゼロ化」で経費削減
  3. 「経営が究極に簡単になる」
  4. 「どんな人も即戦力になる」
  5. 「売り上げ至上主義」からやさしい働き方へ

1 「早く帰れる」はインセンティブ

誰に向けてのインセンティブかと言ったら「従業員」です。

「1日100食」売り切ったら営業終了。

ということはパートや正社員にいたるまで「早く帰れる」ということです。

それが魅力的なインセンティブになるのです。

特に土日祝日、お客さんが多ければ多いほど営業終了の時間が早くなるのです。

「まだ空が明るいうちに仕事を終える」

佰食屋では、ふつうなら忙しくてシフトに入りたがらないであろう土日祝日から埋まっていくのだそうです。

だから長時間労働が常態化してる飲食店とは完全に差別化がはかれるといえます。

これが、従業員のモチベーションアップに大きく作用するのです。

2 「フードロスほぼゼロ化」で経費削減

「1日100食」

これを売り切ることでフードロスがほぼないそうです。だから佰食屋には冷凍庫がないのだそうです。

多くの飲食店では、一度になるべく多くの食材(牛肉)を仕入れて、原価率を低く抑えようとします。その牛肉を一度でも冷凍してしまうと、どうしても味が落ちてしまいます。

佰食屋では牛肉を冷凍せず、毎日1日で使い切るぶんしか仕入れません。

「毎日、一定量の牛肉を仕入れる」

それは牛肉の卸業者にとってもうれしいことなのだそうです。だから「いい肉が入りました」と真っ先に教えてくれるそうです。

今、盛んに議論されている「フードロス問題」ですが、佰食屋さんの取り組みは一石投じるものでしょうね。

3 「経営が究極に簡単になる」

佰食屋のメニューは3つ

看板メニューのステーキ丼は、国産牛と国産米、調味料にもこだわり、ソースも自家製で作った特別なものです。これを、ふつうの飲食店で提供しようとすると佰食屋さんの1.5倍の値付けをしないと儲かりません。

「原価率はなんと50%」

これでは大手の飲食店ではマネできません。

1日100食限定、ひたすらに美味しいメニューを、圧倒的なパフォーマンスで、お客様に心から満足していただく

これはものすごい「商品力」だと思いませんか?

佰食屋の商品開発4つの条件というのがあります。

佰食屋の商品開発4つの条件

  1. 月に1回、自分がその金額を出してでも行きたいお店かどうか
  2. 家庭で再現できないもの
  3. 大手チェーンに参入されないもの
  4. みんなのごちそうであること

これは中村氏の「主婦の目線」が判断基準になります。

そのギリギリのラインが口コミとして宣伝され広まっていくのです。

だから佰食屋は「宣伝広告費0円」、その分を原価に上乗せできるのです。

4 「どんな人も即戦力になる」

飲食店に限らずどの業界でも人材不足に悩まされてます。特に売り上げに貢献してくれそうな優秀な人の確保は永遠の課題ですよね。

けど、佰食屋では真逆で、優秀で自ら売上アップの提案をしてくるような人は「他所への就職」をすすめるのだそうです。

基本的に求人はハローワークのみ。

採用基準は、「今いる従業員たちと合う人」なのだそうです。これだったらぐーっとハードルが低いですよね。

なぜそのようなことが可能かと言えば、

  • メニューはたった3つ
  • 厨房でも接客でもマニュアルは必要ないしくみ

というシンプルさが「誰でも即戦力」という状況を作り出し働くことができるのです。

5 「売り上げ至上主義」からやさしい働き方へ

ここまでくれば佰食屋の実態が見えてきますよね。

つまり「従業員にやさしい」企業なんです。

ふつうなら売上アップのために従業員を長時間でしばる経営をしがちですが、あえてそれをしない。

100食売り切り、予約などの受付はしない、3種類のみのメニュー、京都という土地柄、外国のお客様に対しては4か国語のメニューを用意し指さしだけでも通じる仕組み

どれをとっても従業員ファーストですよね。

なんと、百貨店と給与が変わらないのに5時間も早く帰れるというのが従業員にとってありがたいことなんですよ。

そこで疑問に思った方もいますよね。

そう!「100食限定って儲かるの?」ってことです。

実は税理士に呆れられるほど人件費にお金をかけてるんですよ。つまり「ギリギリでやっている」が本当のところです。いまのところは旦那様が別に担っている不動産部門で補っているということです。

別の儲け口か~この手があったか~ですが、佰食屋のスタンスは「倒産さえしなければいい、会社として存続できればいい」なのです。

では、「人件費を下げればいいのでは?」と思われますよね。

飲食店を経営するうえで大切な指標に「FLコスト」というのがあります。

FLコスト

「FLコスト」とは、F「Food(原価・材料費)」、L「Labor(人件費)」を合わせたもの。
そして、FLコストを売り上げで割ったFL比率約50~55%に抑えるのが飲食店経営の鉄則と言われています。

佰食屋のFL比率は80%、残りの20%をなるべく抑えるための努力をして、従業員満足度を高める・・・なかなかできることではありませんよね。

佰食屋の取り組み

売上を目標にしない企業は「みな」になにを課しているか?

佰食屋にはクレド」と呼ぶ行動規範・信条があります。

「会社は明日の責任を。みんなは今日の責任を。」

つまり、「会社はこれからの集客や広報に責任を持ち、お客様にたくさん来ていただく努力をし、みんなを大切にします」と宣言しているのです。

それに対して、従業員には、「みんなはお客様が限られた時間の中で最大限満足していただけるよう、接客・調理・おもてなしの努力をし、お客様を大切にします」と仕事に取り組む姿勢を促しています。

それから、佰食屋の取り組みはお客さんにまで及びます。

席が14席しかないため、お客様へのお願いとして、「席を30分で代わっていただく」ことにしています。

それがクレームになったこともありますが、お客様の理解と協力を得ているとのことです。

佰食屋の試練

このような取り組みで他店ではうらやましがるようなしくみを作ってきた佰食屋ですが、試練がありました。

2018年6月18日の大阪府北部地震と同年7月の西日本豪雨です。

大阪府北部地震では、京都市内も震度5強を記録し、これにより建物の倒壊、交通機関は運休し、その被害は甚大でした。

観光業に大きく影響し宿泊キャンセルなどで観光客が激減。

続いて、西日本を襲った豪雨では京都市内も土砂崩れや河川氾濫、浸水被害が相次ぎました。

当然、佰食屋にも影響があり来る日も来る日も50食ほどしか売れず、ひどいときは30食ほど。

とどめを刺すがごとく台風21号の通過で関西国際空港が閉鎖されたのは記憶に新しいですね。

6月の地震から始まり9月の台風により3カ月連続での赤字となりました。

しかたなく3店舗中1店舗を閉鎖することも考えましたが、それでは自分がクレドを破ってしまう。

そこで考えたのが「さらに売り上げを減らす」でした。

「1日100食」を「2分の1」にする。

もちろん役員賞与の放棄、1年さかのぼっての中村夫婦の年収を返上しました。

そして肉寿司の原価率も下げました。

こうした努力でなんとか1店舗も閉店させることなく従業員の雇用を守り、危機を乗り越えるしなやかさも手に入れました。

また、「1日100食」も復活。

働ける喜びを身に染みて実感されたそうです。

「災害はこれからも毎年やってくる」として想定し、人口も減り、消費者の使えるお金も抑制されている今。

この現状に左右されない経営も模索中で、ひとつの答えとして「佰食屋1/2」という1日50食売り切りのお店をオープンさせました。

たった2人のスタッフでも回せる規模のお店としてフランチャイズ化も視野に入れてます。

実際に1号店では中村さん夫婦が営業されているとのこと。

新しいことにチャレンジされる意気込みに応援したくなりますね。

本書からの学び

『売り上げを、減らそう。』は新しい経営戦略

長時間営業で低賃金のイメージある飲食店業界。
2021年2月現在、コロナ禍で時短営業を余儀なくされ、さらに収益悪化が見込まれています。
そんな中において収益を上げることばかりに重きを置いていたことに一石を投じる経営手法ではないでしょうか?

本書の要点は

本書の要点

  • 営業時間の短縮
  • 他ではマネできない商品開発
  • あえて優秀な人を取らない人材採用
  • 従業員にやさしい働き方


ポイントは

  • 1日100食売り切り
  • 商品の原価率50%越え
  • 今いる従業員と合う人のみ採用
  • 従業員との間にクレドを交わし安心して働ける職場づくり

です。

コウカワシン

以上、大きな学びとなりました。

『売り上げを、減らそう。』の感想・まとめ

現在の日本ではどの業種も売上アップ、拡大路線といった手法で大きくなった会社がたくさんあります。

わたしの近所のお店でも大手チェーン店が展開し、コンビニなどは24時間営業をされています。

それを見るたびに「よく人材を確保できるものだ」と感心していましたが、「わたしだったら真夜中の仕事は耐えられない」という印象があります。

実際、最近では大手のコンビニ運営会社とそのフランチャイズ契約している店主さんとの間で「24時間営業」をめぐっての裁判は記憶に新しいですね。

つまり拡大路線に限界が来ている状態なのだと思います。

人口も減っていっている日本、フードロスなどの問題もあります。

この事態を改善するには、佰食屋の中村氏的な考えがあってもいいのではないかという感想を持ちました。

そして優れた商品開発の基、どのような人でも安心して働ける環境はこれから考えていかなくてはいけない課題ですね。

本書は著者で経営者の中村朱美さんの体験談がふんだんに記されていて、おまけに従業員の方の声も掲載されています。

つまり、佰食屋で働く人の生の声に触れられる生きたビジネス書であるといえます。

飲食店はのみならず、他業種でも応用可能なものもあるのではないでしょうか?

興味のある方はぜひ本書を手に取ってください。

『売り上げを、減らそう。』の概要

本書の目次

『売り上げを、減らそう。』

はじめに
第1章 超ホワイト企業「佰食屋」はどのようにして生まれたか
第2章 100食という「制約」が生んだ5つのすごいメリット
第3章 佰食屋の労働とお金のリアルな実態
第4章 売上を目標にしない企業は社員になにを課しているのか?
第5章 佰食屋1/2働き方のフランチャイズへ

著者の紹介

中村 朱美(なかむら あけみ)

1984年生まれ、京都府出身。

専門学校の職員として勤務後、2012年に「1日100食限定」をコンセプトに「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」を開業。

その後、「すき焼き」と「肉寿司」の専門店をオープン。

連日行列のできる超・人気店となったにもかかわらず「残業ゼロ」を実現した飲食店として注目を集める。

また、シングルマザーや高齢者をはじめ多様な人材の雇用を促進する取り組みが評価され、2017年に「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出。

2019年には日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞(最優秀賞)を受賞。

同年、全国に「働き方のフランチャイズ」を広めるため、 100食限定をさらに進化させた「佰食屋1/2」をオープン。

従来の業績至上主義とは真逆のビジネスモデルを実現させた経営者として、最も注目される起業家の一人。

『売り上げを、減らそう。』を聴こう!

「聴く読書」ってご存知な方もいらっしゃいますよね。
1日何時間も存在する「耳のスキマ時間」が読書時間に変わります。

音楽を聴くように気軽に人気のビジネス書を楽しめます。語学や資格試験の勉強にも最適です。

文芸作品は、朗読からドラマ形式の作品まで、幅広い形式で楽しめる人気のジャンルとなっています。
『売り上げを、減らそう。』はaudiobook.jpで聴くことができます。

コウカワシン

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

四国在住。
ミニマリスト。趣味は映画観賞と音楽鑑賞、読書、野球観戦。
映画は特に好き嫌いなくほとんどのジャンルーを観ます。音楽はジャズとクラシックが大好きです。読書は歴史書が好きでよく読みます。

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