
こんにちはコウカワシンです。
今回は、伊藤羊一(いとう・よういち)さんの著書『1分で話せ』から学ばせていただきます。
『1分で話せ』はどんな本?


『1分で話せ』は、ズバリ!「要点を押さえて短く説明できるスキル」を磨く本です。
本書の内容
ビジネスマンであれば、商談や会議のプレゼン、発言、など多岐にわたって、「人と対話」しますよね。
そんなとき、相手に「よくわからない」って言われたことはありませんか?
実は、私も自分では内容を十分にわかっているのに話をうまくまとめられずに相手にうまく伝えられなかった経験があります。
そこで、相手に伝わらない原因は何かと考えていたら、「自分が伝えたい事を話せば、相手は話を聞いてくれる」と勘違いしていたからでした。
実は、人って長々と話をしても、相手の話の8割がたは聞いていないし、理解もしていないそうなんです。
それを知ったうえで、相手に伝わる技術を使わなくてはいけません。
それをおしえてくれるのが本書、『1分で話せ』です。
著者の伊藤さんは「1分でまとまらない話は、結局何時間かけて話しても伝わらない」裏を返せば、「どんな話でも1分で伝えることはできる」と説きます。
これは、ビジネスマンにとって有効なスキルが学べると感じました。
本書のターゲット
『1分で話せ』のターゲットは、



なんといっても組織で働くビジネスパーソンですね。
それから、指導者やセールスマンなど人に対して説明することを仕事にしている方も役立つと思います。
『1分で話せ』の要点は?


「伝える」ための基本事項
うまいプレゼンより、「動いてなんぼ」
内容に自信があるプレゼンをしたのにうまく伝わらないという経験をされた方はいらっしゃるでしょうか?
そんな場合、注意点として心得ておきたいのは
- 人はあなたの話の80%は聞いてない
- 「1分」で話す
- 「右脳」と「左脳」に働きかける
です。
これには理由があります。
たとえ、内容が濃いプレゼンでも人は長々と話をされればされるほど内容が頭に入りません。話は短ければ短いほど頭に残るのです。
目安として1分で説明できれば相手の理解状況も変わってくるはずです。目安が1分でも話す内容には戦略があります。「右脳」と「左脳」に働きかけるのです。
ビジネスですから、「議論の筋道」(左脳)を理解してもらうことは大事です。けど、つらつらと「議論の筋道」だけ話されると相手には響かないことが多いのです。
人間の心に訴えるにはやはり「情熱」(右脳)なのです。つまり人は、左脳で理解し、右脳で感じて、やっと動けるのです。プレゼンでは、理屈だけでなく「プレゼン力」(人に動いてもらう力)が必要なのです。
その「人を動かす」ためには、1分で話せるように話を組み立てて、伝える必要があるのです。
相手とは誰か?(聞き手をイメージする)
まず「何のためにプレゼンするのか」を明確にしなければなりません。
さらに言語化すると、「(どこで)だれに、何を、どうしてもらいたい」という構造になります。ポイントは「誰に」伝えるのかを考えることです。
具体的には、
- どういう立場にいるのか
- どんなことに興味があるのか
- どんなことをこのプレゼンに何を求めているのか
- 専門的な要素についてどのくらい理解できるか
- 何をどんな風に言うとネガティブな反応をするのか
といったところです。このように、聞き手のイメージができれば、その人たちの反応を想像しながら準備を進めることができます。
話す内容、言葉遣い、話し合いなど、その「聞き手のイメージ」に基づいて伝える内容を作り上げていくのです。
ゴールは何か(ゴールを明確にする)
「何のためにプレゼンするのか」「聞き手はどんなイメージか」を考え、最終目的の「ゴールは何か」を考えなければなりません。
ゴールとは、プレゼンを通して、「聞き手をどのような状態に持っていくか」「どこをプレゼンのゴールにするのか」を言語化します。
具体的には、
- 聞き手が賛成にせよ反対にせよ、何らかの意見を表明してくれればいいのか
- 聞き手が賛成してくれたらいいのか
- 聞き手に動いてもらう必要があるのか
というように、聞き手が「どこまでやればいいのか」を決めるのです。つまり、すべてのプレゼンは「ゴールを達成するため」にあるのです。
だから、聞き手のことを考え、聞き手をどういう状態にもっていきたいかを見定めたうえで、ゴールを達成するために何をすればいいか、何を伝えればいいかを逆算で考えていくのです。
なお、聞き手に動いてもらう必要がある場合、「理解してもらう」までをゴールにしてはいけません。
たとえば、「他部署のサポートを得る」がゴールの場合、その他部署に働きかけてサポートしてほしいという希望まで盛り込まなければなりません。
「営業部の〇〇さんにかけあってほしい」など、「理解した上で何をしてほしいのか」を伝えるのが必要です。
また、「きれいに話すこと」も、プレゼンのゴールではありません。何かしらの形で「相手を動かす」ことがゴールなのです。「動かしてなんぼ」の言葉のもと、相手を動かすためにできることは、何でもやるべきです。
例えば、
- プレゼンに至る前の根回し。
- 席配置を工夫する。
- プレゼン直前の軽い挨拶。
- プレゼン後のフォロー。
といった前後のアクションも、トータルで設計しなければなりません。とにかく「相手が動くために、できることすべてをやりきる」ことです。
1分で伝える
ピラミッドで主張と根拠を整理する
話には「結論」と「根拠」があります。
結論は1つだが、根拠は複数あり、結論を一番上に、根拠をその下に並べると、ピラミッドのような形になります。このピラミッドがしっかり組めていれば、話が不必要に長くなったり、伝わらなくなったりすることはありません。


「これが結論(主張)です。」
「理由(根拠)はAでBでCだからです。」
というだけで話は伝わります。
「1分で考えよ」の根幹はここにあります。結論と根拠のセットを構築し、説得力を増す伝え方ができます。
根拠は3つ
結論を言うからには、根拠が必ずあります。
しかし根拠を並べすぎても、印象に残りません。根拠オーソドックスには3つを目安にして用意するといいでしょう。3つの根拠は、結論を言った後に述べるのがよいと思います。
さらに、根拠を述べるときに「理由は3点あります」と指を3本出して伝えると、聞き手はメモをとり始めます。
プレゼンとは、相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を、『移植していく』作業なのです。自分の頭の中にしっかりと「結論」「3つの根拠」という骨組みを作り、相手に伝えていけばいいのです。
意味がつながっていれば「論理的」
結論と根拠の骨組みができていれば、1分で話せるようになります。
これをより伝わりやすくするためには、その骨組みを「論理的」に作ることが必要です。つまり、意味がつながっていれば「論理的」なのです。
「結論」と「根拠」は、意味がつながっている必要があります。たとえば、「雨が降りそうだから、外出しない」のような感じです。
では、「雨が降っているからキャンディーをなめよう」ではどうでしょうか?これでは意味不明ですよね。
「結論と根拠」をいう時は、聞いている人にとって意味がつながっていることが大事です。
なお、意味がつながっているかどうかは声に出して読んでみるとよいです。そしてできれば、周囲にも聞いてみるなどして、意味がつながっているかどうかを確認するのがよいと思います。
1分でその気になってもらう
相手の右脳を刺激してイメージを想像させる
論理的であることは重要ですが、正しいことを言うだけでは人は動きません。動いてもらおうとするのであれば、聞き手の感情を揺さぶる必要があります。そのためには、聞き手の想像力を刺激して、頭の中にイメージを作らせることが重要です。
たとえば、マンションを売る営業マンのセリフとして、どちらが伝わるでしょうか?
- A案は、「駅から3分。公園も近い閑静な住宅街の物件です。」
- B案は、「木や花の多い公園が近いので、小さいお子さんがいらしたら、喜びますよ。」
B案であれば、自分自身が、「朝、はつらつと自宅を出て、駅に向かう自分のイメージ」や「奥さんが子どもと、敷地内にある公園で、笑顔で遊んでいるイメージ」などが頭の中に生まれ、「ああ、このマンション、買いたいな」と思うでしょうね。
イメージを聞き手に想像させる術は、論理的に「駅からマンションへの道のりはこんな感じか」「敷地の中の公園は自由に遊べるんだ」などの事実を認識させた上で、そこに自分をあてはめて考えてもらえるかどうかです。
伝える側は、そこに自分をあてはめてもらえるように、想像が広がるのをサポートすればよいのです。
聞き手の頭の中でイメージを膨らませる2つのアプローチ
まず大事なことは、前項でもお話しした通り、
- 聞き手の頭の中にイメージを描いてもらう
- 聞き手にイメージに入ってきてもらう
この2つのアプローチです。イメージしてもらうために最もシンプルな方法は、ビジュアルを見せることです。言葉で説明するよりも、ビジュアルのほうが断然わかりやすいし、写真や絵、動画を使えるのであれば、どんどん使うことです。
先ほどのマンションの例でいえば、ちらしやホームページで、マンションの外観や施設の写真などを見せると効果があります。ビジュアルがない場合は、「たとえば」と具体的な事例を示しイメージしてもらいましょう。
そして聞き手に、イメージの中に入り込んできてもらうために「想像してみてください」「あなたがもしこの世界を経験するとしたらどうでしょう」と一言添えると、聞き手がイメージの中に入り込んできてくれるだけでなく、自分の頭の中でイメージを膨らませてくれます。
このように、論理的に左脳に、イメージで右脳に働きかけることで、聞き手を動かすことができるようになります。
実践編
突然意見を求められたら
会議などで急に意見を求められ頭が真っ白になることってないですか?
そんな時、何も言えなくなってしまう人は多いと思います。そのときに大事なのは、相手が何を質問しているのかを考えることです。
具体的には、まず落ち着いて相手の質問を聞く。その質問に対して、
- Yes/Noで答えればいいのか
- アイデアを聞かれているのか
- 懸念点を答えればいいのか
をとらえることです。その時点では、まだ答えを考える必要はありません。聞かれたことを把握し、どのような形式で答えるのかを整理することが肝心です。
次に、答えのピラミッドを作ります。
結論を決め、理由を3点考え、具体例を最低1つ入れる感じでOKです。
「YES/NO」を聞かれているならば、最初に「YES」か「NO」かを伝え、その理由と具体例をあげます。アイデアを聞かれているならば、アイデアを伝えた上で、理由と具体例を続けましょう。
意見を言うと、否定する上司に対しては?
なかには、意見を言うとすぐに否定する上司もいますよね。そういう上司には、あえて「ツッコミどころ」を用意しましょう。
たとえば、主張と根拠のピラミッドの「根拠」の中に、あえていい加減なものを1つ入れてみるとかです。すると、上司はすぐさまそこを指摘する予想が立ちます。
そこですかさず「おっしゃる通りですよね!」と言いながら、もともとあった根拠に入れ替えるのです。こうすれば、相手を立てつつ、自分の思った通りの方向で進めていきやすくなるのではないでしょうか。
まるで「相手を操縦している」かのようですが、プレゼンは相手を動かすことが目的です。こうしたテクニックを使うのも、ひとつの方法だといえます。
自分の話を聞いてくれているような気がしない
聞き手が自分の話に集中していないような気がする時がある人は、多いのではないでしょうか?
その時は、自分の声の大きさを見直してみるといいかもしれません。なぜかというと、
- 伝わらない
- わかってくれない
- 相手がきょとんとしている
原因の7割ほどは声が小さいということだからです。それと声のトーンも重要です。声のトーンが最初から最後まで同じではいけません。
「大事なことは大きな声で言う」という・・・それもそうなのですが、一つひとつの表現に意味合いを込めることが重要なのです。
声を「ただ大きくしても意味はない」、自分が発する言葉の一つ一つにどんな意味を込めたいかを明確にイメージしながら話すと、自然とトーンが変わってきます。
たとえば、「皆さん」と呼びかけるときも、それはどこにいる誰なのかをはっきりイメージすると、言い方が変わってきます。
「対話」を意識しよう
プレゼンなどで気をつけることに、聞き手1人ひとりに向かってきちんと話すことを意識しなければいけません。会場という「空間」や地面に向けて話すのではなく、1人ひとりに声を届けようとトライすることが大事なのです。
「伝える力」を身につけるには練習しかありません。
プレゼンの練習をしないビジネスパーソンは意外に多いそうです。ミュージシャンや俳優のように、繰り返し練習するべきだと思います。
「何度も練習し、録音し、使う言葉や声のトーンを変えて、伝え方を工夫する。」
色々試し、誰かに聞いてもらってフィードバックを受けるのが効果的な練習法です。
本書からの学び
本書についての学びをまとめました。
『1分で話せ』のポイント
- プレゼンの目的は「人を動かす」ことである。「理解してもらう」ことや「きれいに話す」ことはゴールではない。
- 聞き手をイメージし、その人たちの反応を想像する。気をつけることは「話す内容」や「言葉遣い」、「話し方」などを考えていくことである。
- プレゼンにおける「結論」は、「相手をどこに動かすか」である。
- プレゼンのロジックは1つの「結論」、それを支える3つの「根拠」のピラミッドで作る。
- 「ロジック」で左脳、「イメージ」で右脳に働きかけることで、相手の気持ちを動かす。
それについて気をつけることは、
- 聞き手を意識する
- 話を短くする
- 声のトーンを変える
- 主張と根拠(3つほど)
- ゴールを明確にする
- 聞き手にイメージを想像させる
- 対話を意識する
です。
『1分で話せ』の感想・まとめ


わたしは、話をうまくまとめられずに、「あなたの話はわかりづらい」といわれたことがあります。ムダな言葉が多すぎてうまく伝わらなかったのだと思います。
本書は非常に実用的で理解しやすかったです。
主にプレゼンのことについて書かれてますが、マンツーマンの対話でもかなり応用できるテクニックだと思います。常に手に取れるところに置き、繰り返し見返していきたい本でした。
本書のセールスポイントは「伝わりやすい話し方のノウハウ書」ということです。
特に良い点は、たくさんの例が載っていること。簡単に抽象化するのは内容をシンプルにできるメリットがありますが、「たとえば~」的な話は、色々と応用できるので重宝します。
内容的に「プレゼン」を行う人などにスポットを当ててますが、普通の日常会話においても「簡潔で伝わりやすく、やんわりと誘導する術」を身につけるには最適な本だと思います。
ぜひ多くの人に読んでいただきたい本ですね。
『1分で話せ』の概要


本書の目次
『1分で話せ』
序章 そもそも「伝える」ために考えておくべきこと
第1章 「伝える」ための基本事情
第2章 1分で伝える
第3章 相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう
第4章 1分でその気になってもらう
第5章 1分で動いてもらう
第6章 「伝え方」のパターンを知っておこう
第7章 実践編
著者の紹介
伊藤羊一(いとう・よういち)
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/株式会社ウェイウェイ 代表取締役/グロービス経営大学院 客員教授。
東京大学経済学部卒。
1990年日本興業銀行入行、企業金融、債券流動化、企業再生支援などに従事。
2003年株式会社プラスに転じ、ジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、マーケティング、事業再編・再生などを担当後、執行役員マーケティング本部長、ヴァイスプレジデントを歴任、経営と新規事業開発に携わる。
2015年4月ヤフーに転じ、現在Zアカデミア学長、Yahoo!アカデミア学長としてZホールディングス、ヤフーの次世代リーダー開発を行なう。
またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行なう。若い世代のアントレプレナーシップ醸成のために2021年4月より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部を開設、学部長に就任予定。
代表作『1分で話せ』(SBクリエイティブ)は50万部を超えるベストセラーに。その他『0秒で動け』『1行書くだけ日記』(ともにSBクリエイティブ)など。


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