
こんにちはコウカワシンです。
今回は、コリン・パウエルさんの著書『リーダーを目指す人の心得』から学ばせていただきます。
『リーダーを目指す人の心得』はどんな本?


『リーダーを目指す人の心得』は、ズバリ!「リーダーになるための本」です。
本書の内容
本書の著者コリン・パウエルさんは、1993年の湾岸戦争でアメリカ軍制服トップ統合参謀本部議長として指揮を執り、2000年にジョージ・W・ブッシュ大統領のもとアフリカ系アメリカ人初の国務長官に任命された方です。
そのパウエルさんが書いた『リーダーを目指す人の心得』を菅義偉元首相が愛読書としていらっしゃると聞き、「これは読まんといかんだろ」で拝読させていただきました。
さすがに実直な軍人さんが書かれた本書の折り目正しい姿勢にたいへん学びがありました。
今回は本書について書かせていただきます。
本書のターゲット
『リーダーを目指す人の心得』のターゲット
- 経営者
- 組織のトップ
- リーダーのみならず、組織に身を置くすべてのビジネスパーソン



ですが、後に出てくる「コリン・パウエルのルール」を見てみますと、人間が人間らしく生きるための処世術を説いていると感じます。つまり、みんな読んだ方がいいよ的な本です。
『リーダーを目指す人の心得』の要点は?


それでは本書のポイントを押さえていきます。
コリン・パウエルのルール
コリン・パウエルのルール(自戒13ヵ条)
- なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。
- まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
- 自分の人格と意見を混同してはならない。さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
- やればできる。
- 選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
- 優れた決断を問題で曇らせてはならない。
- 他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
- 小さなことをチェックすべし。
- 功績は分けあう。
- 冷静であれ。親切であれ。
- ビジョンを持て。一歩先を要求しろ。
- 恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
- 楽観的でありつづければ力が倍増する。
それでは、この「コリン・パウエルのルール(自戒13ヵ条)」から抜粋して紹介します。
なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。
これは心構えの問題であって予測ではないからだ。私は、状況がどれほど厳しいときも自信を失わず、楽観的な姿勢を保つように心がけてきた。
これはただ単に楽観視してるわけではないんですよね。何をするにも心構えがないと不測の事態に備えられないとする「覚悟」の表れだと思います。
厳しい会議や不愉快な事態、敵対的な記者会見、情け容赦ない連邦議会公聴会などの修羅場には周到な準備をして臨まないといけませんが、その仕上げとしてパウエル氏は洗面所で手と顔を洗い、鏡の中の自分に「さぁ、始めようか」とつぶやくそうです。



パウエル氏は「かなわないことはあってもあきらめはしない。陸軍士官にできないことはないのだ。」と。誇り高い方ですね。
まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
誰でも怒る。怒りは当たり前でまっとうな感情だ。子どもに対しても、連れ合いに対しても、親友に対しても、そして、敵に対しても怒る。ただ、怒ったままはよくないと私は思う。
第2次湾岸戦争が始まるちょっと前(2003年初頭)に国連安全保障理事会で大量破壊兵器問題の取り扱いで当時の議長であるフランスのドミニク・ド・ビルパン外相と意見が合わず一時敵対しました。
でも、イラクのフセイン政権が倒れて混乱するイラクに秩序を取り戻し、再建を進めるためにドミニク・ド・ビルパン外相はアメリカを支持してくれたり、ハイチ危機の時にも尽力してくれたりとまさに「昨日の敵は今日の友」としての美談があったそうです。
一時の怒りの感情で関係悪化が進み断交ということになれば長年にかけて築いてきた両国の友好関係が切れてしまいます。
考えてみれば普通に友達同士でもケンカしますよね。でも仲直りできる・・・個人間でもそうなのですから国同士の意見のぶつかり合いはあって当然。でもそこを乗り越えることが大事なのだということです。



パウエル氏は怒ったら、さっと怒りを乗り越え、自制心を失わないように心がけているそうです。
自分の人格と意見を混同してはならない。さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
自分の立論に問題があったと認めても、それが人格に問題があったことを意味しないようにしろということだ。
パウエル氏は「私に反論しろ。心の底から反論しろ。自分が正しく、私がまちがった道を選んでいると私に納得させろ。それが君たちの義務だ。」と部下に促しました。
根底にあるのは「忠勤とはしっかりと反論することであり、また、きちんと実行することである。意思決定とは君たち自身についておこなうものでもなければ君たちの人格についておこなうものでもない。意思決定とは、情報をすべて集め、分析し、適切な解答を導きだそうとするものだ。」と説きました。
パウエル氏の指示を、とても上手に守った部下にポール・ビニー・ケリー大佐という方がいらして激論を交わし合うもパウエル氏の意見を聞き、引き下がり、翌日には代替案を持ちパウエル氏の首を縦に振らすということをやってのけていたそうです。
これはお互いに「信頼関係」があったからでしょうね。実際、パウエル氏が国務長官の時にポール・ビニー・ケリー氏を立法担当国務次官補にしたそうです。



パウエル氏の実直さを物語るエピソードですね。部下であろうと適切な意思決定のためには対等な関係になる・・・なかなかできないことです。
やればできる。
やってもできないかもしれないが、それでもできると信じてやりはじめ、無理だという現実や分析が積み上がるまでやることが大事なのだ。なにをする場合でも、前向きな姿勢で熱心におこなうこと。できない理由ばかりを探してはならない。
パウエル氏は、このことと同時に悲観的な見方をする人や、根拠をもって反対意見を示してくれる人を遠ざけてもいけないといいます。「やればできる」と「必ずできる」が違うことも事実なのですから。
「やればできる」≠「必ずできる」ということですね。
でも何事も経験しないと分からないことです。



とにかくやってみる。真剣に取り組みデーターを取ることが大事ということですね。
選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
「あわてて物事を決めないこと。もちろん、時と場合によっては、急いで結論を出さなければならないこともある。」
「選択をまちがえた場合、あとから訂正できることもあるが、訂正できない事もある。」
パウエル氏は、時間がない中でもしっかり検討することの大事さを説いています。
選んだ結果は自分で引き受けなければいけません。選択を誤ると訂正できない事があるからです。



よく考えて結論を出すことが大事ですよね。取り返しがつかないことが起きないように。
他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
軍隊では、「自分の隊がしたこともしなかったことも、また、自分がしたこともしなかったことも、すべてに責任を負え」と教えられる。最終責任を自分が負わなければならないのだから、周囲の圧力や望みに流されるのではなく、自分の判断で選択しろ、と。
自分ひとりで決めろという話ではない。助言は求めるべきだ。
ただし、気をつけないといけないことがあるとパウエル氏は言います。
「あなたはこうするべき」とアドバイスしてくれる助言者の中には、その助言者にとって都合のよい方向に誘導してくる人もいて、事実に基づく自分の直感が一番大事であることを忘れてはいけないと説きます。
国務省の仕事が終わった後に数社の金融機関から良い待遇での役職の話がきたり、大統領選挙出馬依頼の話がきたりしても自分の意にそわないことには靡かないパウエル氏のまさに「他人に自分の道を選ばせてもいけない」という言葉通りの意志の固さを感じます。



他人に、助言を受けるのはいいが、言いなりになってはいけない、最終決断は自分がする。
とても心に染みる教訓です。
冷静であれ。親切であれ。
軍であれ企業であれ、「戦いの熱気」に包まれている場所では、冷静さと同じように親切心も部下の安心と信頼につながる。親切心は、尊敬しあうという形で自分と他人をつないでくれる。部下のことを考え、親切な態度で彼らに接すれば、部下もリーダーのことを考えて動いてくれる。
混乱した状況で適切な決断や先々までの効果のある決断が下せる人はまずいません。状況が厳しくなるほど皆、興奮して冷静ではいられません。
そのような時、パウエル氏は「冷静ゾーン」を作り、あわてず急ぐように心がけているそうです。冷静沈着であるから秩序が維持される、リーダーは健全な感情のゾーンを持つ努力をするべきだと説きます。
それは他人に対する親切心にもつながり、特に部下との信頼関係も同時に築けるということです。



アドラー心理学の「他人を尊敬する」ですね。リーダーに限らず大事なことだと思います。
恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
「恐れは自然な感情だ。それ自体が大きな問題というわけではない。」「恐れに対する準備を整え、直面したら恐れをコントロールしよう。恐れにコントロールされてはならない。恐れにコントロールされる人物にリーダーの資格はない。」
反対ばかりする人は、別の意味で実現不可能な夢を追っていると言える。彼らは恐れ、皮肉な見方をしているだけで、なにかを前に進めることがないからだ。悲観論者は進歩を殺す。
パウエル氏は、反対ばかりする人の言葉はさまざまな意見のひとつとして参考にとどめるべきで、耳を傾けるべき人から話を聞き、最後は恐れをおさえて直感に従うことを説いてます。
そうして、一人ひとりが、抜け目のない現実主義者になる努力をしないといけないとも言われています。



ベトナム戦争当時、銃撃を受けた時の恐怖を語れていますが、部隊を率いるリーダーとしての振る舞いは部下に与える影響が大きいのだなあと感じました。
これも定めなのでしょうけど、恐れを責任によってコントロールされたのではないかと感じました。
己を知り、自分らしく生きる
常にベストを尽くせ。見る人は見ている。
若者に対し、仕事の99%は尊いものだと力説した。下劣な仕事など、そうないのだと、どのような仕事でも学びはあるし、どのような仕事でも成長し、輝くことができる。
報酬は受け取るものではなく、勝ち取れ。常にベストを尽くせ、誰も見ていなくても、自分は必ず見ている。自分をがっかりさせるな。
若い時に家具屋さんやトラック運転手、ペプシコーラの工場勤めを経験したパウエル氏。とにかくよく働いたそうです。これは働き者で知られるジャマイカからの移民だったご両親からの受け継いだ性質だそうです。
そのご両親は「ベストを尽くせ。ベストさえ尽くせば結果は問わない。だが、ベストを尽くさないのはいかん。」という方針で、これは後の軍隊生活、国務長官時代においても貫かれた姿勢ということです。



何事にもベストを尽くす。家具屋さんのオーナー、ペプシ工場の現場監督などからひたむきに従事する姿を評価され、軍隊、国務長官時代においてもベストを尽くし能力を発揮し評価を受ける。
どのような仕事でも学びがあり自分が成長し輝くことができる。
他人の評価ももちろん大事だけど自分に嘘をつかないことが大事なんですよね。
仕事バカになるな。
仕事バカは、夜遅くまで職場に残る。週末も出勤してしまう。朝は、交通情報担当のテレビアナウンサーかというほど早い時間に出勤する。-彼が必要とする関連業務が滞りなくできるように、また、彼と同じくらい仕事をがんばっていると示すため、何十人ものスタッフが同じ時間に出勤しなければならなくなると気づきもせずに。
仕事はひとりでするものではありません。
自分の仕事は必ず誰かに影響を与えているということを自覚しなければならないのと同時に、仕事バカにならず、やらなければならない仕事以外は普通の時間で仕事を切り上げ、家族のためや自身のリフレッシュのために時間を使うべきとパウエル氏は言います。



パウエル氏は古いボルボを修理するのが大好きだそうで、週末に用事がある時は修理しているボルボまで訪ねていけば会えたそうです。
これがパウエル氏の一番のリフレッシュ法なんですね。
人を動かす
部下を信じる
新しい組織に着任したら、信じてはならない確たる証拠がないかぎり、まずは、そこにいる人を信じるべきだと私は考えている。こちらが信頼すれば、相手も信頼を返してくれる。互いの信頼は時間がたつほど深くなっていく。私がうまくやれるようにと一生懸命に働いてくれる。恥をかかせないようにと私を守ってくれる。部下が面倒をみてくれるのだ。
パウエル氏は、リーダーがまずチーム内に信頼関係を築くことを念頭に動かなければならないと説きます。
リーダー同士の信頼、部下同志の信頼、そしてリーダーと部下の間の信頼を築き、そのような信頼は、他人を信頼する無私(私心のない)のリーダーからしか生まれないと言います。



肩をいからせ、威嚇しながら登場するようなリーダーは相手に不安を与え、警戒されるだけです。そのような人はどこかで足元をすくわれることになるでしょうね。
部下に尊敬されようとするな、まず部下を尊敬せよ。
リーダーは、部下をよく知り、尊敬すること、また、先頭に立ち、自分の能力を示すことによって部下から信頼を勝ち取る。ただし、一定の距離を保ち、近づきすぎてはならない。部下が求めるのは無私なリーダーであって、利己的なリーダーではない。またリーダーたるもの無私でなければならず、利己的であってはならない。
パウエル氏は他にも「厳しいが公正であり、職権を乱用しない。みずから手本を示すのはもちろん、自分たちも手本になろうと部下たちに思わせる。部下は、そういうリーダーを求めている。」と言ってます。



部下のことを知り尊敬し、そしてなによりも部下のことを思っている上司が尊敬されないはずはありませんよね。
情報戦を制する
ハードウェアが変わるたびに、考え方を変えろ
「外交官は情報がなければ生きられない。情報は外交世界の通貨だからだ。」「大昔は駅馬車や帆船など、当時使えた手段で手書きの書類を送った。通信技術が進歩し、また、20世紀になって鉄道や自動車、汽船、電報、海底ケーブルなどか登場すると国務省はそれらの手段も採用し・・・20世紀から21世紀初頭にかけては無線、電話、FAX、衛星、動画リンクなども次々に採用。そしてインターネット革命の到来で豊富なアプリケーションが使えるようになった。」「新しいハードウェア」やソフトウェアの導入はややこしくて難しいが、その問題は大半が実務的・機能的なものだ。それよりも考え方を変えさせるほうがずっと難しい。」「組織全体の考え方を変えたければ、トップが率先して変わらなければならない。」
パウエル氏は、国務長官になった2001年に自らがアナログ情報中毒であることを自覚しデジタルに対応しようともがいたそうです。
それもそのはず、今まで情報の収集・伝達・共有を妨げていた時間的・空間的・政治的・文化的・社会的な障壁が全て取り壊されたからです。
情報も資本もリスクもチャンスも社会的つながりも、光のスピードで世界を飛び回るようになりました。国務省においてもインターネットに対応すべく新しいコンピュータを4万4000台導入し、国務省と各大使館の机すべてに設置したそうです。
それから、メッセージのやり取りも電信通信や外交電報から電子メールに切り替えさせることも行いました。



新しいものを導入するのに躊躇しない。アメリカの強さってこういうとこらなんですよね。
「第1報」に注意せよ
「何事かあると第1報が入ってくる。その第1報はすべて正しく、そのまま信じていいかもしれないし、部分的に正しいかもしれないし、すべてがまちがっているかもしれない。では第1報をどう考えれば、うまくいく可能性が一番高くなるだろうか。」「正しかった第1報もたくさんある。そのなかには、対応したものも対応しなかったものもある。対応すればよかったと後悔しているものもある。敵もさる者で誤った第1報が届くようにする場合があることも忘れてはいけない。」
第1報を確認するためにパウエル氏には「第1報対応のチェックリスト」があります。
第1報対応のチェックリスト
- 常識的に変だと感じないか・深呼吸をしたり目をこすったりしよう。
- 進行中のほかのことと矛盾はないか?その出来事に特別な状況や前後関係はないか?
- チェックにどれだけの時間が使えるか?
- どうすれば確認できるのか?スタッフにやらせろ!電話をかけろ!
- 第1報が正しく、確認で対応が遅れた場合のリスクやコスト、失われるチャンスは?
- 第1報がまちがっており、あわてて対応してしまった場合のリスクやコスト、失われるチャンスは?
- なにがかかっているのか?
- 時間切れだ!動きはじめろ!探しつづけろ!



第1報は信じてしまいがちです。それに対して間違った判断をしてしまうことはあります。それを極力少なくするには自分に対する「第1報対応のチェックリスト」を持つ必要がありますね。
150%の力を組織から引き出す
ひとつのチーム、ひとつの戦い
優れたリーダーは、皆、目的を共有することが大事だと無意識のうちに理解しているものだ。つまり、リーダーが目的を示し、その目的をチーム全員が我がこととして受け止めていなければならない。そのように共通する目的があればこそ、組織のさまざまな部門がばらばらな方向に進まず、協調してひとつの方向に進めるわけだ。逆に部族間闘争をくり返しているとしか思えない組織も少なくない。そういう組織は、だいたいがうまく機能しない。
この「ひとつのチーム、ひとつの戦い」とはジョージ・ジョルワン将軍という方の言葉で、どのようなメッセージの締めくくりにもスローガンとして用いられたそうです。
このスローガンをパウエル氏は心に刻み「ひとつのチームとして全員がまとまり、勝つと全員が心に決めた戦いを遂行する」という想いを、旗下の部隊全員に対し、くり返して伝えました。
そしてこの言葉はさまざまなところに応用できる優れたアイデアですよね。



チームとしてのまとまりは同じ意志を持つことなんですよね。
「必要欠くべからざる人物」とは?
リーダーとしての私がしなければならない仕事は、馬の世話をすること、馬の力を最大限引き出すこと、そして、私が望む方向にすべての馬が引くようにすることだ。もうひとつ、私のあとに准将へと昇進し、私の後任となってくれる仲間を用意しておくことも大切だ。
どれほど優れたチームメンバーも、強みを失い、十分な生産性を上げられなくなることがある。リーダーは、職務にみあう能力がなくなった者を交代させられるよう、常に用意を整えておかなければならない。能力の低い部下に合わせて組織を再編するなどあってはならない。再訓練するか、異動させるか、あるいは、首にするか、だ。そのほうが、結局は本人のためである。もちろん、チームにとっては、短期的にもそのほうがいい。
パウエル氏は職務経験上、「自分でなければならない」と賞味期限をとうに過ぎているにもかかわらず、その座にいつづけるリーダーや、後継を考えていないリーダー、しっかりしたリーダーシップチームを作ろうとしないリーダー、自信がなくてこのような現実に直面できないリーダーたちを見てきました。
そのことに対しての警鐘といえます。



少し厳しい言葉ながら、すべては組織のために避けては通れないことだと思いますね。
コリン・パウエルの教訓
降ってわいた問題も解決しなければならない。
リーダーたるもの、問題を解決しなければならない。問題を解決しない人は、リーダーではない。そして、解決する問題は、自分や自分の組織、あるいは自分の利害に関係のあるものであってほしい。だが、常にそうだとは限らない。どこからともなく問題が降ってくることもあるのだ。自分に関心もなければ利害もない。まずどこから手を付けるべきかもわからない。それでもなお、自分が対処しなければならない。
パウエル氏が国務長官時代にスペインとモロッコの間で起きた小さな島の領有権について仲裁したエピソードを語られています。
アメリカに直接関係した話ではないのですが、なんといってもアメリカは「世界の警察」といわれるくらい世界の問題を解決してきた歴史があります。
当国間は大真面目なのですから話に乗らないわけにはいきません。難航はしたものの無事に解決しさすがアメリカ、面目躍如ですね。



アメリカは必要不可欠な国といえます。問題もあるし間違いもしますが、世界が解決や支援を求めるのはアメリカなんです。それだけ信頼されているということですね。そのアメリカの国務長官時代はまさに多忙な日々だったことでしょうね。
若者は見ている。
交換留学はすばらしい制度だ。わずか数日でも若者を海外に行かせれば、新しい体験をしてもらえるし、米国以外に世界があることも理解してもらえるーそして、米国民であることの意味を改めてかみしめてもらえるだろう。
逆向きも、同じように重要だ。
世界各国から若者に来てもらえば、米国という国をその目で確認し、そこに住むすばらしい人々と出会ってもらえる。スクリーンでは見ることができない米国を見てもらえるのだ。
若者の交流に力を入れていたパウエル氏は、様々な国の若者を青少年親善大使として受け入れてきました。
各国の若者がアメリカ国民とふれあい、親切にされた体験談をさも自分のことのように喜びました。次世代を作るのは若者です。その若者が自国でアメリカで受けた印象を話すさまを頭に描かないはずがありません。
「子どもたちがなにを見ているかはわからないが、彼らは常になにかを見ており、見たものを常に評価している。彼らに豊富な経験をさせてあげれば、なにかいいものをつかんでくれるはずだ。自分たちの人生やほかの人の人生をよくするなにかをつかんでくれるはずだ。」
この言葉からわかるように、交流こそ理解の一歩であり、発展の礎になるのだと感じました。



パウエル氏はオックスフォード大学とかケンブリッジ大学に通うような若者だけでなくトラブルや逮捕歴があるような若者も受け入れたそうです。
その若者が滞在中はホワイトハウスでブッシュ大統領とも面談することができブッシュ大統領は自身がアルコール依存症にかかった経験を若者に話し、それを克服し新しい人生を歩み、大統領にまでなれた経緯を伝えました。
自国に帰った彼らが素晴らしい経験をしたことをいつまでも忘れないことだろうと想像します。
スピーチで心をつかむ楽しい工夫。
講演をする際、講演者には複数の責任があることを念頭に置くべきだ。まずは聴衆に対する責任。聞き手が聞くべきことを話さなければならない。期待されていることを話さなければならない。期待されていることを話さなければならない場合もあれば、意外な話でゆさぶりをかけてあげなければならない場合もある。
パウエル氏は、テキストなどをあまり使わないそうです。
頭の中にスピーチを構成するユニットをたくさん持ち、聴衆に合わせて適切なものを利用するそうです。依頼人の望みに合わせて話の難易度も調整します。
スピーチのユニットはやはり鮮度がありニーズに合わせて組み立て直しているそうです。



ある意味、人前でしゃべることをずっと仕事にしてきたといえるパウエル氏。軍では教官として部下を指導する際にも苦心されたそうです。
未来に何を残せるか
私は、いろいろと問題が多かった学生時代の話を若者にするのが好きだ。そしてそのとき、どこで人生を始めたかでなく、どこで終わるのかが重要だ、という点をいつも強調する。だから、自分を信じて努力しろ、懸命に勉強し、自分で自分のロールモデルになれ、何でもやればできると信じろ、そして、常にベストを尽くせ、と。
未来が過去と同じでなければならないことなどないのだ。
さきほどのブッシュ大統領の話と同じようにパウエル氏にも物語があります。
ジャマイカ移民の両親のもとに育ち、当時は無名で学費もないニューヨーク市立大学を出て、軍隊に入り、アメリカ軍のトップ統合参謀議長にまで上り詰めた彼には皆が羨望の目を向けます。
確かにチャンスに恵まれていたといえるでしょう。だけどチャンスは待っていても訪れません。
自分自身がロールモデル(自分にとって、具体的な行動や考え方の模範となる人物)になり、何事においてもベストを尽くす姿勢がチャンスを呼びよせるのではないかと思います。



1993年に陸軍を退役した後、恵まれない子供がいるクラブを訪ね、その場にいた100人ほどの子供たちの前で、自身の体験や「努力すれば報われる」と話をしました。
質問を受け付けた時、10歳の子どもの「おじさんが死んでいるか生きているかさえ気にしないお父さんやお母さんでも、おじさんは今のようになったと思いますか?」と尋ねられたそうです。
パウエル氏はその子の境遇に言葉が詰まり、彼のような子どもたちに手をさしのべる努力をしなければと改めて思ったそうです。
『リーダーを目指す人の心得』の感想・まとめ


アメリカ軍のトップから国務長官へ
パウエル氏の輝かしい経歴がつづられていると思ったら、良い意味で、ものすごくドロくさく人間味にあふれた内容でした。
確かに口調厳しい部分がありますが、「人生とは、そういうものだよ」と理解できれば厳格だけど、心温かい先生のような愛情を感じます。
本書に書かれていることはすべて、コリン・パウエル氏が経験した事ばかりで、中には苦い思い出もあります。
それさえも教訓として、伝えることの大切さを身をもって教えてくれるのだと感じました。
本書の原題は『It Worked For Me』です。
直訳して「私はこれでうまくいった」という体験談を語った本です。
確かに「誰にでも当てはまるものではない」のかもしれませんが、大いに参考になる人生論であると思います。
本書では、飾らない言葉で、パウエル氏の謙虚で実直な人柄を知ることができます。
そのパウエル氏の姿勢こそが、アメリカという大国の要職を務めるリーダーとしての資質であり、心得なのだと思います。
アメリカ軍のトップを務め、国務長官を務めた人物の経験には、リーダーシップやマネジメントのノウハウが満載です。
それに加え、読み物としても実に面白い作品です。
読み進めるにつれ自分自身についてなにげに振り返りたくなる。
そのような一冊です。
『リーダーを目指す人の心得』の概要


本書の目次
『リーダーを目指す人の心得』
はじめに
第1章 コリン・パウエルのルール
第2章 己を知り、自分らしく生きる
第3章 人を動かす
第4章 情報戦を制する
第5章 150%の力を組織から引き出す
第6章 人生をふり返ってー伝えたい教訓
おわりに 「すべては人である」
著者の紹介
コリン・パウエル
1937年、ニューヨーク市生まれ。
黒人としてはじめて、米国陸軍で四つ星の大将まで上りつめる。
米国4軍のトップである統合参謀本部議長に史上最年少で就任する、2001年から2005年までは国務長官を務めるなど、4つの政権で政府の要職を歴任した。




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