
こんにちはコウカワシンです。
今回は、小倉広(おぐら・ひろし)さんの著書【もしアドラーが上司だったら】から学ばせていただきます。
【もしアドラーが上司だったら】は、どんな本?


【もしアドラーが上司だったら】は、ズバリ!名著『嫌われる勇気』の参考書です。
本書はこのような本
対人関係の悩み、人生の悩みを消し去るには「勇気」が必要と、アドラー心理学をわかりやすく解説した名著『嫌われる勇気』。
この『嫌われる勇気』を実践するもなかなかに成果が出ないケースが多いそうです。
それもそのはずで、アドラー心理学は対人関係の悩みを一掃する「武器」ではありますが、職場などで当てはめるには「コツ」が必要です。
その方法を小説仕立てで教えてくれるのが本書ということです。
本書がおすすめな人
【もしアドラーが上司だったら】がおすすめな人
- 何をやっても自分に自信がない人
- 人間関係がうまくいかず悩んでいる人
- 他人の意見についつい流されてしまう人
- 人生を自分らしく生きたい人
【もしアドラーが上司だったら】の要点は?


本書は、どこにでもいるような、まだまだ成長過程にある会社員リョウ君が、上司として赴任してきたドラさんが出す12の宿題を実行していくと、どんどん仕事が楽しくなっていき、結果も出るようになっていくという物語です。
リョウ君は、自分自身に自信がなく、仕事はダメダメで、他人に流されやすく、他者と自分を比べ劣等感を持っていましたが、ドラさんとの関わりの中で、徐々に自信をつけ対人関係もうまく作用するようになり、仕事でも結果を出します。



それでは本書から、わたしの独断と偏見で、よりよい人間関係を築くために必要な「自分自身の価値」「気持ちの整理の仕方」「他者との関わりの中で有益な行動原理」について取り上げてみたいと思います。
もっと他にも重要なエッセンスのたっぷり詰まった物語なので、感じ方は人それぞれです。
ですので、ぜひ手に取って読んでみることをおすすめします。
人生には「心のガソリン」が必要
人生をポジティブに生きるには、心がやる気に満ち足りていないといけません。
さらにやる気は、心に栄養が満たされてないと出てきません。
本書では、心に栄養を満たすことを「心のガソリン」をいっぱいにすると表現しています。
「心のガソリン」というのは、“勇気”のこと。
“勇気”を持つためにどのようなことを心得ておくべきかを順に追っていきます。
「できているところ」に注目する
日常を過ごしていると、人間はどうしても「自分のダメな部分」に注目してしまいます。
「ああ、今朝も寝坊して、ジョギングをさぼっちゃった。今週なんて、結局平日5日間のうち、2日しか走ることができなかった・・・」といってさぼった自分を責めてしまいます。
しかし、「2日は走れた」ということには、注目しません。
ほかにも、「朝、会社に行く」「歯を磨く」「時間内に会社に着く」「おはようとあいさつをする」というふうに人間の行動の95%は「できている」行動です。
でも、わたしたちはたった5%の「できていない」行動ばかりに注目して「できている」95%を無視しています。
これでは、「やる気」は起きてきません。
人間は「自分には能力がある。自分には価値がある」と思えたとき、つまり困難を克服する活力「勇気」で満たされると、放っておいても『もっと、もっと』とさらなる優越を目指します。
こうやって成功体験が積み上がって自信を身につけると「もっと良くなろう、がんばろう」となります。
ですので、自分のダメなところはあえて無視して、「できている」部分に注目していきましょう。
無理矢理ポジティブに考えない
人生何事もポジティブにとらえて明るく過ごしたいものですが、それはなかなか難しい場面があるのもいなめません。
そんなときは、「無理矢理ポジティブに考えないでいい」と本書では語っています。
本来ならネガティブ要素の強い失敗の経験も「あの時はこんなことがあってもうだめかと思ったけど、いい経験になった」と多面的に意味づけてポジティブな面に注目するのがアドラー心理学的な考え方です。
ですが、ネガティブな状態が精神的にダメージを与えるのも正直なところです。
たとえば、電車に乗ろうとしたら満員電車だったら、ついつい「はぁ・・・・・・。電車の混み方がヤバいなあ。憂鬱だなあ」と思うでしょう。なかなかポジティブにとらえることはできません。
そんなときは、ネガティブでいいから、「きちんと見る。でも、注目はしない」という行動をするのです。
ネガティブな感情をなかったことにせず、「否認」「抑圧」「歪曲」せず、きちんとありのまま、そのまま見る。つまり、自分に正直であることが重要なのです。
それを無理矢理押し殺して「満員電車は不快ではない」とすると不自然で自分にウソをついているようにモヤモヤし、はてには病気になってしまいます。
ですので、ネガティブな心を解放するためにも、押し殺さず「ああ~満員電車、チョー最悪~!」という感情を持つことはしかたがない、だけど、ただ見るだけに留めるのです。
ありのままの自分を受け止める
よく「仕事ができるできない」といった機能の優劣で、「自分は何の価値のない人間だ」と思う人がたくさんいます。
「仕事ができる人」は機能が高い人、つまり「機能価値」が高い人ということになるのです。
たしかに仕事ができてヘッドハンターから次々と連絡があったり年収1千万の提示を受ける人と、失敗が多く年収300万円程度にとどまる人だったら「機能価値」に差があるのかもしれないし、転職マーケットでは優劣がつくでしょう。
しかし、「人として」ありのまま、そのままで素晴らしい価値があるというのが「存在価値」であり、アドラー心理学の大事な考え方のひとつなのです。
どちらの人も「人間として」はまったく平等で、優劣も上下もありません。
それなのに「機能価値」と「存在価値」をごちゃ混ぜにしてしまっているのが、自分に対してネガティブな感情しか持たない人の特徴でもあるのです。
「機能価値」ともいえる能力の差は、これからの経験と訓練でいかようにも変えることはできますが、人間として大事な「存在価値」を無視して「仕事のできない自分はダメダメ人間」と自分の人格まで否定しているのです。
これは自分にとって唯一の味方である「自分」にまで裏切られた状態であるといえます。
そうではなく、「自分」こそが、自分にとっていつでもどんなときでも味方として「ありのままの自分」をしっかり受け止めなくてはいけません。
不完全な自分を認め、自己受容する
よく「自己肯定感が高い人」といいますが、何でもかんでもポジティブにとらえていけるほど、人はそんなに強くはありません。
そこで不完全な自分を認めて「自己受容」することが大事なのです。
ですので、「自己肯定」と「自己受容」は全然違うものです。
「自己肯定」とは、自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉であり、自己肯定感の高い人は「自分に対する信頼」が高い人といえます。
「自己受容」とは、「その人が置かれている現実の状況を受け入れること」です。
たとえば、「生まれた家の貧富」、「容姿の特徴」、「職業」、「人間関係」、「学歴」などは簡単には変えられません。
ですがこれは現実の自分です。それをそのまま受け入れるのです。
「仕事ができない自分。ダメダメな自分。ああこんな自分が嫌だ」、これは自分を否定した考え方です。そうではなく「仕事ができない自分。ダメダメな自分」という現実をしっかり受け入れることが大事なのです。
毎日誰かを喜ばせよう
まず、「共同体」とは何かというと、「人と人とが関わり合う場所」ということになります。
「共同体感覚」というのは、自分と相手という二人だけの共同体だけでなく、数百人、数千人規模の共同体まで、あらゆる共同体に対する「所属感」「共感」「信頼感」「貢献感」を総称した感覚・感情のことです。
共同体に属しているときに、人や社会と「つながっている」という感覚を得て、それに幸せを感じることが共同体感覚なのです。
その共同体感覚を育むのに最適なのは、「誰かを喜ばせる」ことです。
というのも、誰かを喜ばせることで、誰かの役に立つことができます。それだけでなく、自分は相手に貢献できる価値があり、その能力があると思うことができます。
つまり、「相手を勇気づけるとともに自分自身も勇気づけられている」ということで、心のガソリンがいっぱいになるのです。
そしてどうせなら、毎日誰かを喜ばせましょう。
毎日誰かを喜ばせるのは、相手にとっても自分にとっても幸せに感じることができる機会が増え、とてもいいことなのです。
自分と他人との違いを恐れない
アドラー心理学では、「人間関係の悩みは全て対人関係の悩みである」としています。
とくに自分と異なる意見を言われたりでもしたら、それは自分に対しての攻撃だとし、仕返しとばかりに口論になる場合が多いのではないでしょうか。
これは「返報性の法則」として、相手からしてもらったら返したくなる心理を指します。
たとえば相手からプレゼントを受け取ったら自分も返したくなる。これがポジティブに働くと「ご恩返し」という行動につながりますが、ネガティブに働くと「復讐」につながります。
つまり、相手の行動を「親切」ととらえるか「攻撃」ととらえるかは本人次第なのです。
その判断基準として本人の「自己概念」と「世界像」が大きく関わってきます。
「自己概念」とは、「自分はどのような人間であるか」という信念、「世界像」とは、「他人はどのような人間であるか」という信念です。
たとえば、自分は醜く劣っているという自己概念を持ち、他人は冷たく自分をバカにするという世界像を持っている人は、他人のちょっとした言動をすべて「攻撃」と見なします。
一方で、自分は愛されているという自己概念、周囲は自分を助けてくれるという世界像を持っている人は、他人の言動をすべて「自分への親切」と見なすことでしょう。
異なる意見を攻撃と見なすのは、他者を敵と見なし、自分を劣った存在であると考えている可能性があります。
もしも、他者を味方であると見なし、自分に価値があると思えれば、他者との違いを恐れることもないでしょう。
どちらが自分にとって有益かは、考えなくてもわかりますよね。
そのためにも「自分は価値のある人間」と思うことが最大限重要なのです。
【もしアドラーが上司だったら】の感想・まとめ


「心のガソリン」を満タンにするためには、「自分をすべて受け入れ、愛する」ことが大切。
本書では、一人の会社員がアドラー的思考を持った上司に促され、「人間として大事な本質」を学びながら成長する様を物語化されていました。
この物語から学ぶことはとても多くありましたが、わたしがとても心に残ったのは、「自分には価値があり、ありのままの自分を認める」という自己受容の部分でした。
それをしないと、「どうせ自分なんてあれもできない、これもできない、ダメダメ人間じゃん」と自暴自棄になり、きちんと社会に適応できない最悪のサイクルを巡ってしまいます。
それを避けるには、「機能価値」と「存在価値」をきちんと分け、できる努力は惜しまず機能の向上に努め、自分だけは自分に対して常に味方でなければいけないということですね。
そのような心持で日々を過ごしていくと、しだいに自分にとって最適な「人間関係」も築けていくのではないでしょうか。
そういった意味で、社会人に限らず、学校の教科書にも採用していただきたいくらい多くの人に読んでいただきたい一冊です。
【もしアドラーが上司だったら】の概要


本書の目次
【もしアドラーが上司だったら】
プロローグ ドラさん、皇居に現れる
第一章 自分を追い込んでも、やる気が続かないんです
第二章 失敗から目をそらすなんて、できません
第三章 カラ元気を出すのに疲れちゃいました……
第四章 やらなくちゃならない仕事が山積み
第五章 成績の悪い僕は劣っている。負けている
第六章 自分を追い込んで、やっとできるようになったんです
第七章 自分を勇気づける、次のステップとはなんだろう?
第八章 誰かを喜ばせようとしても、無視されたりバカにされるんです
第九章 自分の意見だけでなく、存在までも否定された……
第十章 目の前の人のため、が共同体感覚なんですか?
第十一章 あなたを信じていたのに……
第十二章 課長なのに、頑張らなくてもいいの?
エピローグ ドラさん、チャレンジを続ける
あとがき
著者の紹介
小倉広(おぐら・ひろし)
アドラー派の心理カウンセラー、組織人事コンサルタント。経営コンサルタント。
1965年新潟県生まれ。
青山学院大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。企画室、編集部を経て組織人事コンサルティング室課長に。2003年、株式会社フェイスホールディングスおよびフェイス総研代表取締役就任。
リーダーシップ開発に特化したコンサルティングおよび教育研修を行っている。
以前は、あらゆる仕事を抱え込み、そのストレスからうつ病を患ってしまったこともある。
短期的な成果よりも、任せて育てることの大切さを痛感し、真のリーダー像を模索。現在は、若手リーダーの悩みに答えるリーダーシップの専門家として知られている。
コーチングや交流分析などを学ぶうち、それらの源流にアドラー心理学があることを知り、岩井俊憲氏に師事。
現在は「子育て中心の理論であるアドラー心理学をビジネスに生かすための架け橋となる」ことを使命に、数多くの企業にて講演、研修を行っている。
主な著書
『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』ダイヤモンド社; 第1版 (2014/2/27)
『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』日経BP (2021/8/21)
『「人生がうまくいかない」が100%解決する アドラー心理学見るだけノート』宝島社 (2022/1/13)
『自分でやった方が早い病』講談社 (2012/5/25)
『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉』ダイヤモンド社; 第1版 (2017/8/30)
『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』日経BP (2014/8/12)
『任せるリーダーが実践している 1on1の技術』日経BP (2019/5/21)
『アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学』日経BP (2015/11/26)
『仕事と人生の格を上げる アドラー一日一言』宝島社 (2022/7/12)
『常勝チームの鬼100則』明日香出版社 (2022/11/24)
『任せる技術』日経BP (2011/1/24)
『「マネジャー」の基本&実践力がイチから身につく本』すばる舎 (2008/12/17)
『折れない自分のつくり方』フォレスト出版 (2012/6/26)
『「打たれ弱い部下」を活かす技術』PHP研究所 (2013/7/24)
『なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか』SBクリエイティブ (2012/12/13)
共著
『マンガでやさしくわかる課長の仕事』日本能率協会マネジメントセンター (2014/3/18)


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