
こんにちはコウカワシンです。
今回は、細谷功(ほそや・いさお)さんの著書【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】から学ばせていただきます。
【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】は、どんな本?


【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】は、ズバリ!「効率よく頭がよくなる」本です。
本書はこのような本
2007年発刊ながらシリーズ累計25万部のロングセラー『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』の著者細谷功(ほそや・いさお)さん。
この「地頭力」とは、「自らの頭で考える」という思考力をいいます。
地頭は英語で「bright」「smart」と表記され、 地頭力が良い人というのは、「考える力」、「洞察力」が高いとされています。
本書は、その地頭力を構成する戦略的思考、ロジカルシンキング、仮説思考、フレームワーク、アナロジー思考といった要素を32のキーワードで押さえています。
本書を読むことで、「自らの頭で考える」ために必要な思考力を得ることができます。
本書がおすすめな人
【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】がおすすめな人
- 地頭(じあたま)を鍛えたい人
- AI時代に後れを取りたくない人
- 効率の良い思考法を知りたい人
【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】の要点は?


「地頭力」とは
まず「地頭」(じあたま)という言葉は、コンサルティング業界や人事の世界では古くから用いられていて、「地頭がいい学生を採用したい」というような言い方がなされていました。
ここでいう地頭の良さというのは、「知識を詰め込んだのではなく、柔軟な思考ができて新しい分野にも対応していく力があること」を意味します。
結論から、全体から、単純に考える
3つの思考力と3つのベースの組み合わせ
地頭力の中心は、「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力です。
- 「結論から」考えるのが仮説思考力(限られた情報・時間で最善の答えを出す力)
- 「全体から」考えるのがフレームワーク思考力(3C、4P、SWOT分析などを用いて盲点を見つける力)
- 「単純に」考える抽象化思考力(具体的な事象を理論化・法則化する力)
この3つの思考力と、そのベースとなる論理思考力、直観力、そして知的好奇心の3つを組み合わせて「地頭力」だといえます。
図にするとしたのようになります。
そして、ビジネス(あるいは日常生活全般で)に必要となる「3つの知的能力」を解説すると次のようになります。
- 「知識力」(業界知識や各種繊毛知識等)
- 「対人感性力」(対人的な感情や心理を扱う能力)
- 「地頭力」(自ら考える力)
「知識力」があるということは物知りであるということであり、「対人感性力」があるということは機転が利く、そして「地頭力」があるということは考える力がある能力が備わっているということです。
しかし、図にあるように「地頭力と知識力」及び「地頭力と対人感性力」に直接的な相関はありません。
3つの能力のうちの一つに秀でていることは他の能力と関係がないのだと著者は言います。
知識力には限界があるが地頭力には限界がない
まずどのような人が地頭力があるかですが、たとえば数学者やプロ棋士など、プロセスを踏まえて問題を解決したり、問題を見つける人があげられます。
知識力が高い人の代表例はクイズ王や大学教授など膨大な知識を記憶している人があげられます。
地頭力と知識力の違いについては、次のようなことがあげられます。
知識というのはすべて過去の出来事の集大成です。だからすべて正解と見ていいでしょう。
頭の使い方としては、すぐに記憶を呼び戻すことができる代わりに、知識力は有限であるので限界があります。
対する地頭力の世界は基本的に未来志向で、正解やプロセスも一つには収まらず、無限の可能性を秘めています。
知識の世界で重要なのは「答え」であり、専門家が強いですが、答えより「問い」が大事な問題発見の段階では、自ら考える力のほうが重要であり、これなら素人でも十分に勝負できます。
これまでの日本社会では、価値観的に「知識型」が重視されてきて、これが思考力重視へとビジネス環境を変化させる際の阻害原因になってきました。
「結論から」「全体から」「単純に」考える6つの要素
先ほどあげた「結論から」「全体から」「単純に」考えるためには6つの要素が必要です。
その6つを簡単に説明していきます。
知的好奇心
好奇心とは「知らないもの」への探求心です。
これは地頭力のベースであり、考えることの原動力となります。「考える」とは純粋に能動的な行為であり、そこが受動的でもなんとかなる知識の習得とは違う部分です。
誰でも興味があることになら、習得するためにとことん努力を惜しみませんよね。
その能動性の主要な源泉がこの知的好奇心なのです。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキング(論理的思考)とは、筋道が通っている考え方ということです。
たとえば、ビジネスで多数の人を説得するには、筋道が通った説明が必要です。なぜなら、筋道が通った説明というのは多数の人たちの「共通言語」だからです。
つまり、多様性が高く、共有されている経験が少ない場合において意思決定を行う際に、集団による合意で行う必要が環境下では、論理はとても重要です。
ですので、「話の根拠がある」「一貫性がある」「客観的な見解である」「事実に基づいている」「感情に左右されない」「最終的な結論が明確である」という姿勢で物事を考えることが必要であり、ロジカルシンキングの基本なのです。
直観力
アインシュタインの言葉に「発明は、最終的結果が論理的な構造と結びついていても、論理的な思考の結果ではない」が、あります。
これは、創造的に新たなものを生み出していくためのブレークスルーには、論理だけでなく、経験や知識に裏づけられた直観というべきものが重要なのだろうと著者は解釈します。
直観力とは、論理的な思考や意識的な観察を介さず無意識に意思決定や判断が行われることであり、経験と訓練により直観力が高まり、「勘」というべきものが身に付いてきます。
ですが、直観と論理は地頭力のベースです。ですのでセットが考えなければいけません。
というのも、地頭力の構成要素である仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの思考力には、いずれも論理思考と直観の両方が必要だからです。
論理は「欠点を最小限にする」ための守りであり、そこから直接創造的なアウトプットは出ませんが、創造的なアウトプットを出すために必要となるのが攻めの要素である直観です。
仮説思考力
仮説思考力とは、「結論から考える」ことです。
「逆算して考える」のが仮説思考力であり、「はじめ」からではなく「おわり」から考える。ほかには「できること」ではなく「やるべきこと」から考える、「自分」からではなく「相手」から考えることも指します。
たとえば、ある期間内に調査結果をまとめるプロジェクトのリーダーだとしたら、「明日のアクション」ではなく「最終報告」を考えます。
その際に、とにかく完成度を犠牲にしてでも「すぐに」「ある情報だけで」仮の答えを出すのが仮説思考の発想です。
「すぐに」「ある情報だけで」仮の答えを出す仮説思考は、簡単に見えて実践すると難しいものです。
なぜなら、この発想法の根本にある基本的な考え方を十分に理解しないままに運用しようとするからです。
まず理解しておくべきことは、仮説思考を用いるのにふさわしい状況があり、ひと言で言うと「正解がない」というような「不確実性が高い」状況下であるということです。
これに対して仮説思考がなじみにくいのは「正解がある」とか定型度の高い、すなわち「不確実性が低い」領域です。
良い仮説とは、完成度が高いというよりは、むしろ低くても全体のイメージがわかることや全体をつくり上げることで「何がわからなかったか」がわかるようにすることが重要です。
一度で完成させるのではなく、なるべく早めにラフな全体像をつくり上げてしまうことが仮説思考で求められているといえます。
フレームワーク思考力
良くも悪くも「型にはめる」のがフレームワークの考え方です。
ファイブフォース、3C、4P、SWOT分析などがフレームワークの代表的なものとされています。これらについて詳しい説明は下の記事をご参照ください。


思考力を強化するのにフレームワークは欠かせません。
わたしたちは思い込みや先入観のカタマリであり、知識や経験を積み重ねるほど、「凝り固まって」いきます。しかも「そのことに気づかない」ことが最大の問題なので、なかなかに対処が難しいと著者は言います。
発想が自己流で凝り固まってしまうと、ワンパターンの思考しかできなくなり、それまでのやり方をそのまま受け継いで、その通りにやるので、新しい発想を頭から否定する姿勢になりがちです。
それを打破するために有力な手段となるのが「型」、すなわちフレームワークです。
「型」というとワンパターンとどう違うのかといわれそうですが、知識や経験を積み重ねた人が、ワンパターンの思考から抜け出すためにもフレームワークが有効なのです。
これは、ベテランのスポーツ選手がスランプに陥ったとき、基本に戻ってフォームをチェックするのと似ています。
そしてこれは、自己流で決まりきった発想しかできない人が新しい視点を見つけるのにも役に立つのです。
というのも、フレームワークを用いることで、異なる抽象度からトップダウンで自らを客観視することができるからだと著者は言います。
本書「図表4-2トップダウンの視点で視野が広がる」から引用した図が次の通りです。


フレームワークで用いられる構成要素では、個別の事象や項目をカテゴリーという形で抽象化した分類レベルの表現がなされます。
これにより個別具体だけでボトムアップで考えていたのとは異なる、トップダウンの視点で自らの思考の死角を見つけることが可能になるのです。
抽象化思考力
「抽象化」とは「要するに○○」といったように物事の特徴をざっくりと捉え、本質を抽出する思考法です。
抽象化の逆が「具体化」です。
具体化とは、「物事を具体的にする」「詳細にする」ことです。「具体的に説明すると~」とかで使われるのでイメージしやすいでしょう。
具体と抽象の違いを本書「図表5-1 具体vs.抽象」では次のように表しています。


具体とは形があって「目に見える」ものですが、抽象とは形がなくて「目に見えない」ものです。
そもそも人間の思考は、ほとんどが「具体と抽象」の往復でなされてきました。
つまり、「具体⇒抽象⇒具体」という形です。
具体と抽象の往復によって知が進化するのです。
たとえば、ネコを抽象化すると「4本足を持つ動物」とか「哺乳類」となります。これら2つの特徴は他の動物にも広く当てはまる特徴です。
共通の特徴を持つ個別事象(ネコや他の当てはまる動物)が理論や法則という形で抽象化され、その理論や法則が数々の具体的事象に適用されていくという流れです。
ビジネスの世界では、類似の成功事例を一本化して成功パターンやビジネスモデルが生まれ、そこからさらに新しいビジネスが生まれていくのが、「具体⇒抽象⇒具体」の事例ということになります。
「AIが不得意なこと」こそ地頭力の本領発揮
今は社会にどんどんとAIが導入され、今後数十年の間にAIでほとんどのことができるようになる可能性があります。
「AIが得意なこと」と「AIが不得意なこと」というのを本書「図表22-2」ではこのように表しています。


これを見るとわかるように、AIは与えられた問題を解くのは得意ですが、自ら問題を発見することはできません。
AIの得意とするのは、定義が明確にされている問題を解くことです。
以前までは機械化された一定の作業を間違いなく素早くこなすことに長けていたくらいでしたが、ビッグデータにより知的職業(医師、弁護士、金融トレーダー)といった領域にも進出してくるでしょう。
膨大な情報や知識を扱うこれらの仕事は、AIが得意とする分野であり、ChatGPTに見られるように、人間の能力を超えた部分が垣間見えてくるのは時間の問題です。
また、抽象概念を扱うのは現在のAIの苦手とするところです。
思考とは基本的に抽象概念を扱うことであり、ここに人間の知的能力としての思考力の優位性が保たれる可能性が残されているのです。
このことを理解することがAIとの共存に必要な要素なのです。
そのためにも地頭力を強化することが当然必要です。
AI、人間それぞれの強みを活かすために大事なこと
AIは優秀です。これからもどんどん精度を上げ、人間の行う領域に進出してくることでしょう。
人間がすべきことは、「AIが得意なことはAIに任せる」です。
そうすれば、人間しかできないことに、より人間ならではの能力を発揮できるようになると著者は言います。
先ほどの本書「図表22-2」右側の「AIが不得意なこと」に人間は集中して取り組むべきです。
能動的に問題を発見し、具体的な事象を抽象化した後に再度具体化するといった「具体⇒抽象⇒具体」の繰り返しにより、答えを探っていくという点は、やはり人間の得意とするところです。
「能動的に問題を発見し」と言いましたが、考えるという行為は、受動的では意味がなく、能動的でなければいけません。
ですのでこの「能動的」ということを、人間ならではの強みとして、今後重要性を増していくことは間違いないのです。
「知識はあるけど受動的な人」と「能動的だけど知識が不足している人」がいます。
これまでは前者が優位に立つ機会が多かったでしょうけど、今後はむしろ後者が力を発揮できる可能性が高いのは明白です。
なぜなら「知識があるけど受動的」では、AIと同じで、もはや「知識量」で人間がAIに勝てるはずがないからです。
いま議論として、「どの職業がAIに置き換えられるか」が、興味を集め心配の種になっていますが、そもそもこのような議論は無意味ともいえます。
人間の得意は「考える」ことです。
これからもさまざまな問題は出てきます。問題を発見し、AIの力を借りながら、問題解決に導くことが人間のするべきことでしょう。
【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】の感想・まとめ


人間の得意は「考える」こと。
「考える」ことと「知識を獲得する」ことはまったく違うものであり、「自ら能動的に考える」ことができるようになれば、AI時代となっても怖くない。
AIがいろんな分野で活用され、その範囲が広がっているのが目立ってきました。
そういった中で気がかりなのが、「いつか自分の仕事がAIに奪われるんじゃないか」という不安です。
いろんな書籍で「この仕事はなくなる」とか「この仕事は代替されない」と、大した根拠も示さないまま大胆な予想をしています。
しかしながら、未来のことは誰にもわかりません。
たしかにAIが得意な要素を含んだ職域には、今後メスが入り、人から機械へ仕事が移り変わるでしょうけど、そのような職域ででも人間でなければいけない部分もあることでしょう。
その部分というのが、「具体⇒抽象⇒具体」といったAIが不得意とする思考力が必要なことです。
そのような能力を高めるには、「結論から」「全体から」「単純に」考えるための6つの要素を磨いていくことが大事だということです。
たしかに簡単ではありませんが、取り組んでみる価値はあるのではないでしょうか。
そのためにも本書を一度じっくり読んでいただきたいと感じました。
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【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】の概要


本書の目次
【入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法】
はじめに
Chapter 1 基本の思考力を押さえる
Chapter 2 二項対立で考える
Chapter 3 コンサルタントのツール箱
Chapter 4 AI(人工知能)vs.地頭力
Chapter 5 「無知の知」からすべては始まる
おわりに
本書のベースとなった書籍
著者の紹介
細谷功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント。著述家。
1964年、神奈川県生まれ。
東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。
2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。
主な著書
『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』dZERO(インプレス) (2014/12/1)
『「具体⇔抽象」トレーニング 』PHP研究所 (2020/3/17)
『地頭力を鍛』える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』 東洋経済新報社 (2007/12/20)
『アナロジー思考』東洋経済新報社 (2011/8/11)
『思考力の地図』KADOKAWA (2022/11/17)
『メタ思考トレーニング』PHP研究所 (2016/5/18)
『「無理」の構造』 株式会社dZERO; 第1版 (2020/7/17)
『見えないものを見る「抽象の目」』中央公論新社 (2022/10/10)
『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』ダイヤモンド社; 第1版 (2021/9/28)
『問題発見力を鍛える』講談社 (2020/8/19)
『自己矛盾劇場: 「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察』株式会社dZERO; 第1版 (2020/7/17)
『考える練習帳』ダイヤモンド社; 第1版 (2017/10/25)
『今すぐできて、一生役立つ 地頭力のはじめ方』大和書房 (2023/1/10)
『「Why型思考」が仕事を変える』PHP研究所 (2010/8/19)
『アリさんとキリギリス』さくら舎 (2016/11/4)
『問題解決のジレンマ』東洋経済新報社 (2015/4/16)
『仕事に生かす地頭力』筑摩書房 (2015/2/10)
『ビジネス思考力を鍛える』日経BP (2022/6/16)
『会社の老化は止められない』亜紀書房 (2013/4/4)
『自己矛盾劇場 「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する』株式会社dZERO; 第1版 (2020/7/17)


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